「驚き」がないiPhone Xをバカ売れさせた、アップルの巧みな戦略

「驚き」がないiPhone Xをバカ売れさせた、アップルの巧みな戦略

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  • 更新日:2017/11/13
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数々の新機能を搭載し、11月3日の発売以来話題を独占しているiPhone X。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では著者でMBAホルダーの理央さんが、9月にiPhone8を出したばかりという状況の中、これまでよりも高い価格帯のXをまさに「矢継ぎ早」に発表したアップルの戦略をMBAの視線で詳細に分析しています。

iPhone Xの基本マーケティング戦略

好調アップルとiPhone X

「満を持して」という感じで、11月3日にアップルがiPhoneの最上位機種として、iPhone Xを発売しました。初代のiPhoneからちょうど10年。思えば、Web2.0の時代とともにiPhoneは歩んできたのです。

発売から初期の報道を見ていると、多くのニュースで取り上げられ、新製品をすぐに購入する私の周りの「イノベータ─」たちもさっそく購入し、SNSにアップをし始めています。

感覚的にはiPhone8の時よりも、話題性も売れ行きもかなり「いい」という印象です。11月4日付の日本経済新聞には、

アップル表参道は、3日午前8時、カウントダウンならぬ、カウントアップで開店しました。予約者や順番待ちの購入希望者は同時刻で約550人と、iPhone8発売時の9倍の行列。

予約できず、近くにホテルをとって6日間並んだ。

といったように、人気も再加熱、の様相を示しています。

7~9月期も過去最高の売上を記録しているアップルは、iPhone Xの発売もあり、10~12月期の売上で対前年同期比で7%増と、好調を維持しています。

iPhone Xの「何を、誰に、どうやって」

【誰に~STP分析】

iPhoneのターゲット層は幅広い。一方で、iPhone Xはどうだろうか。

これまでより高い価格帯、顔認証や、ホームボタンのないデザインなどの新機能など、これまでのiPhoneとは違うプロダクトだ。しかもiPhone8を出したばかりである。ということを考慮に入れた上で、iPhone Xがターゲットとしていそうな初期の顧客層を、以下の4つのカテゴリーとそのセグメントで推察してみる。

1.セグメンテーション(Segmentation)

まず、デモグラフィック(=属性)から。年代は20代~40代前半、性別は、男性中心、職業は、広告代理店勤務、IT関係、フリーランス、など、ジオグラフィック(=地域特性)は、都心在住または勤務。

そして、消費者インサイト(=特性や心理的要素)で、サイコグラフィック(=価値観や心理)では、好きなものには価格が高くても投資をするアップルファン、ビヘイビア(=行動特性)では、新しい場所や流行りの店に行く人、SNSなどにも精通、自分の世界を持つ、といった具合です。

2.ターゲティング(Targeting)

この4項目を合体させ、見えてくる主要ターゲット像は、常に新しい話題を求め、自分で情報も発信する一方で、自分の趣味や行動にこだわりを持つ、都心に住む20~40歳代の男性で、ITやデザインに従事。と、想定顧客層を塊にします。

大企業の場合は、第1優先ターゲット層、第2優先ターゲット層、といった具合に、複数設定することが大半です。

3.ポジショニング(Positioning)

次に顧客価値を考えた上で、競合ブランドと比較し、市場での相対的な立ち位置を決めていきます。ライバルは、他社のスマホに、SIMフリーなどの格安スマホ、もちろん、これまでのiPhoneも考慮に入れていきます。

iPhoneXの場合は、新機能が市場でも希少性が高いため、十分差別化ができる、という判断をしているようで、TVCMなどでのコミュニケーションを見ても、他社製品や旧iPhoneとの比較ではなく、新機能の製品属性が顧客価値である、という判断で、市場の優位性を取れる、と踏んでいるようです。

【何を~Product】

iPhone Xは、iPhoneブランドの最上位機種になり、これまでのiPhoneとは違う製品である、というスタンスのブランド訴求をしています。それゆえ、製品名もこれまでの数字ではなく、ローマ字のXが使われているのでしょう。

先述したように、iPhone Xの特徴は、顔面認証、やホームボタンがなくても操作ができること、広角と望遠ができる背面カメラ、無線での充電が可能、といった、スペック的な属性があります。

もちろん、昔からのアップルファンにしてみれば、もっと画期的な「何か」を求めるのでしょうが、これまでの、iPhoneや他のスマホにはない機能として、勝負できる新しさがあります。

かくいう私もアップルファンなので、期待を込めて、いうことがあるとしたら、iPhoneやiPadが世に出た時のような、「驚き」があるわけではありません。スマートフォンの市場は、成熟に差し掛かっているため、iPhoneシリーズを連続的なイノベーションで、改良・発展させていくことと同時に、アップルらしく、カテゴリーそのものを創出するような、革命的な製品開発をしていることを期待します。

【どうやって~Communication】

この段階でのiPhone Xは、イノベーター理論でいうところの、アーリーアダプターの取り込みを狙います。

イノベーターやアーリーアダプターは、細かく説明をすることなく、アップルまたはiPhoneの新製品なら買おう、くらいの気持ちの人です。

したがって、発売前から直後までの、コミュニケーション戦略は、「iPhoneXが出ることの認知」でしょう。大量の広告を投下するというよりも、コアなファン層が見ていそうな、雑誌やインターネットメディアへのアプローチによる、PR効果、例えば、イベントでの発表、期待感の醸成、などです。手法としては、製品情報を小出しにして、期待感を煽る、「ティーザープロモーション」というやり方をとっています。

成長企業はiPhone Xのマーケティングに何を学ぶか?

今回も、華々しくデビューしたiPhoneの新バージョンですが、経営資源に制限がある中小企業や、スターットアップの会社は、広告宣伝費が必要なTVCMや、大々的なキャンペーンを打つわけにはいきません。

ここで重要なことは、そのまま真似しないこと。iPhone Xの戦略のエッセンスを参考に、自社のビジネスに当てはめてみるといいでしょう。

今号では、ターゲット選定の考え方と、顧客コミュニケーションについて、考えていきます。

まず、ターゲット選定に関して、参考にしたいところは、年齢、性別、地域といった、目に見える物理的なセグメンテーションよりも、価値観などの心理的要素や、顧客層がどう動くかという行動的な要素の方が、新製品の初期段階での購入に影響します。

この心理的・行動的な要素である、「消費者インサイト」を正確に見極めるには、どうしたらいいか、を考え、ターゲット層を想定していくといきます。また、新製品導入の初期においては、まずは買ってくれるイノベーターを狙う、というよりも、「買おうかどうしようか」迷うアーリーアダプターと、彼らとメディアの様子を見て、購買を決定する、アーリーマジョリティーが「どれだけ」買ってくれるか、に焦点を置くべきでしょう。

アップルは、初期購入者の心をくすぐること、また、彼らの購入動機を盛り上げていくことに長けていますので、あなたも、自社の製品が響く想定ターゲットのインサイト(=本音)を探り、彼らがどんな表現を好むのか、どこで何をしているのか、を推測し、コミュニケーションを組み立てます。

情報を小出しにして、徐々に公開をしていく、ティーザープロモーションも参考になります。

あなたが、カフェチェーンのオーナーで、冬の新メニューを出すとしたら、秋ぐらいから、「新メニューを11月から開始」「栗を使った新感覚のスイーツ」などと、メニューに添える、DMで出す、LINEで伝える、といった具合です。

チラシ1枚、ランディングページといった、1媒体のみで購買を促す、「ダイレクトレスポンスマーケティング」という手法が一時期流行しましたが、消費者は、すぐに購買を決定することはありません。主要媒体や、購買接点にたどり着くまでに、期待感を醸成し、購買確率を上げていくのが、このティーザープロモーションです。

あなたのビジネスに当てはめて、考えてみてください。

image by:Flickr

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