【開発秘話】発売から5か月で200万袋を売り上げたハウス食品『きわだちカレー』

【開発秘話】発売から5か月で200万袋を売り上げたハウス食品『きわだちカレー』

  • @DIME
  • 更新日:2017/09/15

■連載/ヒット商品開発秘話

カレーライスはラーメンと並ぶ日本の国民食。とくに好きなのは、家でつくるカレーだろう。そのため、カレールウにも長年愛用しているものがあることも珍しくなく、市場は変動が起きにくいとされてきた。

しかし、保守的なカレールウ市場で現在、発売と同時に売れ、大きな注目を集めているものがある。ハウス食品の『きわだちカレー』のことだ。

2017年2月に発売された『きわだちカレー』は、ペーストタイプのカレールウ。複数の独自技術(特許出願中)を組み合わせて開発した「素材いきいき製法」を用いてつくられている。まず〈コクがきわだつ中辛〉と〈スパイスがきわだつ辛口〉の2種を発売した後、同年8月に〈果実感がきわだつマイルドタイプ〉を発売。発売から5か月で200万袋を売り上げている。

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■「成熟家族世帯」をつなぎ止める

『きわだちカレー』誕生の背景には、カレールウ市場のある動向があった。それは、子育てを終え夫婦二人暮らしになると、家でカレーをつくる頻度が下がること。このような夫婦二人暮らし世帯を同社では「成熟家族世帯」と呼んでいるが、「成熟家族世帯」がカレールウに何を求めているのかを探ったところ、〈適量〉と〈上質な味〉というキーワードが浮かび上がってきた。開発を担当した事業戦略本部食品事業一部 チームマネージャーの萩原祐樹氏は、「カレールウ市場に『成熟家族世帯』をつなぎ止めるためにも、上質な美味しさを持った適量の商品というコンセプトの商品は必要でした」と振り返る。

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ハウス食品

事業戦略本部

食品事業一部

チームマネージャー

萩原祐樹氏

開発が本格化したのは2014年から。食の経験を積み舌が肥えている「成熟家族世帯」を唸らせることができる、突き抜けた美味しさを実現するために生かしたのが、8年ほど前から研究所で開発が先行していた「素材いきいき製法」であった。固形ルウよりペースト状にした方が溶かしやすい、といった観点から研究開発されていたが、『きわだちカレー』の味づくりの要に据えることにした。

「素材いきいき製法」を開発に生かすことにしたのは、ペーストだとみずみずしい旨味を持った原料の風味を生かし切ることができるためであった。しかし、水分の多い原料を使えば菌の繁殖は避けられず、殺菌が欠かせない。したがって、風味を損なわない低温での殺菌処理は不可欠であった。殺菌温度に加え、菌の繁殖を抑える温度、風味が損なわれない温度の最適値を見極めなければならず、それぞれを設定してみて一度つくり、時間をかけて制菌されているかどうかを検証しなければならなかった。

低温殺菌でも風味が生かせるものとして活用したのが、「焙煎スパイスオイル」である。これは同社が独自に開発したもので、たっぷりの油でホールスパイスを炒めて香りを移した後、油とともにホールスパイスを粗く挽いたもの。インドカレーをつくる際に用いるスタータースパイスにヒントを得た。油に移った香りに加え、スパイスそのものの香りも生かすことで、封を開けたときの香り立ちを豊かなものにした。

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「素材いきいき製法」のイメージ

■王道の味を進化させる

開発と並行し、社外モニター調査も進められた。ただ最初は、思わしくない結果の連続だった。「家庭でつくるカレーの味の満足度が高すぎて、なかなかぶっ飛んだものができず、何度も痛い目に遭いました。この経験から、王道の味を外さずに進化させることにし、味づくりで右往左往することになりました」と萩原氏。社外モニター調査は10回にも及んだ。

思わしくない結果が続き、挫けそうになったこともあったが、そんなとき萩原氏は、ある商品の存在に励まされていた。ある商品とは、東洋水産の『マルちゃん正麺』。王道の味を進化させ即席袋麺で革新を起こした『マルちゃん正麺』ように、カレールウでも王道の味を進化させる。このように自らを奮い立たせ、開発に挑み続けた。

いい評価が得られなかった頃を振り返ってみると、コクやスパイスの香りに対するメーカーのこだわりをそのまま、消費者にぶつけていたところがあったという。しかし、消費者はコクやスパイスの香りにこだわりを持っているわけではなく、すべてが合わさったことで生まれる深みで味を評価していた。社外モニター調査を重ねるうちに、そのことを理解し、消費者視点からの味づくりのコツをつかんだ。

■パッケージにレーザー加工

『きわだちカレー』は、パッケージでも試行錯誤を重ねた。ペットボトルや箱などアイデアが多岐に渡った中、ムダな包装がないことなどから、レトルトパウチが採用された。

採用されたレトルトパウチは、ありきたりなものではない。それまでの不満を解消するべく改良を加えた。

それまでのレトルトパウチの最大の不満は、うまく切れないこと。また、手が濡れていると開けにくい面もあった。

開封性を高めるために採用したのが、レーザー加工だった。開けやすくなるよう、開封口にレーザーで加工を施した。シャンプーの詰め替え用などではおなじみだが、「加工食品でレーザー加工を採用したのは、おそらく『きわだちカレー』が初めてだと思われます」と萩原氏は話す。

調味料を注ぐイメージで入れられるよう、端から斜め上に向かって切るようにした。切り込みの深さや開ける角度などを変えて試作品をつくり、切れ具合や絞り出しやすさを検証。使い勝手と包材メーカーがレーザー加工可能な長さを両立できるものをつくるまでに、30パターンほど試作品をつくったという。

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パッケージを裏から見たところ。端から上へと矢印の方に向かって切るようになっており、端の切り込みの周辺に刻まれた筋のようなものが、レーザー加工で入れられた。なお、「レトルトカレーではありません」という文言は、後述する8月に実施されたパッケージ変更に伴って追加されたものである

■大規模な試食サービスで市場に変化を起こす

こうして完成した『きわだちカレー』は、全国発売の1年ほど前に首都圏の有力店舗と一部のネット通販でテストマーケティングを実施。好評だったことから、全国展開することになった。

そして全国発売が始まったと同時に、テレビCMの放映を開始し、それに合わせて店頭での露出なども強化。とくに注力したのが試食であった。発売から5か月強で、2500店で試食デモを実施。同社では年間500店で実施すればスゴいと言われる中、かつてない規模で実施している。

試食デモに注力したのは、カレールウは家庭ごとに贔屓のブランドがあり、簡単には変更が起きないため。保守的な市場で変化を起こすには、まずは体験してもらう必要があった。

ユーザーは当初のターゲティング通り、「成熟家族世帯」が中心。年齢層で言えば60〜70代が半数以上を占める。ただ、「SNSでの反応を見ていると、共働き夫婦世帯でのニーズもありそう」(萩原氏)とのことから、今後は共働き夫婦世帯の拡大も目指したい意向だ。

また、ユーザーから「どう使うかわからない」といった声が寄せられたり、レトルトカレーと間違われたことなどから、すでに2回、パッケージデザインを変更した。1回目の変更は5月。表に「具材と煮込む」と入れ、レトルトカレーではないことを打ち出した。2回目の変更は8月。現在使われているもので、「具材と一煮込んでつくる」と入れ、鍋に入れる写真を添えた。

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2月に発売されたときのパッケージ

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5月に変更された際のパッケージ

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★★★取材からわかった『きわだちカレー』のヒット要因3★★★

1.味の完成度が高い

ターゲットとした「成熟家族世帯」は、舌が肥えている。ターゲットが唸るほどの高い完成度を実現したことが、高く評価された。

2.使い勝手がいい

レトルトパウチを開けやすくしたほか、「成熟家族世帯」にとって適量の4皿分にするなど、使い勝手がいい。配慮が行き届き、多くの消費者が好感を持った。

3.マーケティング力を最大限に発揮

発売と同時にテレビCMを流したのはもちろんのこと、試食サービスなどを大規模に実施。マーケティング力を発揮し、多くの人に「使ってみよう」という気にさせた。

購入したユーザーからは、「もう他のカレールウには戻れない」という絶賛の声があがるほど、『きわだちカレー』の味に対する評価は高い。王道の味を進化させて消費者の心をつかんでいるところは、萩原氏が挙げた『マルちゃん正麺』の成功に通じる。『きわだちカレーが』が『マルちゃん正麺』のようになれるかどうかは、今の調子を長く維持し、似たようなコンセプトの商品が他社から登場することにかかっている。

製品情報
https://housefoods.jp/products/special/kiwadachi/index.html

文/大沢裕司

ものづくりに関することを中心に、割と幅広く色々なことを取材するライター。主な取材テーマは商品開発、技術開発、生産、工場、など。当連載のネタ探しに日々奔走中。

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