“鳥居酒屋”で業績回復! ワタミは生まれ変われるのか

“鳥居酒屋”で業績回復! ワタミは生まれ変われるのか

  • ITmedia ビジネスオンライン
  • 更新日:2017/11/21
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ワタミが「総合居酒屋チェーン」から「鳥居酒屋チェーン」へと急転換を進め、業績を回復させてきている。11月14日に発表した2018年3月期中間決算(連結ベース)では、経常利益が1億5600万円と4期ぶりに黒字に転換した。

売上高(中間)は前年の482億7000万円から、474億8000万円へと7.8%減っているが、ぜい肉が削がれてきている。今期に入って半年で103店を転換し、12店を撤退。総店舗数は減ったが収益が改善した。

これまでのワタミの顔だった総合居酒屋の「和民」「坐・和民」「わたみん家」の閉鎖を加速させ、いずれも鶏料理をメインとした新ブランド「旨唐揚げと居酒メシ ミライザカ」(以下、ミライザカ)と「三代目鳥メロ」(以下、鳥メロ)を猛スピードで出店している。両店に転換した店の売り上げは、前年比136%と3割以上も増え絶好調だ。

「鳥メロ」のメニュー(出典:鳥メロ公式Webサイト)

ブランド別に見ると、17年期末より半年で、和民、坐・和民は202店から154店へ48店減。わたみん家は103店から42店へ61店減。いずれも大きく減らしている。一方で、16年6月から出店を進めるミライザカは30店から84店へ45店増。鳥メロは51店から104店へ53店増と、いずれも激増している。

既に、総合居酒屋が196店に対して、鳥居酒屋は188店。今期中に鳥居酒屋の店舗数が総合居酒屋を逆転するのは確実である。全体の規模では4年半で178店減り、3分の2以下に縮小しているが、転換の結果、既存店売上は13カ月連続で前年比100%超えを達成。6億円の赤字となる予想を覆す快挙である。

実はいま、ワタミだけでなく、「鳥貴族」(586店)の成功にけん引されて、鳥居酒屋チェーンが増殖し群雄割拠となっている。

「磯丸水産」のSFPホールディングスが展開する第二のヒットブランド「鳥良商店」(26店)、モンテローザの280円均一「豊後高田どり酒場」(53店)、コロワイドMDの「やきとりセンター」(36店)、ダイニングイノベーションの「やきとり家 すみれ」(77店)、17年2月に東証マザーズへ上場したユナイテッド&コレクティブの「てけてけ」(61店)など、気が付けば駅前が焼鳥や唐揚げのチェーンだらけであり、あたかも“鳥一族”を形成しているかのように見えるほどだ。

ワタミは鳥貴族を中心とした、鳥居酒屋興隆の一翼を担い、まだ引き離されているものの、2番手集団の筆頭に躍り出ていると言えるだろう。

では「ミライザカ」「鳥メロ」は、どのような特徴を持ったチェーンなのだろうか。

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なぜ「ミライザカ」?

ミライザカと鳥メロは、首都圏では鳥貴族と同じように駅前ビルで展開している。ミライザカはハイボール199円、鳥メロは生ビール199円を売りにしており、鳥貴族の298円均一に対しても、アルコール価格で負けない安さで集客している。

この価格なら、鳥貴族の近くに看板が出ていたら、ついつい店に吸い込まれてしまう人も後を絶たない。ただし、ミライザカと鳥メロはお通し代で300円を取るので、お通し代を取らない鳥貴族より顧客が安いと感じるかどうかは微妙なところ。

和民、坐・和民をミライザカに転換させており、コストを掛けず、ほぼ従来のままで、看板と料理をがらりと変えた居抜きで出店している。ちなみにこういった手法はよくモンテローザが使っており、「笑笑」などを「豊後高田どり酒場」などに変えている。

店名については、同店の公式Webサイトによれば「これからの総合居酒屋のミライを見据えた戦略、未来へのサカを上っていくイメージ、未来のイザカヤはこうあるべき―というメッセージが込められたネーミング」だという。カタカナ表記しているが、“未来坂”とも読める。

人気のアイドルグループ「乃木坂46」と「欅坂46」は、夢に向かい坂を駆け上がるイメージ戦略で成功している。ワタミとしてはミライザカが居酒屋の坂組だと言いたいのだろう。鶏料理をメインとした総合居酒屋の進化形と位置付けている。

乃木坂と欅坂の坂道グループは、これまでアイドルが嫌いだった人を多くファンに取り込んでいるとされる。これまでワタミを敬遠していた人にも来てもらいたいと、坂道グループにあやかった店名をつけて、モデルチェンジをはかったのかもしれない。

「何でもあるが食べたいものがない」への対策

前述したように安さが売りであり、「ジンビーム」の強炭酸ハイボールが199円、「ザ・プレミアムモルツ 香るエール」の中生が299円と、プレミアム感のあるお酒も安価で提供している。従来の居酒屋とは異なり、お酒で利益を取ろうとはしていない。この考え方は鳥貴族に学んでいる。

料理は、国産の「みちのく清流若どり」を使用した、「モモ一本グローブ揚げ」(999円)をメインに据えている。きれいな岩手の水で育った鶏のモモ肉を丸ごと一本唐揚げにしており、見た目も豪快で、インパクトがある商品だ。1皿で2人前くらいの分量がある。

立ち飲みの聖地、東京の立石で人気の鳥料理店「鳥房」の国産若どりの半身揚げが650円前後であることから考えても、料理で利益をきっちり取っており、これが売れるからもうかってきているのだ。

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「モモ一本グローブ揚げ」

かつて和民は、居酒屋御三家「つぼ八」「村さ来」「養老乃瀧」より料理がうまいと評判で人気が過熱したが、地鶏の塚田農場、鮮魚の磯丸水産のような専門居酒屋の台頭で味が評価されなくなり、「何でもあるが食べたいものがない」と言われていた。そこで、本気で売りになる専門性が高い鶏料理を提供して勝負しようと考えたわけだ。

メニュー数は、レギュラーで60品、季節商品を合わせても70品。一般的な総合居酒屋が100品以上を用意しているのに対して簡素化されている。スケールメリットで仕入れ原価を落とすことができ、現場は煩雑な作業に追われない設計になっている。

かつての「ブラック企業」は生まれ変われるのか

一方の鳥メロは、わたみん家からの転換を進めており、ミライザカと同様、従来店舗を居抜きで使い、看板と料理を別物に変更している。

集客のエンジンは前述したように、生ビール「アサヒスーパードライ 中生」199円が効いている。ハイボールや酎ハイも299円と安価だ。

メインの商品「清流若どりのモモ一本焼」(999円)は、ミライザカと共通の素材を使い、唐揚をモモ焼に変えただけだ。値段も同じ。焼鳥は7本盛で999円、串揚はおまかせ8本で999円。こちらも柱となる商品が明確で、オペレーションが簡素化され、働く側は楽になっている。

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鳥メロの外観

そもそも、ワタミが「ブラック企業」と言われてしまった要因は、総合居酒屋が時代に合わなくなって売り上げが落ち、利益を出そうと人件費を削って少人数で運営しようとしたからだ。また、利益を出すために質を落とした商品を接客でカバーしなければと、社員教育を厳しくし過ぎてしまった。

時代を捕らえたヒット業態が出れば好転に向かう。このままミライザカ、鳥メロが上り坂を上り抜けて働き方改革も進み、負のイメージを変えられる日はくるのだろうか。

筆者的には、「清流若どり」一本に料理の売り上げを依存しているので、鳥インフルエンザのような鳥獣が感染する疫病が、リスク要因として気になるが……。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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