僕が「カイガーマン」になった理由

僕が「カイガーマン」になった理由

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  • 更新日:2017/12/08

“介護”と聞くと、どうしても男性はネガティブなイメージを抱いてしまうのではないでしょうか。しかしBEST TIMESで連載「母ヘの詫び状」を展開する夕暮二郎氏は「介護で見つかる幸福もある」と言います。今回は、そんな氏が介護をするようになったキッカケについて綴ります。

カイガーマンあるある

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連載「母への詫び状」第四回〉

「カイガーマンあるある」をひとつ紹介しよう。親を自宅介護している者同士の会話で、「うちは要介護度が3なんですよね」「ああ、3ですか。うちは要介護度4に上がったんですよ」と、相手より介護度が重いことがわかると、ちょっとだけ勝ったような気分になる。しかし、そこで相手が要介護度5(もっとも重いランク)だとKO負け。話が続かない。

こんなふうに介護をネタにジョークっぽいことを書いたら、不謹慎と怒られるのだろうか。

「カイガーマン」というのは、介護する人の呼称として何かポップなネーミングはないだろうかと、考えてみた。介護男子、介護女子より、カイガーマン、カイガーウーマンのほうが正義の味方みたいでカッコいい。

認知症の父に暴力を振るわれて、真っ赤な生傷が絶えないカイガーマン・レッド!
シモの世話に追い回されて、家じゅうがトイレ状態のカイガーマン・イエロー!
よしなさいって。これを部外者が口にしたら一発アウトだろうが、実際に介護している人が自虐的に言う場合のみ、ギリギリでセーフだろうか。

ひとくちに介護といっても、それを取り巻く状況、大変さは、人によって大きく違う。シモの世話が必要か。徘徊があるか。これだけでも過酷さは一気に上がる。

この連載の第一回で、介護は悲しいことばかりじゃなく、幸せな出来事だってたくさんある、と書いてみたものの、「それはあんたの話だ。うちは違う」と反論されたら何も言えない。

うちはまず父親が認知症になった。徐々に進行していき、家がわからなくなって警察のご厄介になったという話を聞いたときは愕然とした。ただしこの頃、ぼくは親とあまり連絡を取っていなかったから、詳しいことは把握していない。親のことは兄任せだったからだ。

それからしばらくして、今度はふたり暮らしで父の世話をしていた母親が、身体の病気に襲われた。おそらくストレスの積み重ねも原因にあったのだろう。母から病気を告げる電話があった日のことを思い出すと、今でも背筋に嫌な汗がにじむ。

親の介護なんて想像してなかった

認知症の父と、重い病気の母。このまま年老いた夫婦がふたりで暮らしていけるはずがない。

こうして、東京でぶらぶらしていた独り身の息子が、事態の深刻さにようやく気付き、急遽、実家へ帰って両親の世話をすることになった。

うちは男兄弟3人でぼくは次男だが、兄は結婚もして家庭を持っている。とてもしっかりした長男で、正月やお盆には実家へ帰るとか、親に孫の顔を見せてあげるとか、それらのまともな息子の役目は全部、兄がやってくれていた。しかしさすがにこの非常事態で、すぐに動ける身軽さはない。三男も同様だ。

一方、次男のこちらは、妻なし、子供なし、勤め先なし。一番ないのは社会適合性なのだけれど、それはさておき、身軽さだけはある。仕事にも熱心ではなく、ちょうど仕事量を減らして、自由な時間を増やした頃の出来事だった。

自分が行かなきゃどうにもならないだろうな。ほかに選択肢はないだろうな。
そう思っただけである。特に一大決心をして、帰郷を決めたわけではない。

それにこの頃はまだ自宅で親の介護をするなんて、想像していなかった。認知症の父は施設にお願いするしかない状況だったし、病気の母は当分、入院生活が決まっていた。母が良くなるまでの間、ぼくが父の施設のあれこれをやり繰りしながら、病院の母と施設の父のところに顔を出す。それなら自分にもできるのではないかと考えていた。

ぼくが実家に帰ったという知らせは、夕暮一族の親戚中で驚きのニュース速報として受け止められたらしい。
「二郎が帰ってきたんだって!」
「なに、二郎!? 一番帰ってきそうもないヤツが帰ってくるなんて、これは大雪が降るぞ!」

父方の親戚も、母方の親戚も、同じ反応だった。わざわざ電話してきて、ぼくの存在を確かめたおじさんもいた。

そこまで言わなくてもいいだろうと思ったけど、本当にその冬はシベリアからの寒気団が押し寄せ、記録に残るような大雪が降ったのだった。

※本連載は隔週木曜日「夕暮時」に更新します。

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