人口減少社会で進んでいるもの ── 核家族化よりも単身化と家族の多様化

人口減少社会で進んでいるもの ── 核家族化よりも単身化と家族の多様化

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  • 更新日:2018/02/20

少子化の背景に、晩婚化、非婚化が挙げられています。こうした家族のあり方の変化は、人口減少社会とどのような関係があるのでしょうか。

福井県立大地域経済研究所特命講師、丸山洋平氏が、人口移動や家族の姿の変化から、日本の人口を捉えるための視点について執筆する本連載の第4回は「変わる家族の形と進む単身化」をとりあげます。

人口減少社会とは家族の形が変わる社会

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[イメージ]一人暮らしの高齢女性。晩婚化、非婚化、高齢化による未亡人となって一人暮らしの長期化。日本の家族構成は急激に変化してきています(写真:アフロ)

人口減少社会とはどのような社会か。

その一つの答えは「家族の形が変わっていく社会」であると思います。中長期的な人口減少の大きな要因は少子化です。その少子化の背景には、結婚のタイミングを遅らせる晩婚化、その結果として未婚者が多くなる未婚化、最終的に結婚しないままになってしまう非婚化といった、家族形成行動の変化があります。

これは自分の家族を形成する場合の話ですが、親との関係も変わってきています。その最たるものは3世代世帯の減少です。成人した子どもの夫婦と親が同居するというスタイルをとっている家族は、日本全体でみれば今やごく少数派です。

家族の統計というのはあまり多くないのですが、世帯の統計は充実しています。世帯とは、生活を共にする人々のユニットですから、家族と共通する部分が多くあります。今回は世帯の家族類型に着目してみましょう。

核家族化は今でも進行しているか

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[表1]全国の家族類型別世帯数とその割合

表1は日本全体の家族類型別世帯数とその構成割合を示しています。国立社会保障・人口問題研究所が2018年1月に新しい将来世帯推計の結果を公表しましたので、そのデータも掲載しています。世帯の家族類型は5つにまとめています。このうち、夫婦のみ世帯、夫婦と子からなる世帯、ひとり親と子からなる世帯を合わせたものが核家族世帯です。

核家族世帯の実数は1965年から2015年まで増加を続け、2020年にピークを迎えるという見通しが得られています。ですがその内訳をみると、増加しているのは夫婦のみ世帯とひとり親と子からなる世帯であり、夫婦と子からなる世帯は1985年をピークに減少に転じています。

これらの変化と比較して、圧倒的に大きく増加しているのが単独世帯です。核家族世帯は1965年から2015年までの50年間でおよそ2倍になりますが、単独世帯は10倍に拡大しています。実数から見ると、現在進行しているのは核家族化というよりも単身化であるといえるでしょう。

この傾向は割合でみるとより鮮明に表れます。核家族世帯は1975年、夫婦と子からなる世帯は1970年にピークを迎え、その後は低下しています。3世代世帯を含むその他の世帯も50年間にわたって割合を低下させ続けてきました。割合の上昇が続いているのは夫婦のみ世帯、ひとり親と子からなる世帯、そして単独世帯です。いずれも国立社会保障・人口問題研究所の推計期間中、上昇し続けています。

夫婦と子からなる世帯は、夫婦2人と子ども2人という、いわゆる標準世帯です。戦後日本の社会制度の多くは、この標準世帯が多数を占めるということを念頭に置いた仕組みになっているものが多くあります。年金制度などは代表的なものでしょう。

こうした制度が作られた1950~60年代では、夫婦と子からなる世帯、核家族世帯が多数派を占めていましたから、あまり問題はありませんでしたし、合理的ですらありました。

しかし、現代社会は違います。2015年で最も大きな割合を示すのは単独世帯であり、夫婦のみ世帯と夫婦と子からなる世帯の差も1965年よりもずっと小さくなりました。特定の家族類型の世帯が大多数を占めるような状況ではなく、家族の形が多様化しています。

そして、その中でもひと際目立つのが単身化です。今でも「核家族化が進行している」という表現を見かけることがありますが、適切なものではないでしょう。進んでいるのは家族の多様化であり、単身化です。

年齢別に見た単独世帯数の変化

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[図1]全国の単独世帯数と世帯主率(ともに男女計)

単身化の進行についてさらに見ていきましょう。単独世帯数はどのような年齢で増加してきたのでしょうか。図1は年齢5歳階級別の単独世帯主数、単独世帯主率(ともに男女計)を示しています。単独世帯主とは単独世帯を構成する世帯人員、すなわち単身者数です。単独世帯主率とは、年齢別人口に占める単身者数を意味します。1980年、2010年、2040年の推計値を示しており、30年ごとの変化がわかります。

1980年と2010年を比較すると、どちらも最も数が多いのは20~24歳ですが、25~29歳以降の年齢では2010年が大きく増加しているのがわかります。これは晩婚化が進んだことで、未婚であるために単身化するという人が増えたことを意味します。

世帯主率も大きく上昇しており、ひとり暮らしという居住形態が、若い時の一時期だけであった社会から、中高年にまで継続するような社会になったといってもよいでしょう。なお、高齢期の単身者の増加には、夫の死亡により単身者となった女性も多く含まれています。寿命が延びたことによって、未亡人として暮らす期間が長くなったということです。

2040年の推計値を見ると、その傾向はさらに強くなります。数として増加するのは主として高齢期の年齢です。これは晩婚化が進んだ結果として家族形成せず、未婚のまま高齢期を迎える人が増加するということの現れです。80~84歳では世帯主率は約25%であり、高齢期は軒並み20%を超えています。

4~5人に1人の高齢者は一人暮らしであるという社会がそれほど遠くない将来にやってくる。子どもや孫に囲まれて暮らすというような、一昔前であれば当たり前に思われていたことを実現できる人は、非常に限られてくるでしょう。すでにきょうだい数は減ってきていますから、親戚の数も減っています。子どももいない、親戚もいないという高齢者がこれから先は間違いなく増加してきます。

図1は30年ごとのデータを掲載していますが、30年という期間は大体一世代です。親世代、子世代、孫世代のそれぞれが生きる社会がこれだけ大きく変わるというのは、注意しなければなりません。家族形成にかかる様々な行動が世代によって異なり、ライフコースの基底的条件も異なっているということですから、親世代からすると自分の経験が子世代、孫世代には当てはまらないということも起こります。

子どもの居住地によって見た高齢単独世帯

高齢単独世帯と高齢夫婦のみ世帯を合わせて、高齢者のみ世帯として把握するケースが、行政の資料などにはよく見られます。こうした世帯は、同居人からの生活サポートを受けられないという点で、生活に困難を抱えやすい層であるといえます。また、昨今増加する孤独死の予備軍という認識もあるでしょう。ですが、こうした世帯の高齢者には健康な高齢者も含まれていますし、地域社会の人間関係が豊富で孤立死とは無縁であるような高齢者も含まれています。

家族の多様化が進んでいると書きましたが、高齢者の世帯やその生活状況も多様化しています。ですから、単純な家族類型や高齢者のみ世帯であるという情報だけではそれぞれの施策が対象とする高齢者像を把握することが難しくなっています。もう少し、施策の主たる対象となる高齢者を特定したいということで、高齢単独世帯について、子どもの居住地の別に見てみましょう。たとえ一人暮らしであっても、ごく近くに子どもが住んでいれば、同居と同じような生活サポートを受けられる可能性があります。

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[図2]高齢単独世帯の子の居住地別割合(2016年)

図2は2016年の国民生活基礎調査を用い、高齢単独世帯について子の居住地別割合を示したものです。最も大きい割合となるのは「子どもなし」であり、男性は50%を超えています。この多くは結婚をせず、未婚のまま高齢期を迎えた人たちであると推察されます。この高齢単身者は子どもからの生活サポートを期待できない分、公的サポートの重点対象となる人々といえるでしょう。

近隣地域とは、同じ町内会、回覧板が回される程度の範囲と定義されていますので、同一家屋、同一敷地、近隣地域までは子どもが近居していると見ていいでしょう。その割合の合計は、男女計で16.9%、男性で11.6%、女性で19.4%であり、同一市区町村にまで広げれば順に35.6%、25.3%、40.3%となります。

多数を占めるというわけではなく、男女差も大きいですが、一定程度は親子が日常的に関わりを持ちうる距離にお互いが居住しているとみてよいでしょう。高齢の独居者は皆、子どもとの関わりがないというわけではありません。「子どもが近居しているから大丈夫」とは限らないかもしれませんが、このように家族類型としては表れてこない親子の居住地の関係を見ることで、より公的サービスを提供するべき対象を特定して把握することが可能です。

家族の有無によらない生活支援の仕組みづくり

日本の人口は既に減少に転じていますが、世帯数の増加はもう少しの間続きます。そうした世帯数の増加の中で従来の標準世帯は減少し、家族の多様化が進展します。その中心にあるのは単独世帯の増加です。晩婚化が進んだことにより、未婚期間が長くなり、未婚であるために単身化するという人が増加しています。そうした人々は配偶者も子どももいないまま高齢期を迎え、家族による生活サポートを受けられない状況に置かれることになります。

「3世代世帯は介護の含み資産」という言葉があったように、日本社会では家族による無償の支援を前提とした仕組みづくりが多くなされてきました。しかしながら、今やその前提は大きく崩れていきます。今後は家族による支援を前提としない仕組みづくり、公的サービスや地域社会のつながりの中で生活満足度を高めるような工夫をしていくほかありません。

ただ、子どもの居住地でも示されるように、高齢単身者の全てが孤立状態になっているわけではなく、子どもからの生活サポートを受けられる人もいます。距離という地理的条件だけでなく、心理的な孤立感も一様ではないでしょう。多様化する家族、多様化する高齢者の実態を把握することの重要性は増してくると思います。

注意したいことは、「子どもが近居しているから、あのお年寄りは放っておいてもいい」といった考えもよくないということです。昔と違ってきょうだい数も減っていますし、非正規労働の増加や女性の社会進出などによって、サポートする側の余力も少なくなっています。

にもかかわらず、家族で対応できるものは家族でやらなければならないということが強制されるのでは、誰もが疲弊してしまいます。重要なのは、家族のサポートが得られるかどうかに依存せず、地域社会の中で豊かに暮らしていけることであると思いますし、そうした状況を達成できるような仕組みづくり、地域社会づくりが必要であるといえます。

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丸山洋平

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学、博士(学術)
新宿自治創造研究所非常勤研究員、慶應義塾大学特任助教などを経て、2015年4月より福井県立大学地域経済研究所特命講師
主著に「戦後日本の人口移動と家族変動」(文眞堂)
専門は地域人口学、人文地理学、家族社会学

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