テスラ・イーロン・マスクの火炎放射器は本当の炎上商法

テスラ・イーロン・マスクの火炎放射器は本当の炎上商法

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  • 更新日:2018/02/15
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電気自動車企業テスラのイーロン・マスクがCEOを務めるスペースXが世界最大級のロケットの打ち上げに成功し、マスメディアから注目を浴びた。日本でもテレビのワイドショーをはじめ多くのメディアが取り上げた。朝日新聞・天声人語は「妄想を現実にし続けている」とマスクを持ちあげている。

宇宙をゆくマスク氏所有のEVテスラ「ロードスター」(Space X/Best Image/AFLO)

しかし、マスクの世界は、それほどきれいごとではない。スペースXに加え、CEOを務めるテスラのため事業資金作りに余念がないマスクは、話題作りにもたけている。時としては、世間の耳目を集めることにより宣伝効果を狙う炎上商法を手掛けることも辞さない。いま、注目を浴びている炎上商法の商品は、マスクのトンネル掘削企業ボーリング社が手掛ける「火炎放射器」だ。

2016年末スペースXの社員が、ロサンゼルスの本社社屋前の横断歩道でトラックに撥ねられる事故があった。この事故を受け、マスクはスペースX本社社屋からロサンゼルス国際空港までトンネルを掘ると発表し、即座にボーリング社を設立した。既にスペースXの駐車場で試験的な掘削を始めている。

昨年10月マスクは20ドルのボーリング社の帽子を売り出した。購入者の中から10名をトンネルの工事現場にマスク自身が案内する企画を発表し、5万個を売り切った。この販売で100万ドルの資金を作ったが、さらに1月下旬500ドルの火炎放射器を2万個売り出し完売した。売り上げ1000万ドルだ。話題作りと同時に資金を集める手法だ。

テスラ・ロードスターが宇宙に

将来の月面、あるいは火星着陸を目指し、2月6日にスペースXが打ち上げた世界最大の推力を持つロケット、ファルコンヘビーは長さ70メートル、幅12.2メートル、地球低軌道まで63.8トン、火星までであれば16.8トンの積載が可能だ。スペースシャトルの地球低軌道までの積載量は24トンなので、ファルコンヘビーは2.5倍の積載可能量を持つ。マスクは、スターマンと呼ぶマネキンを運転席に乗せたテスラ・ロードスターをロケットの先端に取り付け、運転席の後ろに設置したカメラの映像を地上で見られるようにしている。

ファルコンヘビーにはブースター(補助推進装置)が3基利用されているが、打ち上げ費用を削減するため全て回収することが計画され、両側の2基は地上に着陸することで回収された。メインの1基は海上に激突し、回収できなかったと報道されたが、経費削減につながる試みだ。

マスクは、ロケットとロードスターは太陽の周りを数億年公転することになると期待しているが、数年で分解すると予想する専門家もいるようだ。ロードスターを載せたことについてマスクは「馬鹿げて、面白いことが重要だ」とコメントしたが、億万長者が10万ドルの車を面白いとの理由で宇宙に打ち上げ資源を無駄使いすることは、世界の不平等・格差社会を体現していると非難する報道もある。

スペースXの資金はどこから

スペースXの資金はロケット打ち上げの収入と資金提供に依存しているが、同社は非上場会社であり株主構成などは非公開だ。2015年1月グーグルとフィデリティ・インベストメンツが共同でスペースXに10億ドルを出資したことが証券取引委員会の資料で明らかになったが、得られた権益は10%に満たないとされた。スペースXの当時の時価総額は100億ドル以上ということだ。スペースXの株式を一般の投資家が購入することはできないので、間接的に保有する唯一の方法は、株主であるグーグルの株式を購入することと紹介するメディアもある。

2016年11月スペースXはインターネットサービス提供のため4400の人工衛星を打ち上げる申請を連邦通信委員会に行ったが、その申請の中でマスクがスペースXの54%の株式、議決権については78%を保有していることが明らかにされた。

2017年後半、スペースXは4億5000万ドルの資金調達を行っており、現時点でのマスクの持ち分は不透明だが、企業価値評価のコンサルタントは昨年末現在のスペースXの企業価値を215億ドルとみている。テスラ株と合わせればマスクは大変な資産家だが、保有するもう一つの非公開会社ボーリング社に自己資金を使う意図はないようだ。

トンネルも掘削するマスク

2016年12月スペースXの従業員3人が本社前でトラックに撥ねられる事故があった。事故の3時間後マスクは、「交通問題にはうんざりする。トンネル掘削機を作って、掘り始めるか……」「会社名はボーリング社にする」とツイートした。スペースX本社からロサンゼルス国際空港までトンネルを掘り、道路を利用しなくても良いようにする構想だ。

ボーリング社は、スペースXの駐車場から掘削を開始しており既に100メートル掘り進んでいる。国際空港に向けてさらに3.2キロメートル掘削する許可を得ている。ボーリング社によると同社のトンネルの特徴は次にある。

○通常のトンネル掘削には1マイル当たり10億ドル必要なこともあるが、掘削コストを10分の1以下にする。そのため通常のトンネル径8.5メートルを半分にし、車をスケート呼ぶ自動運転の電動台車に乗せ運搬する。直径が半分になれば掘削費用は3分の1から4分の1になる。また、スケートには車以外に8人から16人の乗客、あるいは荷物を載せることもでき、時速200から240キロメートルで輸送可能だ。

○トンネル掘削機(TBM)の馬力を通常の3倍にし、スピードを上げる。通常のTBMは掘削と支保に半分ずつ利用されるが、技術開発によりこの割合を変更し掘削時間を増やす。TBMを自動化することにより効率と安全性を向上させる。掘削により発生する岩石と土砂の処理には時間と費用がかかるので、この作業を削減するため発生した土砂などを利用しレンガを製造し、履工(トンネル内の内装)に用いることにより効率化を図る。

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ボーリング社は、使用する新技術などを実証するため図に示されている10.5キロメートルの実証トンネルの掘削許可を関係市に申請している。ロサンゼルス地区に加え、ワシントンDCとボルチモア間およびシカゴ・オヘア空港と市街地を結ぶルートについても検討しているとボーリング社は述べている。

12月23日夕刻カリフォルニア州南部サンタバーバラ郡にあるヴァンデンバーグ空軍基地から、人工衛星を搭載したスペースXのファルコン9が打ち上げられた。打ち上げ時の雲は不思議な形になるため、目撃者から「地球外生物の来襲」「北朝鮮のミサイル」「サンタクロースの予行演習」などSNSで様々な発信があったが、この雲に気を取られた車が追突事故を起こしてしまった。自動車事故をなくすためトンネルを掘削しているマスクのロケット打ち上げが事故を誘発するのは皮肉な話だ(写真)。

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火炎放射器を売るマスク

マスクは「ゾンビが現れれば、火炎放射器を買っていて良かったと思うだろう。ゾンビに効果がなければ、返金する」「面白いことが好きでなければ、買わないほうがいい」とツイートしており、おもちゃの範疇と考えているようだ。法的には炎の長さが3メートル以下の火炎放射器は規制されないとも説明している。

面白いという理由で火炎放射器を売ることには、当然非難もある。カリフォルニア州議会議員は火炎放射器について次のようにフェイスブックに投稿している「これが本当のこととすれば、激しい怒りを覚える。あなた方もそうあるべきだ。もしこれが冗談だとすれば、歴史上最悪の森林火災シーズンが終わろうとしている時に、恐るべき無神経さだ」。

マスクが話題と資金を一緒に作る必要があるのは、不調が続いているテスラから目を逸らさせる狙いもあるのかもしれない。

苦悩が続くテスラ

2017年第4四半期のテスラ決算は、売り上げ32億8800万ドル、純利益は7億7100万ドルの赤字となった。年間では117億5900万ドルの売り上げ、22億4100万ドルの赤字だ。収益低迷の最大の原因は、量産車モデル3の立ち上がりの生産問題が解決できないことだ。アナリストの販売台数予想は平均5200台だったが、実際の販売は1542台に留まった。モデル3の週当たりの生産台数を5000台にする目標は2018年3月末から6月末まで再度3カ月延期された。

しかし、営業キャッシュフローが前期のマイナス3億100万ドルから5億1000万ドルに好転したことから、投資家は安心したようであり、決算発表により株価は上昇した。この営業キャッシュフロー好転の理由は、モデルXとSの在庫販売によるもので一時的なものだ。XとSの第4四半期の生産台数2万2137台に対し販売は2万8425台に達している。

赤字が続くテスラの財務内容は悪化している。例えば、12月末時点で流動負債は前年末の58億ドルから76億ドルに増加しているが、流動資産は前期末の63億ドルから僅かに増え66億ドルだ。流動比率は87%、健全な状態ではない。

テスラは増資、転換社債、ジャンクボンド(くず債権)と資金調達の多様化を図っているが、ジャンクボンドの価格は依然低迷しており、追加の発行は難しい状況だ。テスラは新しい資金調達手段として、車のリース債権に裏付けされた債券を2月に5億4600万ドル発行した。年利率は2.3%から5%、2020年償還の条件だ。

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