出会って3ヶ月でプロポーズされた女と、「結婚する気はない」と宣言された独身女の差

出会って3ヶ月でプロポーズされた女と、「結婚する気はない」と宣言された独身女の差

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  • 更新日:2019/09/01

やりがいのある仕事でキャリアを重ね、華やかな独身ライフを満喫する女。

早々に結婚し専業主婦となったものの、ひたすら子どもの世話に追われている女。

女として本当に幸せなのは、どっちだと思う−?

独身キャリア・工藤千明と、専業主婦・沢田美緒。対照的な選択をした二人が、同窓会で再会

洗練された美女へと変貌した千明は複数の男性から言い寄られているが、最も気になる男・宇野から「結婚する気はない」と宣言され落ち込む。

一方、かつて学校一のモテ女だった美緒は、商社マンの夫との間に一人息子を設け幸せに暮らしていた。しかしその風貌にかつての輝きはなく、夫もつれない

友人の華やかな生活を垣間見て、妙な対抗心を抱いた美緒は、千明を自宅へ招待することにした。

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工藤千明:「これが、商社マンと結婚した女の暮らしか…」

「ここ、かぁ…」

Google Map片手にたどり着いた美緒の自宅は、自由が丘駅からタクシーで5〜6分の場所にあった。

「駅から歩けなくもない」と美緒は言ったが、正直、車を使って正解だった。

徒歩だと20分近くかかる気がするが…まさか美緒はこの道のりを歩いているのだろうか。

閑静な住宅街に建つそのマンションは、周囲の景観に溶け込む薄いベージュ色。相応の高級感はあるが、極めて一般的な分譲マンションと言えるだろう。

−そうよね。商社マンで専業主婦だと、こんな感じよね…。

失礼を承知で、私はそんなことを思う。だが33歳ともなれば、良くも悪くも世の中を知ってしまう。それが素直な感想だった。

その時、ベビーカーを押した若い夫婦がエントランスから出てくるのが見えた。

ファミリータイプのマンション、家族、ベビーカー。そして、都心から微妙に離れたこの自由が丘という街。

そのすべてが異質で、私は落ち着かない気持ちのままマンション内へと足を進めた。

美緒の自宅で垣間見る、商社マン妻の日常。 “幸せアピール”に隠された、彼女の見栄と本音

「いらっしゃい!入って、入って」

玄関ドアから顔をのぞかせた美緒は、小花柄のワンピースに白いレースのエプロンをしていた。

同窓会で会った時より垢抜けたように見えるのは、メイクが少し変わったからだろうか。

「せっかく千明が来てくれたのに、夫が休日出勤になってしまって…」

廊下を歩きながら、美緒は心から申し訳なさそうに呟く。

しかし私にしてみれば、夫婦揃ってくれていなくてむしろよかった。2対1で幸せを見せつけられるなんて…拷問以外の何ものでもない。

−それにしても、こんな白いレースのエプロンをつけている人、リアルで初めて見たわ…。

“良妻感”を押し出してくる美緒の姿にさっそく気圧されてしまったが…私は気を取り直して歩みを進めた。

「お邪魔します…」

コンソールに大げさに飾られた百合の花の香りが、プンと鼻をついた。

ダイニングルームへと案内されると、テーブルの上にはすでにご馳走が並べられていた。

彩りの美しいサラダに、魚介のマリネ、丁寧に裏ごしされたとうもろこしの冷製スープ、それにメインはアクアパッツァ。

夏らしいガラスの器をメインに、テーブルコーディネートも白とブルーで統一されている。

「すごい…。これ、美緒が全部用意したの?」

さすが元CAだ。完璧なおもてなしに、私は素直に感嘆の声を漏らす。

すると彼女は「大したことないのよ」と謙遜しつつ、嬉しそうに語り出した。

「私、夫とベトナム駐在してたでしょう?家に人が来ることも多くて、ホームパーティーが日常だったから。自然と身についたってだけで…あ、じゃあ千明は、ここに座って」

私を上座へと促すと、今度は思い出したように、テーブルの隅に座る子どもに声をかける。

「ほら、遼くん。ご挨拶して」

見ると、小さな男の子がダイニングの隅に腰掛けている。スマホゲームに夢中で一言も発しないから、まるで存在感がなかった。

「…こんにちは」

その言い方は、言わされた感が満載。

チラとこちらに目を向けたものの、またすぐにスマホへと視線を戻した美緒の息子に、私は苦笑してしまった。

「こんにちは。ママの高校時代のお友達の、千明です。よろしくね」

そう声をかけても、遼くんはというと、こちらを見るでもなく小さく頷くだけ。

…私も別に、子どもは嫌いじゃない。しかし普段はスマートな大人の男女としか触れ合っていないものだから、こういう無愛想な子どもには若干の苦手意識を覚えてしまう。

その空気感を察知されているのだろうか?とにかく、彼が心を開いてくれる気配はまるでなかった。

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「美緒は、旦那さんとどこで出会ったんだっけ」

用意されたお料理を一通り褒めちぎった後で、私はお決まりの質問を口にした。

特段興味をもっているわけでもないが、主婦をしている友人の自宅に招かれ、この話題をしないわけにはいかない。

予想通り、美緒は嬉々として応えてくれた。

「いわゆる…お食事会っていうのかな。CAってそういう誘いがすごく多いじゃない?正直、うちの夫ってイケメンじゃないし、私は最初まったく乗り気じゃなかったんだけど…彼のほうが積極的で。出会って3ヶ月でプロポーズされたときはさすがに躊躇したんだけど、半年経った頃に、私もまあいいかなって感じで決めたのよね」

「出会って3ヶ月でプロポーズ…」

美緒の話を聞きながら、私は小さく目眩を覚えてしまう。

− 結婚する気はないんだよね、俺 −
− 結婚する意味というかメリットが、俺には理解できなくて −

私をどん底に突き落としたエリート弁護士・宇野のセリフを思い出したからだ。

宇野は、33歳の私に、初回のデートで「結婚しない」と断言した。

それなのに美緒は、若干25歳で、しかも出会ってたった3ヶ月でプロポーズされたと言う。

…この差は、一体どこにあるのだろう。

選ぶ男が悪いのか、私に問題があるのか。それともその両方か。

思わず考え込んでしまっていると、テーブルの隅にいた美緒の息子・遼くんが「テレビ見たい」と言い出した。

美緒も、大人しくしていてもらうことを優先したのだろう。諦めた様子で黙認し、彼がリビングへ走っていくのを見送る。

そして息子が側からいなくなってしまうと、声のトーンを下げて私に囁いたのだ。

「この子、危ない…」美緒の口から飛び出した、予想外のセリフとは

美緒のカミングアウト

「ねぇ…実は私、この間見ちゃった。千明がグランドハイアットでデートしてるところ」
「えっ…?」

突然話題を変えた美緒に、私はその真意をつかめず戸惑ってしまう。

「ものすごいイケメンだしエリートのオーラ出てたけど…何してる人なの?」

遠慮することなく、直球で探りを入れてくる美緒。

その視線をさりげなくかわしつつ、私は当たり障りのない範囲で答えることにした。

「ああ宇野さん。彼は国際弁護士で…」
「千明って、いつもあんな感じでデートしてるの?」

さらに食い気味に、美緒は興味津々といった様子で尋ねてくる。

「あんな感じって…まあ、そうかな」

−いつまでそんなことしてるの?

大方、そんな風に思っているのだろう。33歳にもなって、家庭にも入らず、子どもも産まず、未だに夜な夜な男とデートをしている私を、彼女は馬鹿にしているに違いない。

…彼女がいつ、私を非難し始めるか。

私は密かに、そんな風に身構えた。しかし彼女が発した言葉は、まったく予想外のものだったのだ。

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「いいな…」

それはとても小さく、消え入るような声で、最初、聞き違えたのかと思った。

−今、いいなって言った…?

その思いがけない反応に、私は彼女の表情をまじまじと眺める。

美緒の顔つきは、ついさっき、お料理自慢をしていた時とまるで異なっている。その瞳はどこか寂しげで、憂いを帯びているようにも見えた。

「…ねぇ、千明」

しばしの沈黙の後、美緒は低い声のまま私に囁く。

「同窓会にさ、村尾くん来てたじゃない。村尾裕一郎」

「ああ、うん」と答えながら、私は急いで同窓会の記憶を蘇らせた。…村尾裕一郎。確か、パーソナルトレーニングジムで成功し、にわかに有名になった男だっけ。

「村尾くんが、どうかした?」

突然飛び出した男の名に私が戸惑っていると、美緒は微かに瞳を泳がせ、さらにこう尋ねた。

「彼…千明のこと気に入ってる様子だったけど、もしかしてあの後デートとかした?」

突拍子もない美緒の質問に、私は慌てて否定する。

「してない、してない。あれから連絡もないし…」
「そうなんだ!」

すると私の言葉を最後まで聞かず、美緒は被せて高い声を出した。

そして彼女は、少しばかり意味深に間をあけると、この日一番の笑みを浮かべてこう言ったのだ。

「実は私…村尾くんからデートに誘われてるの」

▶NEXT 9月2日 月曜更新予定
村尾と美緒がデート…?穏やかな幸せに満足できない主婦の人生が狂い出す

▶明日8月27日(火)は、人気連載『もう1人の私』

~自分でも戸惑うような意外な一面を、誰しもが持っている。既婚の男を夢中にさせる絵里香(26歳)の“もう1人の自分”とは…?続きは、明日の連載をお楽しみに!

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