累犯窃盗元受刑者の苦悩 「社会とつながっていたい」

累犯窃盗元受刑者の苦悩 「社会とつながっていたい」

  • 西日本新聞
  • 更新日:2018/02/15

国内で起きる犯罪のうちおよそ半数は再犯事件と言われている。更生支援は社会が直面する課題だ。窃盗などで4度逮捕され、2度目の服役を終えたばかりという50代男性に話を聞いた。なぜ罪を重ねてしまったのですか-。

待ち合わせ場所のJR博多駅(福岡市)。大勢の利用客が行き交う中、頭をそり上げた男性がやって来た。強烈な第一印象だ。2年前、記者の記事を読み獄中から手紙をくれた。会うのは初めて。仮釈放で出所したばかりという。

最初は支えてくれた家族も、疎遠になった。帰る場所がない人を一定期間受け入れる更生保護施設で生活しながら、ハローワークで紹介された建設会社で働く。

現場で軽々と資材を持ち上げる若者を見ると、老いとともに無駄にした時間を感じる。日当は7千円。つつましく暮らせば施設を出ても生活できるが、「体力勝負なのでいつまで働けるか…」と不安も漏らした。

罪を犯すきっかけはふとしたことだった。建設会社を経営し、順風満帆だった30代後半。取引相手と酒を飲んだ帰り道に、不動産店の窓が開いているのが目に留まった。「不用心だなぁ」と思って眺めていると、高校時代に度胸試しで行った万引を思い出した。

「あのときのドキドキやスリルがよみがえって、衝動を抑えられなくなった。酔った勢いもあると思う」。一晩で3件侵入し、その日のうちに逮捕された。

このときは示談が成立して不起訴。後悔も反省もした、と当時は思っていたが、2年後に再び3件の窃盗事件を起こした。執行猶予付きの有罪判決を言い渡された後、犯行はさらに大胆になった。200件以上の事務所荒らしを繰り返し、約4千万円を得た。逮捕されて約5年服役したが、刑務所で知り合った男に犯行を持ちかけられ、出所後わずか10カ月で再犯した。

なぜ止められなかったのだろう。女性を口説く場合を例に挙げた。「自分なりに考えて落とせたらうれしいじゃないですか。侵入方法や現金の場所を想定し、その通りにできると何ともいえない達成感があった」

犯行時に金に困っていたことは一度もない。仕事も常にあった。気付けば、盗みが日々のストレスのはけ口になっていたという。

犯罪白書によると、2016年に刑法犯で逮捕されるなどした検挙者のうち、再犯者の割合は48・7%で過去最悪となった。政府は昨年末、今後5年間で取り組む再犯防止施策をまとめた計画を閣議決定した。出所後の帰住先の確保と就労支援に力を入れている。

衝動を抑えられずに盗みを繰り返す「窃盗症」(クレプトマニア)の研究も進む。矯正の在り方も変わり、06年施行の刑事収容施設法で、性犯罪や薬物など犯罪特性に応じた「改善指導」が刑務所内で行われるようになった。

男性は2度目の服役で初めて窃盗防止などのプログラムを受け、犯行に至る思考・行動のパターンや、認知のゆがみを自覚できた。数カ月の受講期間が終わると回収されてしまうワークブックなどを全てノートに書き写し、服役中何度も読み返してきた。

盗みへの依存から窃盗症を疑い、専門機関に頼るつもりという。そった頭を手で触り、再犯しないためにあえて目立つ格好をしていると説明した。

どうして記者に連絡を取ったのだろう。「一人では生きていけませんから、社会とつながって生きていけたら…。そのために罪のことも含めて相談できる相手が自分には必要だと思う」

罪を犯した人をどう受け入れるか。地域社会のありようも問われている。記者もその一人。男性は今度こそ、更生できるだろうか。

=2018/02/15付 西日本新聞朝刊=

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