平均35km/hの特急!? 山峡を優雅に走るスイス「氷河特急」8時間の旅

平均35km/hの特急!? 山峡を優雅に走るスイス「氷河特急」8時間の旅

  • 乗りものニュース
  • 更新日:2017/09/21

1930年に運行を開始した「氷河特急」

【本記事は、旅行読売出版社の協力を得て、『旅行読売』2016年10月号に掲載された記事「氷河期の遺産を駆けるスイス氷河特急」を再構成したものです】

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1930年、「氷河特急」はツェルマット~サン・モリッツ間で運行を始め、87年の月日が流れるも、いまだ旅人を魅了し続けている。全長約290kmを約8時間かけ、291の橋、91のトンネルを通りながらスイスを横断する。

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沿線でも随一の人気を誇るランドヴァッサー橋を渡る「氷河特急」。一帯は世界文化遺産に登録されている(写真協力:マッターホルン・ゴッタルド鉄道)。

平均速度は約35km/h。1等、2等車両ともにパノラマ車両が導入され、山峡の眺めを間近に体感できるのがポイントだ。世界文化遺産エリアも走り、見る者はその景観の美しさに心を奪われるという。

そんな一人になりたい……。はやる気持ちを抑えながら、「氷河特急」の起点となる村、ツェルマットへ入った。4000m級の山々に囲まれ、名峰マッターホルンを望む観光地だ。

ガソリン車は入村禁止 山小屋並ぶ麓の村を歩く

「氷河特急」へ乗車する前日。早起きをして、4000m級の山々を見渡せるゴルナーグラート展望台行きの登山電車に乗った。

駅に到着して展望台へ向かうと、そこは360度の大パノラマ。凛とした姿のマッターホルンがひと際目立つ早朝ながら既に観光客であふれていた。日に輝く氷河はまぶしく、登山電車に揺られ30分ほどでアクセスできるとは思えない別天地である。

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マッターホルンが間近に迫る登山電車の終着、ゴルナーグラート駅(写真:石口早苗)。

下山後、メーンストリート「バーンホフ通り」を歩いてみた。山小屋が立ち並び、土産やスポーツ用品を売る店、レストランなどもあってにぎやかだ。環境保護からガソリン車の乗り入れは禁止され、代わりに電気自動車や馬車が走っている。ネズミ返しのある古い穀物倉庫が並ぶ一角も、風情がある。この村でのんびり滞在するのもいいなぁと思った。

「氷河特急」の名物は傾いたワイングラス!?

翌朝、ツェルマット駅に行くと、真っ赤な車両が印象的な「氷河特急」がホームで迎えてくれた。1等車両は3列シートで、座席にイヤホンが備えられ、ルート案内や沿線情報を日本語で聞けるのがありがたい。

8時52分に出発した列車は、マッターフィスパ川に沿って進む。山岳地帯を走り、やがて牛や羊が草を食む牧草地へ。山小屋や何げなく咲いている草花はどれも絵になり、写真におさめたくなる。

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車内ではグラスやマグカップのほか、リュックサックやサングラスなども売っている(写真:石口早苗)。車両は天井の一部もガラス張りで、展望が開けている(写真:石口早苗)。険しい山峡とは対照的に、牧歌的な光景に出会えるのも沿線の魅力(写真協力:マッターホルン・ゴッタルド鉄道)。

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車両は天井の一部もガラス張りで、展望が開けている(写真:石口早苗)。

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険しい山峡とは対照的に、牧歌的な光景に出会えるのも沿線の魅力(写真協力:マッターホルン・ゴッタルド鉄道)。

車内販売で、「氷河特急」名物のワイングラスを買った。傾斜のある鉄路ゆえ、傾いた作りになっている。ランチタイムには、予約していた料理が席まで運ばれてきた。列車は峡谷に沿って蛇行を繰り返し、少しずつ標高を上げる。ふと窓を見ると、湖がすぐ前に広がっていた。標高2033mのオーバーアルプ峠まで来たようだ。

ディゼンティス駅で停車すると、何人かの乗客が降りていった。15分停車するというので、私も後を追う。列車前方に人が集まっていて、よく見ると先頭車両がない。車掌さんに聞くと、「これから別の機関車を連結するんだよ」とのこと。作業は数分で終了し、急いで自分の車両へ戻った。

世界遺産に登録された高い鉄道技術の象徴

やがて列車は、“スイスのグランドキャニオン”と称されるライン渓谷へ入って行く。約1万年前の氷河期に起こった山崩れでできた造形が美しく、急流下り、リバーラフティングを楽しめる。

その後、列車は古都クールを通り、中世の街並みを見送りながら走る。その先のトゥージス~サン・モリッツ間は世界文化遺産に登録され、人気が特に高い区間である。ガラス窓一面を埋める山々の迫力に圧倒される。

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高さ65mの石橋、ランドヴァッサー橋(写真協力:マッターホルン・ゴッタルド鉄道)。

ついに、一番楽しみにしていたランドヴァッサー橋が見えてきた。長さ142m、高さ65mの石橋は、5本の石柱に支えられカーブを描く。20世紀初頭にできたといい、スイスの鉄道技術の高さを目の当たりにした。

景色に心を奪われたまま過ごした約8時間の旅。時の経つのも忘れ、列車は終点、サン・モリッツ駅に到着。駅の窓口に向かい、乗車記念証明書をもらった。誰に見せるわけではないが、これも大切な思い出の一つである。

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●旅のインフォメーション
・交通/成田からチューリヒへは、直行便で所要約12時間
・時差/日本より8時間遅れ(サマータイムは7時間遅れ)
・ビザ/観光目的の場合、180日間で90日までの滞在は不要(ほかのシェンゲン加盟国での滞在日数も含む)
・通貨/スイスフラン(CHF) 1CHF=約115円(2017年9月15日現在)
・気候/地方により異なるが、夏は30度を超えることもある。標高の高い地域では10月に初雪が降り、氷点下になることもある
・問い合わせ/スイス政府観光局http://www.myswitzerland.com/ja/home.html

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『旅行読売』2017年10月号。特集は「初めてでも大満足 あの名湯でひとり泊」と「元気な商店街」。

・旅行読売(Fujisan.co.jp)
http://www.fujisan.co.jp/product/2782/ap-norimono

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