第2次“脳トレ”ブーム到来!?認知機能を向上させるビデオゲームはどれだ

第2次“脳トレ”ブーム到来!?認知機能を向上させるビデオゲームはどれだ

  • @DIME
  • 更新日:2018/01/12

野球漫画の“剛速球”には尾を引くような線が何本も描かれてその速球ぶりが表現されているが、当然のことながら現実の風景にそのような効果表現は見えない。しかしながらその時のコンディションや対象への注目度によっては、見えている世界はかなり違ってくることが指摘されている。

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■物の見え方は条件次第でかなり異なる

まぶたを開いていれば周囲の光景は否応なく目に入ってくるが、興味を惹かれた何かに注目している時は、ボンヤリ眺めているのとはまた違った見え方がしていそうだ。

米・コロラド州立大学の研究チームは、80年代のシンプルなビデオゲーム「ポン(Pong)」を使った実験で、我々の行動が物事の見え方に影響を及ぼしていることを報告している。

研究チームのリーダーであるジェシカ・ワット准教授のこれまでの研究では、プレイ中の野球選手にはボールが実際よりも大きく見えていることや、疲れていたり重いリュックを担いでいる人には同じ上り坂でも傾斜が急に見えたりすることが報告されている。つまり当人の行動や状態が物事の見え方に影響を及ぼしているのだ。

しかしこれらの実験には疑いの目も向けられていた。それは実験の目的が察しやすいために実験参加者は意識的であれ無意識的であれ、研究チームが期待している回答をする傾向が高まっているのではないかという疑惑である。

例えばリックを背負わされてから上り坂の映像を見せらると、ある程度の洞察力があれば荷物と上り坂の関係性を探る実験であることは容易にわかるだろう。そこで上り坂の勾配を尋ねられると、最初は20度くらいには見えても少しばかり“盛って”しまい、25度などと答えたりするのだ。こうした実験参加者の心理は反応バイアス(response bias)と呼ばれている。

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Colorado State University」より

なるべく反応バイアスを抱かれないかたちで実験ができないものか考えたワット准教授は、1980年代のクラシックなビデオゲーム「ポン」を使って参加者に目的を悟られ難い手法で実験を行なった。

「ポン」は卓球やテニスをシミュレートしたゲームで、飛んでくるボールをラケットで打ち返すというシンプルな動作で競い合う。実験参加者はこのゲームを何度かプレイした後にボールがどのくらい速かったかを質問されてそれぞれ回答した。そして実はプレイごとにラケットの大きさが異なっていたのである。

収集した回答を分析した結果、実のところどのゲームもボールのスピードは同じであったのだが、ラケットが小さい時のゲームでボールのスピードが速いと回答している傾向が明確に浮かび上がった。つまりラケットが小さくなり、ゲームが難易度が高まるとボールが速く感じられてくるのだ。

またプレイ中にラケットの大きさの変化に気づいた者であっても同じように小さいラケットの時にボールが速いと回答する傾向にあった。加えて察しの良い実験参加者の中にはこの実験の目的を見抜いていた者もいたのだが、これもまた回答の傾向の大勢には影響していなかった。

漫画やCG表現のような“エフェクト”はかからないものの、我々の物の見え方には条件次第でかなり違ってくることが指摘されることになった。となればぜひとも“後光”が差すような人物になりたいものだがいかがだろうか。

■認知機能トレーニングプログラム「ニューロトラッカー」とは

それが厳密には“錯覚”だとしても、観察者のコンディションでものの見え方が変わるとすれば、むしろ積極的に活用したいというニーズも生まれてくるだろう。例えばアスリート、特に球技の選手であればもしボールが大きく、遅く見えてくれればかなりのアドバンテージになる。そして実際に最先端のトレーニングでは、効果的に動体視力や認知機能を高める訓練が実施されているようだ。

プロテニスプレイヤーの錦織圭選手を輩出したことで日本でも知られているアメリカのスポーツ選手専門の寄宿舎学校「IMGアカデミー」では、各種のトレーニングプログラムの傍らで効果的な「視覚トレーニング」が組み込まれている。

カナダ・モントリオール大学精神物理学部のジョスリン・フォーベー教授によって開発された認知機能トレーニングプログラム「ニューロトラッカー(Neuro Tracke)」は、このIMGアカデミーにも導入されて積極的に活用されているのだ。

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YouTube」より

ニューロトラッカーを用いたトレーニングでは、ディスプレイ上で動く複数のボールへの注意力持続時間を伸ばすことをまず最初に意図している。

ディスプレイ上にはまず8個の黄色いボールが登場し、まったくランダムな確率で1〜4個のボールが赤く変色する。この赤く染まったボールが追跡すべきターゲットとなる。

再びボールが黄色に戻って8個のボールは4〜8秒間の間それぞれ不規則に動き回る。そしてボールの動きが止まったときに、ターゲットのボールがどれであるか指定するのだ。ターゲットが1個で動き回る時間が4秒であれば比較的簡単かもしれない。しかしターゲットが増えて動き回る時間が長くなれば追跡はそれだけ難しくなる。

こうした認知的な負荷をかけ続けることで、アスリートに必要な空間認知能力や周辺視野、予測能力などを効果的に高めることができるということだ。アスリートの能力開発のみならず、クリエイターの能力向上、軍隊での活用、そしてメンタルヘルスの改善など、さまざまな分野にも応用できるというこのニューロトラッカーだが、日本国内でもいくつか試すことができる施設があるということなので、気になった向きは調べてみてもよいのかもしれない。

■ゲームのジャンルによって異なる脳への“効能”

まさに第2次“脳トレ”ブームを迎えているともいえそうな条件がいろいろ揃ってきている。最初の“脳トレ”ブームの時にはビデオゲームによる脳への悪影響もいろいろ懸念されたのだが、昨今ではあまり聞かれなくなってきているようだ。むしろ逆にゲームが脳の好ましい変化をもたらすことを報告する研究が増えてきているのである。

しかしながらもちろんゲームの内容が異なれば脳への“効能”も違ってくることが徐々にわかってきている。テキサス大学ダラス校、南カリフォルニア大学などの合同研究チームが神経科学系ジャーナル「Restorative Neurology and Neuroscience」で昨年10月に発表した研究では、プレイするゲームのジャンルと、それに刺激されて能力が向上する脳の部位の関係を探っている。

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Science Newsline」より

研究チームは普段はあまりビデオゲームをしない幅広い年齢層の成人男女にビデオゲームをプレイしてもらい、その最中の脳活動をMRIでモニターする実験を行なった。実験参加者は2つのグループに分かれ、Aグループにはアクションゲーム(『Tank Attack 3D』)をプレイしてもらい、Bグループにはストラテジーゲーム(『Sushi-Go-Round』)をプレイしてもらった。

ゲームプレイ中の脳活動を分析した結果、ワーキングメモリーと自己抑制に関わる脳の部位はA、Bどちらのグループも活発であった。そしてストラテジーゲームをプレイしたBグループにおいては、素早い情報処理(perceptual speed task)に関わる脳の部位も活発に活動していることが判明した。ということはアクションゲームよりもウォーゲームなどのストラテジーゲームのほうが脳への“効能”が多大であるということになるのかもしれない。

しかし一方でアクションゲームは大脳辺縁系をより刺激するので、さまざまな感情を引き起こし気分を高揚させる効能がある。したがってアクションゲームは気分障害などの症状を緩和する働きもありそうだ。しかしジャンル分け以上に、個々のゲームの具体的な内容による部分も大きく、脳への効能を単純化することはできないということだ。つまり実際にプレイして検証してみないことには“効能”の詳細はわからないということになる。

ともあれこの『Sushi-Go-Round』などをはじめ認知機能を高めることが判明したビデオゲームはいくつかあるので興味を持った向きは“脳トレ”を兼ねてプレイしてみてもいいのかもしれない。

文/仲田しんじ

フリーライター。海外ニュースからゲーム情報、アダルトネタまで守備範囲は広い。つい放置しがちなツイッターは @nakata66shinji

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