なぜ人気? アジア大都市に増えつづける、日本発のサービス

なぜ人気? アジア大都市に増えつづける、日本発のサービス

  • ダ・ヴィンチニュース
  • 更新日:2018/02/14
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『世界に広がる日本の職人: アジアでうけるサービス』(青山 玲二郎/筑摩書房)

世界の「グローバル化」が叫ばれて久しい。インターネットを始めとするデジタルネットワークが世界を覆い、訴求力を持つコンテンツが瞬時に世界を駆け巡る時代に私たちは生きている。それを恩恵と考えるか、脅威と受け取るかは、社会的・文化的立場によって異なる。

魅力的なコンテンツの「発信者」にとっては、無限に広がる可能性を持つ喜ぶべき事態であろう。逆に、盲従を余儀なくされる「受信者」には、文化的隷属に近い感情を抱くに違いない。ここには、持つ者と持たざる者の対立の構図が透けて見えてくる。つまり、「資本家」と「労働者」という、マルクスの資本論的二項対立が世界に拡大したものとして、グローバリズムを捉える見方である。もちろん、この見解における「発信者」であり「資本家」は、西欧文明の側に立つ人たちであり、狭義には米国のことを指している。

『世界に広がる日本の職人: アジアでうけるサービス』(青山 玲二郎/筑摩書房)の著者は、このような凡庸なグローバリズム論とは異なった見方を提示する。従来のグローバリズムの担い手のステロタイプなイメージは、「MBAを持ち、欧米系多国籍企業で働き、英語を使いこなすエリート」というものであろう。これに対し、著者は「グローバルに価値を生み出す人」という観点で世界を捉えなおしている。

一般的な理解でのグローバリズムとは、支配的な価値観を世界に敷衍して、同じ色に染めてゆく活動である。そうではなく、商品やサービスを提供する際に、その基層にあり、文化的伝統に属している「単なるサービス以上の何か」の共有も目指すような行為を「グローバルな価値」の創造と捉えている。そのような観点で、アジアを俯瞰したとき、著者は国外に移住して仕事をする日本人職人たちの活動に、新しいグローバリズムのありかたを発見したのである。

本書は全部で6つの章に分かれている。第1章では、職人たちがなぜアジアに移住するのかを検証している。同じ移住希望者であっても、英語圏へ向かう場合とアジアへ向かう場合とでは意識が違うという指摘が興味深い。第2章から第5章までは具体的な事例が紹介される。香港の寿司職人、バンコクの美容師、シンガポールのバーテンダー、そして台北の日本語教師である。まとめとしての第6章では、このような移住者たちがアジアで働くことの意味が分析される。その活動が、自らのアイデンティティの再確認や異なる文化との対話を含む行為となっている点を著者は評価する。経済合理性のみを求める「出稼ぎ労働」とは別次元のものであるという、新しいグローバリズムのスタイルが提示されるのである。

アジアに移住した職人たちへのインタビューによって、新しいグローバリズムの担い手には、「日本での経験の再評価」「海外での自分の役割の発見」そして「自らの技能を現地の人へ伝えたいという思い」の3点が共通していると著者は記している。この「経験」には、日本での人的な関係も含まれる。そこには、親方・弟子や常連・職人という職人の世界ならではの関係がある。さらにより大きなシステムとの結びつきも示される。例えば、寿司職人については、魚を巡る世界的マーケットにおける築地市場の役割が、自らの海外での活動に密接に結びついている構図まで指摘されるのである。

これまで、移住して開業する場合には、2つのアプローチが考えられた。まず、自分たちの文化や慣習をそのまま持ち込んで、それをそのまま浸透させようとするもの。いわゆる、グローバリズムの戦略である。もう一方は、すべてをリセットして、現地の文化や慣習に染まろうとするもの。この方法は、余計な軋轢も生まない代わりに、自らのアイデンティティは消失してしまう。本書で取り上げる新しいグローバリズムのアプローチは、このどちらにも属さない。それまでの日本的環境とは異なる場所で、その文化的伝統を継承しながら、現地の文化や慣習と少しずつ融合を図るのである。読者は、この新しい関係に目を開かされるに違いない。そして、日本の若者たちが世界で活躍する可能性についても、思いを巡らせることであろう。

文=sakurakopon

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