「新リプレー検証」導入と同時に知ってほしい審判の苦労

「新リプレー検証」導入と同時に知ってほしい審判の苦労

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  • 更新日:2017/11/22
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来年から日本のプロ野球もメジャーリーグのように、監督が審判に対してビデオ判定を要求できるようになる。今月13日の日本野球機構(NPB)の実行委員会で、「監督が審判の判定に異議がある場合、ビデオ映像によるリプレー検証を求めることができる」という新ルールが正式に決定したのだ。

(pancho6/iStock)

ビデオ判定自体は2010年に導入され、当初は本塁打かどうかの判定に限定されていたところ、本塁打以外のフェンス際への飛球、本塁上でのクロスプレーなど、様々なケースに適用範囲を拡大しながら今日に至っている。ただし、今年まで監督がリプレー検証を要求することは認められておらず、審判が必要だと自主的に判断した場合のみに限られていた。

それが来年以降、監督の申し立てによってビデオ判定が行われることになった。要するに、遅まきながらメジャーの「チャレンジ」方式が日本でも導入されることになったわけだ。こちらの名称は「チャレンジ」ではなく、注文や要望などを意味する「リクエスト」。「チャレンジというと審判への挑戦的な表現になるので、審判とチームとが協力し合って正しい判定を求めるためのシステムだから」(NPBリプレー検証検討委員会)といういかにも日本的な理由による命名である。

基本的なルールはメジャーと同じで、監督がリクエスト権を行使できる回数は1試合につき最低2回。ビデオ判定の結果判定が覆れば回数は2回のまま継続、判定通りなら1回ずつ権利が減る。また、リクエストを受けた審判は、5分以内にリプレー検証を済ませて判定を示さなければならない。

以上のように、ソフト面ではメジャー方式をほぼ踏襲しているが、ハード面では日米でかなりの差がある。5月10日付記事「日本とは大違い、メジャーリーグのビデオ判定システムの凄さ」でも指摘したように、MLBではビデオ判定のためのカメラを独自に30球団の本拠地球場に設置。1球場につき約12台も増設されたカメラから送られてくる映像を、ニューヨークのオペレーション・センターでビデオ専門の判定員が見極め、最終的なジャッジを下し、球場の審判に伝えている。

それに引き換え、日本で判定に使われるのは中継テレビ局の映像で、現場の審判たちが自分の目で確認するのだ。当然のことながら、球場の設備や中継テレビ局によって再生映像の精度にも差が出てくるだろう。リクエストした監督や客席のファンがジリジリしながら待っている最中、5分以内に〝ファイナル・アンサー〟を出さなければならない。審判の感じるストレスも相当なものになるはずだ。

そこで思い出されるのが2015年9月12日、甲子園球場の阪神戦における広島・田中広輔の〝幻のホームラン事件〟である。2−2の同点で迎えた延長十二回、田中の放った左中間本塁打の打球がスタンドからグラウンドに跳ね返ってきたため、インプレーの三塁打と誤って判定された。審判は自主的にリプレー検証を行ったが、「3人で3回映像を確認しても本塁打とは確認できなかった」として判定は三塁打のまま覆らず。ところが、中継テレビ局は打球がはっきりスタンドに飛び込んでいる再生映像を放送しており、全国のファンから大変な批判を浴びた。

その失敗を繰り返すまいとしてか、今年の日本シリーズでは、非常に入念なビデオ判定が行われた。10月29日の第2戦、1−3と2点ビハインドだった七回、ソフトバンク・今宮健太が逆転の4点目となるホームイン。これがいったんはアウトと判定されながら、リプレー検証の結果、セーフに覆ったのだ。

この再生映像も中継テレビ局によって何度も流されたが、ホームベースにタッチしたのは今宮の手が先か、DeNAの捕手・戸柱恭孝のミットが先か、非常に微妙な映像ばかり。解説していた元捕手で元ベイスターズ監督・大矢明彦氏は「アウトです」と断言していたほど。それでも、橘高淳・責任審判は「何枚もの映像を見て、セーフと決定づける映像が出てきたから」として最終判断を下した。

想像以上の技術、体力、精神力を必要とされる仕事

そのジャッジには敬意を表したいが、リプレー検証に約7分間かかっている。来年から施行される新ルールでは「5分以内」に判定を下さなければならないから、また同じようなケースが発生したらアウトのままになるのか、気になるところだ。

リクエスト制度が導入されてからも、ジャッジをするのは審判であり、常に正確な判定が求められることに変わりはない。元審判で、NPB審判技術委員・山崎夏生氏の著書『プロ野球審判 ジャッジの舞台裏』(北海道新聞社)を読むと、この仕事がいかに想像以上の技術、体力、精神力を必要とされているかがよくわかる。テレビ局の再生映像を活用するのも結構だが、こういう苦労多き審判たちが毎年表彰されている「ファインジャッジ賞」のリプレーを多くのファンが見られる機会を設けられないものだろうか。

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