“日本で最も過酷な昇格争い”地域CLを戦い抜く勝者のリバウンドメンタリティ

“日本で最も過酷な昇格争い”地域CLを戦い抜く勝者のリバウンドメンタリティ

  • サッカーキング
  • 更新日:2016/11/30
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地域CLで優勝したFC今治 [写真]=前田カオリ

11月25日から27日の3日間に渡り、ゼットエーオリプリスタジアム(千葉県市原市)でJFL昇格を賭け、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2016(地域CL)の決勝ラウンドが行われた。ヴィアティン三重、三菱水島FC、鈴鹿アンリミテッドFC、FC今治の4チームが出場。総当たり戦の結果、優勝したFC今治と準優勝したヴィアティン三重のJFL昇格が内定した。12月7日のJFL理事会で、JFLへの入会が正式に承認される。

今大会で1次ラウンドを首位通過した三重、三菱水島、鈴鹿は、いずれも全国社会人サッカー選手権大会(全社)で5日間を戦い抜いて出場権を獲得してきたチームである。東海リーグ1部ではFC刈谷の後塵を拝して2位だった鈴鹿、3位だった三重。三菱水島は中国リーグ3位、さらに母体企業の都合で天皇杯岡山県予選を辞退した際に試合に出たくても出られない無念さを経ている。3チームは共に悔しさを乗り越えて全社を勝ち抜き、そこでの手応えや成長を糧に1次ラウンドを全勝で突破した。

そして、四国リーグ優勝で出場権を得ていた今治は、全社では2回戦で敗退し、1次ラウンドでは三重に敗れている。幸い得失点差によって全グループの2位の中で最も戦績の良いワイルドカードとして決勝ラウンドに駒を進めることができた。

【重圧とコンディション】

今治の吉武博文監督は、初日の試合後会見で「選手たちがどれだけの重圧を感じてピッチに立っているか、この大会に出たことがない者にはわからないと思う。もちろん私にも計り知れない」と話した。

実際、1次ラウンドから合計6得点を奪った大会得点王の桑島良汰(今治)と5得点の藤牧祥吾(三重)は共に、決勝ラウンドで2ゴールを挙げた日の会見で得点シーンについて質問され、「その瞬間は冷静に判断できていたのかもしれないが、よく覚えていない」と答えている。

地域CLには全国9地域の(2部構成の地域は1部。全80チーム在籍)リーグ優勝チームと全社上位3組が出場できるが、昇格できるのは2組のみ。さらに全社には、予選を多く勝ち上がらなければならないとは言え、1種登録された(Jリーグ、JFL、学生の連盟に登録されたチームを除く)チームであれば出場可能であるため、競わなければならないライバルがどれほどいるかもわからない。そんな中で地域CLに出ることが決まれば、不明確だった昇格できる可能性がおもむろに“12分の2”と明確になる。さらに決勝ラウンドに進むことができれば、“4分の2”。翌年ここに来られるかどうかの確証などない以上、是が非でも昇格を勝ち獲りたいという切迫感に駆られるのは至極当然のことであろう。皆が同じように心理的に追い込まれた状態で中0日の3連戦に臨むため、この大会では戦術的な話でも精神的な部分に重きを置いて語られる場面が多い。

4チームの中で最も直近に苦い想いを味わっていた今治の吉武監督は、1次ラウンドで敗れた自チームのことを「ここに来る前に、一度死んだ」と表現している。

それ故か、昨年は他チームに比べてやや平静な様子だったが、今年の決勝ラウンドでは「自分たちのサッカー」が崩れる場面があれども、なんとしてでも勝ちたい気迫は選手たちから存分に感じられ、結果にも結びついた。「どちらが勝ってもおかしくなかった(吉武監督)」初戦の鈴鹿戦では桑島良汰の2ゴールによって勝ち点3を収め、2日目は「同じ相手に2度も負けたくない(中野圭)」と三重に1次ラウンドでのリベンジを果たす。上位2組に入ることが確定していた3日目の三菱水島戦も、後半に3ゴールを奪い、完勝。3試合すべてにおいて勝利し、優勝と昇格を手にした。

吉武監督は1次ラウンドからの変化について「気持ちだけでこれだけ変われるのなら、常にそれぐらいの気持ちでやるべき」と話したが、精神的なストレスの大きいこの大会を勝つためには「フィジカルコンディションもメンタルコンディションも大事で、特にメンタルコンディションを3日間アラートな状態に保つのは難しい」とも語った。さらに「1つのことを何かの原因とは言えない大会。フィジカルコンディション、メンタルコンディション、大局観、どれが欠けてもいけない」とも言及している。

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優勝が決まり、サポーターと喜びを分かち合う吉武監督と選手たち [写真]=前田カオリ

【三重ダービーを制した“4敗1分”】

3日目、昇格の枠がすでに1つ埋まり、奇しくも互いに勝ち点3を持った状態で戦うことになった三重と鈴鹿。ここで勝った方が残り1枠の昇格を手に入れられるという、見るに忍びない今季6回目の“三重ダービー”となった。

これまで5回の戦績は、鈴鹿が4勝1分と優勢。鈴鹿の小澤宏一監督は「今季負けていないということが隙にならないようにしたい」と語り、副主将の小澤司も「焦りからミスや綻びが生まれるかもしれないので、そこは注意して挑みたい」と話していたものの、前半10分に得たPKから主将・北野純也が先制した後、前半のうちに2得点を返される。後半にはさらに2つの追加点を許し、三重相手に今季初の敗北を喫し、同県のライバルが先に昇格していく様を目の前でまざまざと見せつけられた。

この日2得点を挙げている三重の主将・加藤秀典は「前日の失点は各々が役割を果たせてなかったことが原因なので、今日は皆が役割と責任を全うした」と、前日の試合結果を真摯かつ冷静に受け止めた上でコメント。海津英志監督は「今年のチームは、メンタル面に関してはあまり強くはなかった。しかし、メンタル面が強くないと勝てないということは、選手たちも全社でよく理解できたと思う。試合中ミスに落ち込んでいては勝てない、勝って喜んでも翌日に試合があるのですぐに切り替えなければならない、と身につけることができた」と語っている。

また、この日に同点に追いつくゴールと4点目を奪った藤牧は「昇格よりも前に、自分たちにもプライドがあった」と話した。そして、「精神的な負担が大きい大会」だったと振り返っている。

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試合終了のホイッスルが鳴ると同時に、両チームの感情が強く現れたピッチ [写真]=前田カオリ

JFL昇格チームが決まったということは、来年またJFL昇格を目指して戦わなければならないチームが決まってしまったということをも意味する。

吉武監督は「サッカーは喜べる瞬間がとても少ない」と話していたが、特にこのカテゴリーでJFL昇格を目指すチームにとっては、リーグで優勝しようとも、全社で優勝しようとも、天皇杯でジャイアントキリングを起こそうとも、心から歓喜できる瞬間は昇格を勝ち得た時以外にありえない。

「喜べる瞬間」を迎えるためには、苦しみを伴いながらも自分たちの至らなかったことを正確に理解して受け止めた上、強いリバウンドメンタリティを持つことがとても重要な要素であると、今大会で示された。

来年のたった2組だけの栄光を目指し、日本各地でまた地獄のような戦いがはじまる。

取材・文=前田カオリ

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