映画「万引き家族」がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞! 是枝裕和作品のドキュメンタリー的映画制作術

映画「万引き家族」がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞! 是枝裕和作品のドキュメンタリー的映画制作術

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  • 更新日:2018/06/14

5作連続で是枝監督とタッグを組んだプロデューサーが語る!「万引き家族」完成までの秘話

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。今回は、日本人監督としては21年ぶりにカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督の“映画の作り方”に迫ります!

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<撮りながら作品が変化する“是枝マジック”の妙味>

「第71回カンヌ国際映画祭」で最高賞=パルムドールに輝いた是枝裕和監督の「万引き家族」が、好評公開中だ。同映画祭で、柳楽優弥が最優秀主演男優賞を受賞した「誰も知らない」(’04年)をはじめ、さまざまな家族の肖像を描いてきた是枝監督が、貧困層の増加や、年金の不正受給といった社会問題と絡め、“犯罪でしかつながれなかった家族”にスポットを当てた一篇。「そして父になる」(’13年)以降、5作連続で是枝作品を手がけるフジテレビ映画事業センターの松崎薫プロデューサーは、作品誕生の経緯を次のように話す。

「構想自体は、監督が長らく温めていらっしゃったものですが、具体的に企画をご提示いただいたのは’15年の夏、『海街diary』(’15年)の公開後でしたか。既に『海よりもまだ深く』(’16年)を撮り終えていて、監督としては家族というテーマを描ききったようでしたが、『誰も知らない』のような社会派の匂いがする一本を撮ってみてはどうかと、私もお話させてもらっていた時期でした。その時点では、新境地とも言える『三度目の殺人』(’17年)の脚本にとりかかったところで。当初は違うタイトルでしたが、家族を媒介にして社会を見る『万引き家族』は作品のコンセプトが明快でしたし、私のイメージしていた監督の真骨頂的作品とも思ったので、『三度目~』の次の企画として、映画化への動きはスムーズでした」

そのようにして具現化した映画が、国際的な評価を得る。もちろん、それ自体も素晴らしいことだが、是枝監督との仕事における魅力は別の次元にあるようだ。

「初めて組んだ『そして父になる』の時にははっきり認識してなかったのですが、是枝監督の作品は最初の脚本の段階から編集が終わるまでの間に、かなり変化します。それはドキュメンタリー作家としての資質でもあると思いますが、作っていく過程で現場で起きたいろいろな要素をすくいとって、脚本を紡いでいくんです。また、編集も見事で…スタッフ間では“是枝マジック”と呼んでいるのですが(笑)、たくさん撮った素材を緻密かつ大胆につなげて、見応えのある作品へと仕上げていく。我々スタッフの意見も聞いた上で、あれこれ試しながら、最終的にご自身の作りたいものとして着地させるんです。締切を過ぎても、スタッフの冷たい視線をかわしつつの(笑)、粘り強さには感服します。私の立場では感心してはいけないのですが。役者さんがすごくいい芝居をした素晴らしいシーンでも、編集していて不要だと判断したら、バッサリと切る。仕上がりに主眼を置けるからこそ純粋に、そして妥協せず作品と向きあえるのだろうと感じていますし、その過程を間近で見られることは、得難いことだと思っています」

<是枝監督がテレビで培った感覚や姿勢とは何か?>

ドキュメンタリー畑の出身であることが、是枝監督の作家性を際立たせているのは言うまでもないだろう。加えて「プロデューサー的な感覚を持ち合わせてもいる」と松崎氏。監督のキャリアの出発点であるテレビマンとしての側面が、作品にどう反映されているのか聞いてみた。

「私自身はテレビと映画の作り手の決定的違いはわかりませんが、テレビに軸足を置いていると感じることのひとつとしてあえて申し上げれば、視野が広いこと、閉じてないこと、決して『わかる人だけがわかればいい』と思って作品を作ってはいないことでしょうか。プロデューサー的感覚があるのでプロジェクトをふかんする視点をお持ちで、製作委員会の仕組みや海外情報についても関心が高く、宣伝や海外へのアプローチについても、ビジョンをお持ちなんです」

また、今作に限らずジャーナリスティックな視点で物事を見つめていることも、“ならでは”と言える。家族の肖像を切りとりつつも、観る者にさまざまなテーマを投げかけてくる「万引き家族」だが、作り手の1人としては、どのような見方がおすすめなのだろうか。

「監督も『年金の不正受給の裏側に、どんなことが起きていたのか想像してみたくなった』とお話をしていましたが、表立って見えないことというのは、たくさんあるわけで、さまざまな事件が世の中では起こっていますが、その裏にはやはりさまざまな事情があって、そんなに簡単に善悪で割り切れないのではないか、と思っているんです。そういったことが透けて見える作品だと思いますので、家族の絆とは何かと考えるとともに、問題提起した数々のテーマを受け取っていただけたら、嬉しいです」

本編では具体的な答えが示されるわけではなく、観た者それぞれに結末の解釈が委ねられる。これもまた、是枝監督作品の特徴的なもの。敢えてテーマを投げかけるスタンスから生まれる妙味なのだ。

今回、取材したのは…

松崎薫さん(フジテレビジョン編成局 映画事業センター映画制作部プロデューサー)
国際基督教大学卒業後、SONYに入社。その後フジテレビに転籍し、編成部を経て映画部。「そして父になる」では第38回エランドール賞映画部門プロデューサー賞を受賞、「海街diary」では第35回藤本賞特別賞を受賞している。

Interview=平田真人

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