マネージャーの努力が半端ない! 超スーパー地下アイドルの正体

マネージャーの努力が半端ない! 超スーパー地下アイドルの正体

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  • 更新日:2017/11/13
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地下アイドル界で新機軸を打ち出した超スーパー地下アイドル「GINZAN BOYZ」(公式サイトより)

「はい、どうぞ。お気に入りのイケメンを探してね」

かつては日本有数の鉱山として知られた、兵庫県朝来市の生野銀山。2017年9月下旬、公開されている観光坑道に入ろうとすると、入り口で男性スタッフから「GINZAN BOYZ(ギンザンボーイズ) 全メンバープロフィール資料」を渡された。

【推しメンを探せ!銀山ボーイズのメンバーを写真で紹介】

きょろきょろしながら坑道の入り口を目指すと、右手に資料の最初に載っていた次郎羅茂(じろうらも)を発見。山に向かって、真剣な表情でつちを振るっている。そしてそのまま、全く動かない……。そう、彼らは、メンバー全員がマネキンという、超スーパー地下アイドルなのだ。

入り口で手渡された資料にある顔写真やプロフィールを見ると、「No.1次郎羅茂(じろうらも):空と太陽を愛する、イタリア系フェイスの堀大工。(中略) 常にフォトジェニックなポーズを意識している」とある。そして英語の筆記体で「girolamo」のサインが。ちなみに「i」の点は、ハートマークだ。

プロフィールは、鉱山(ヤマ)の世界観が感じられる長いものから、「No.46 しずかちゃん 無口。」とほのかにやっつけ感が漂う短いものまでさまざまで、サインは多彩だ。女性も入れて60人(体)分あり、それぞれのキャラクターに応じた内容は、考えた人たちの執念すら感じさせる。

坑道出口上の岩場には、「No.47 甚八(じんぱち)」「No.48 鈴丸(すずまる)」「No.49 杢太郎(もくたろう)」がいた。資料によると、鈴丸は、手にした丸太を使ったエクササイズを考案しているらしい。もはや意味がわからないが、どんなエクササイズなのか、ものすごく気になる。そこも狙いなのだろうか。

平均温度13度のひんやりとした坑道内のあちこちや、外にある資料館でも、次々とメンバーに出くわした。メンバーたちは、暗がりで、体を張って在りし日の鉱山での仕事を伝えている。

外の売店では、メンバーのサイン入りブロマイド(1枚税込み200円)やTシャツ(同1500円)を販売。写真撮影コーナーもあり、無類のゴシップ好きでリサーチ力は某週刊誌並みという「No.40 よさぶろう」をはじめとしたメンバーと写真を撮ることができる。地元の60代の夫妻が、孫で小学4年の男の子と、うれしそうに写真に納まっていた。手には、アイドルグループの応援には欠かせないであろう、ギラッギラに彩られたうちわを持っている。銀山のスタッフの手作りだそうだ。

「孫がよくギンザンボーイズのことを話しているので、いっぺんどんなものかと見に来ました。地元の小学校の運動会に来たのも見たけど、すごいな……」。男性は、戸惑いながらも笑顔で話した。

ギンザンボーイズは、依頼されれば出張もする。この小学校の運動会にはよさぶろうが出向いた。銀山のスタッフによると、みこしの上、カバーの中からよさぶろうが姿を現した瞬間、子どもたちから「わーっ」と歓声が上がったという。よさぶろうは子どもたちとフォークダンスにも興じたそうだ。

なぜマネキンたちがアイドルになったのか? グループのマネージャーで、銀山の運営会社「シルバー生野」社員、大坂雄吾さんは「観光振興のため、一肌脱いでもらいました」と明かす。

室町時代から本格的な採掘が行われ、明治時代以降は、日本の近代化を支えてきた生野銀山。閉山の翌年、1974年から観光施設として営業を始めた。バブル期の80年代後半は、歴史や産業遺産の愛好家を中心に年間23万人が訪れたが、近年は年間7万人程度と落ち込む。

若者や家族連れなど、もっと多くの人に来てほしい。悩んだあげくに白羽の矢を立てたのが、銀山のマネキンたちだった。大坂さんは「彼ら(マネキンたち)の強い希望もあった」と話す。

ボーイズといいながら、鉱山で働く男性53体と追っかけ(という設定?)の女性7体で構成。うち半数は開業時からいる“古参”で、いわゆる「平たい顔」をしている。残りのメンバーは、既成のマネキンをアレンジしたかのような、彫りの深さが特徴だ。どちらも味のある顔立ちである。

ボーイズたちは2017年7月下旬、デビュー曲「ギンギラ銀山パラダイス―GGGZPDS―」を携えてデビューを果たした。さらに、選抜メンバーのカビやススを落として坑道の外に出し、PV撮影も敢行。動画サイトなどで公開した。PVには、朝来市の多次勝昭市長も、ヤマ男姿で特別出演している。

「聞こえますか? ノミの音/見えますか? 見果てぬ夢♪~」

前時代的(?)なフレーズで始まり、陽気なメロディーに合わせてボーイズたちが「ようこそ地下880mへ」「一攫千金誰のもの/ノミ1本で掘りあてて見せるさ/君のハートを掴むように」などと歌うデビュー曲は、特徴のあるキャラクターも相まって、たちまち話題となった。17年10月現在、PVの再生回数は4万5000回を超えている。

「デビュー曲の歌詞は、これまで銀山に興味がなかった人にパンチを与えたいと、制作スタッフで一言一言を吟味しました。80年代のアイドルグループをリスペクトし、チープなゴージャス感を大切にしています」(マネージャーの大坂さん)。ボーイズ効果か、現在のところ、銀山の来場者数も前年比10%ほど増えているという。

しかし、大坂さんには悩みがある。「彼らはやる気はあるんですが、人前では動かないポリシーを持つがゆえに、坑道から出すのが大変なんですよ」。メンバーはもともと据え置き型のため、底におもりが埋め込まれており、小学生よりも重い。「劣化も激しく、暗い坑道内だと分かりませんが、外に出すとすごく汚れています」

さらに、機械で動く18体は外に出せない仕様になっているため、「イベントなどでは、イケメン度合いよりも、出しやすいメンバーを優先してしまいます」(大坂さん)。また動かないため、イベント時はスタッフが後ろから黒子のように支えて動かしているという。

そんなスタッフの涙ぐましい努力を知ってか知らずか、ボーイズたちは今日も寡黙にアイドル活動を続ける。今後は総選挙やミニライブなども検討中だ。異色のスーパーアイドルたちに、ぜひ会いに行ってみてほしい。(ライター・南文枝)

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