【復活可能性都市へ】(2)ドローンに託す希望

【復活可能性都市へ】(2)ドローンに託す希望

  • 西日本新聞
  • 更新日:2018/01/12
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青空をバックに、祖母・傾の山々が間近に迫ってくる。米田二枝(つぎえ)(87)が暮らす大分県佐伯市宇目(旧宇目町)の木浦鉱山地区は、スズなどをかつて産出した山深い集落だ。

二枝は最近、空を見上げていない。夫の文夫とシイタケ栽培をしていたころは、鳥を追って空を見ていたのに。「今のはコジュケイだ」。文夫は鳴き声だけで鳥の種類を言い当てた。17年前に文夫が亡くなり、シイタケ栽培をやめてから空が遠くなった。

1人暮らしの二枝の悩みは日々の買い物だ。自宅近くの商店は店主が入院して以来、休業状態。車がないと、宇目中心部の店には行けない。頼りにしているのは、旧宇目町など四つの旧町村がエリアの佐伯市番匠商工会が行う「高齢者等買い物弱者支援宅配事業」。電話をすれば、担当者が買い物を代行し食品から雑貨まで届けてくれる。「宅配が生活の支えです」。注文をした日、二枝は宅配車のエンジン音に耳を澄ます。

木浦鉱山へ通じる県道は、昨年9月の台風18号の影響で通行止めになっていた。首藤博代(54)は迂回(うかい)路の林道に車を乗り入れた。

買い物支援の運転手となって2年。毎朝、利用者から注文を受けると地域の加盟店を回り商品を集める。白菜、アジ、総菜、歯磨き粉。注文主と商品を書いた伝票をダッシュボードの上に並べ、アクセルを踏む。

林道は狭く、曲がりくねっている。路肩が崩れた所も多い。「慣れたから平気」と、雨の日も風の日も悪路を走る。宅配を待つお年寄りの顔が浮かぶ。

宇目地域は市内で最も高齢化率が高い(2017年11月末で51・0%)。大半の高齢者が1、2人暮らし。宅配事業は番匠商工会が02年度に始め、現在126人が会員登録する。年3千円の会費と加盟店の手数料、市の補助金300万円で運営。ただ車の維持費など負担は大きく「ビジネスとしては成立しない」と担当の竹津浩二。それでも、誰かがやらなければ高齢者の暮らしは成り立たない。「地域を守る使命感で続けています」

大分県は3月、宇目地域で小型無人機ドローンを使った宅配の実証実験を行う。将来、番匠商工会の買い物支援をドローンで“支援”するのが目標だ。

人口減、高齢化に悩む集落に情報技術(IT)を導入し、持続可能な地域にする試みは各地で進んでいる。足りないマンパワーを補う自動運転、ネットを介した遠隔医療、そしてドローンに視線が集まる。

山間部に家々が点在する宇目の集落は、冬は雪に閉ざされる所もある。車が使えないとき、空から商品を届けられ、配達の負担軽減にもつながる。

ただ実現に向け、どれだけの荷物を積んで、どれだけの距離を飛べるかは未知数。さらに安全面などクリアすべき課題は山積する。「だからこそ何をやるべきか、急ぎ探ります」。県のIT戦略担当の宮本賢一には、「田舎にこそITが必要」との信念がある。

間もなく宇目をドローンが飛ぶ。二枝も久しぶりに青く澄んだ空を見上げるのだろうか。 =敬称略

=2018/01/08付 西日本新聞朝刊=

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