増加傾向止まらぬ中国からの訪朝観光客。その背景とは?

増加傾向止まらぬ中国からの訪朝観光客。その背景とは?

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2019/07/14
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観光客が集中する板門店は8割が中国人客(2019年5月撮影)

◆増加傾向止まらぬ北朝鮮への中国人観光客

中国人訪朝者が2019年激増している。中朝関係が突然好転した昨年と比べても1.5倍ペースで増え続けている。中国人旅行者が北朝鮮にとって貴重な外貨8億5000万円以上をもたらそうとしている。

以前にも本サイトでお伝えした通り、丹東発の国際列車の切符はローカル旅行会社に買い占められており、丹東の旅行代理店によると、7月から10月中旬までは、平壌へ向かう国際列車は連日ほぼ満席状態だそうだ。(参照:“北朝鮮、6月3日からマスゲーム開始。中国人訪朝者急増で外国人訪朝者にさまざまな余波”|HBOL

中国人が年間どのくらい訪朝しているかは中国政府も明確な統計は出していないものの推計10万人前後とされる。つまり、今年は13から15万人ほどの中国人が北朝鮮を訪れると思われる。この人数はパスポートを使わず国内旅行扱いで渡航できる新義州や羅先などは含まない人数となる。

今年のゴールデンウィーク連休に訪朝した日本人旅行者は、平壌も板門店も中国人観光客で溢れていたと感想を漏らしているほどだ。

今年の中国人訪朝者にはこれまでにはない傾向が見られる。それは、社員旅行や研修など会社の活動の一環として訪朝する中国人が増えていることだ。この新しい傾向は何を意味しているのだろうか。

◆企業活動としての訪朝増加の背景とは?

中国政府は、個人旅行も社員旅行もあくまで民間人の自由意志によって選択されているものなので中国政府は一切関知していないというスタンスを国外へ繰り返しアピールしている。

しかし、この中国人激増の背景には中国政府の意向を汲み取った忖度が働いているのではないかと見られる。

丹東で北朝鮮旅行手配をする旅行会社のツアー内容を見ると、3泊4日往復国際列車の旅行で、1人2580元(約4万5000円)で募集している。日本人や他の外国人はこの価格では参加できない。日本人だと30人とか大人数を集めたなら別だが、この3倍以上の旅費がかかる。

というわけで中国人は元々他の外国人と比べても優遇されているわけだが、果たして中国人はこの価格でも我先に北朝鮮へ行くのだろうかという疑問が残る。

「ツアー参加者は上海より南の人たちが多く、丹東や瀋陽旅行などもパッケージにして販売しています」(丹東の旅行会社担当者)

各旅行会社は、募集している価格より特に値引きはしていないと主張しているものの、たとえば、上海発であれば、2580元もあれば、タイやマレーシアツアーなどへ参加してもお釣りが出るくらいの団体旅行が売られている。同じくらいの旅費の北朝鮮をわざわざ選ぶだろうか。

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丸ごと果物や野菜は中国人必須アイテム(板門店へ向かう途中の休憩エリア・5月撮影)

というのも一般的な中国人の旅行目的は、まずショッピング。続いて、美味しいものを食べることにある。世界遺産観光や自然探索などの目的はぐっと低い。北朝鮮は、中国人が爆買いするような物があるとは思えないし、食事も肉重視の食事を好む中国人には、薄味で肉も少なくて物足りないと感じるのではなかろうか。つまり、北朝鮮旅行が中国人の旅のニーズを満たしているとはまったく思えないからだ。

そこで考えられるのが、表面的な旅費はそのままに中国政府が何かしらの支援をして「北朝鮮旅行を促進している」のではないかということだ。

◆北朝鮮ツアー増加の背景に国の指導はある?

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出国直前の新義州駅でも物色する中国人客(2019年5月撮影)

旅行会社に対しては、旅行人数に応じたキックバックをしたり、中国の海外旅行には、それぞれの国への許可人数の年間枠があるので、人気の日本やタイ旅行への認可人数を増やすなど利益につながるメリットを与えたり、社員旅行や研修を行った法人に対しては、法人税や増値税、関税などの減税などの優遇処置を実施している可能性がある。

そうでもしないと中国人や中国法人が北朝鮮を自発的に旅先に選ぶとは考えににくいからだ。

そこで中国の旅行会社複数社に確認したところ、当然ながら具体的なキャッシュバックの証言は得られなかった。

しかし、こんな話を聞くことができた。

「中国の旅行会社にとって日本やタイへの手配許可人数やライセンスを決める大きな権限を持つ国家旅遊部(観光局)との関係が何よりも大切なので、現在のアウトバウンドでの稼ぎ頭である日本やタイへの年間許可人数を1人でも多く確保することが旅行会社にとって重要なのです」(瀋陽の旅行会社)

つまり、旅行会社にとっては、国家旅遊局が年間旅行許可人数とライセンス許可や規約金(渡航先で逃亡者や犯罪者を出したときに支払う)の権限を持っていることや、台湾に加えてアメリカ、カナダ、香港への渡航制限もかけ始めているので、旅行会社が旅行手配ができる国や地域が減ってきているため、国家旅遊局の意向を忖度せざるを得ない土壌はあるようだ。

とすれば、北朝鮮への国連制裁は過去最大級を維持しているが、観光業は制裁の対象外なので北朝鮮にとっては貴重な外貨獲得手段となっている。その貴重な外貨を中国政府が、実質的に水面下で支援し提供することで、中国は、北朝鮮における影響力を維持し、それを外交の道具の1つにしていると考えるほうが自然だろう。

ただ、「中国人や中国法人が北朝鮮を自発的に旅先に選ぶとは考えににくい」という筆者の仮説についてはこんな反論も聞くことができた。

「今年、北朝鮮旅行へ参加する中国人は広州など華南の人が多いのですが、広州あたりからだとタイなど東南アジアへの旅行が安いのでここ数年の旅行ブームで複数回、訪れている人が新しい場所へ行ってみたいと北朝鮮や中国東北旅行をしているようです」(大連の旅行会社)

◆中国人訪朝客の増加で外貨獲得は順調か?

先月20日、初めて訪朝した習近平国家主席へ特別なマスゲームを披露し、24日からは中断していた一般観光客向けのマスゲームも再開している。

旅費が日本人の3分の1以下の中国人グループもマスゲーム観覧料は日本人や他の外国人と同額になるので、相対的に他の外国人の3、4倍となり非常に高額な観覧料となる。

しかし、今年のマスゲームは開催期間中は全員観覧となっているため、中国人旅行客は、昨年のように観覧しないという選択肢はない。

マスゲームが開催される10月中旬までで年間の半分近くの中国人が訪朝すると思われるので、7万人×最低観覧料100ユーロ(約1万2200円)で、北朝鮮は、単純計算700万ユーロ(約8億5000万円)以上の外貨を獲得できることになる。

<取材・文・写真/中野 鷹>

【中野鷹】

なかのよう●ライター。 Twitter ID@you_nakano2017

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