【GTC Japan2016】NVIDIAが見据えるAIコンピューティングの未来

【GTC Japan2016】NVIDIAが見据えるAIコンピューティングの未来

  • @DIME
  • 更新日:2016/10/18

コンピュータは人間が1つ1つ記述した「プログラム」で動く、というのが従来の常識だが、最近では複雑な判断処理のために細かい条件のプログラムを組まずに、その例の画像を見せたり、デモを見せることで、その条件、正解などを導き出す方法を学習する(正確に言えばコンピュータ自体が状況に対応したコードを書く)画期的な方法が数年前に発見された。

例えば、大ざっぱに言うと猫が敷地内に入ってきたらスプリンクラーで水を浴びせて、敷地外に追い出すようにシステムを作りたい場合に、それが猫だと判断するのに猫の写真を大量に見せればいいのだ。

そんなことは昔であれば夢物語だったのだが、現実のものとなった。それが「ディープラーニング」だ。この言葉も最近、トレンドの1つなので、聞いたことがある人も多いだろう。

そもそもは人工知能の研究から生まれた技術であり、従来の機械学習よりも認識力を向上させることで、人工知能を実現する1つの大きなステップになっている。

ただし、このディープラーニングには膨大な量の計算処理が必要になる。現在のパーソナルコンピュータのプロセッサは安定したテンポで高速化しているが、それでもディープラーニングにはまったく処理速度が足りないほど膨大な計算処理が必要になる。

そんななかNVIDIAは高速な並列処理ができるGPUを使ってディープラーニングの処理を高速に行える環境を実現した。そして、AIプロセッサメーカーとしてのNVIDIAが誕生した。現在、NVIDIAは人工知能関連の多くの製品のキーとなっており、自動車の自動走行技術でも大きなシェアを持っているのだ。

■GPUテクノロジカンファレンスTokyo

そんなNVIDIAは世界中で、その技術を紹介するイベントを行なっている。それが「GPUテクノロジカンファレンス」だ。それが10月5日に東京で開催されたのだが、これは今年、世界で5番目のGTCイベントだった。今回は最初に行なわれる基調講演に加え、8つの分野に分かれたカンファレンスが夕方まで行われた。カンファレンスではNVIDIA以外のメーカーも行なっていたが、やはり、人気があるのは現在のトレンドが理解できるNVIDIA CEOのジェンスン・ファンがMC務める基調講演だった。

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NVIDIA CEOのジェンスン・ファン氏。

まずは、IT業界での変化は社会を変革するものだという話をはじめ、我々の仕事は社会にとって非常に重要だと語った。

「コンピュータ業界の基本はそのプラットフォームがけん引するものです。そのアーキテクチャによって変化します。たとえば、1990年代、マイクロソフトとインテルがパソコンを作り、それが革命を起こしました。そして、Netscape、Yahooなどがブラウザや検索エンジンを作り、PCインターネットの時代が始まったのです。10億台のPCが人々の手元に届き、大きな革命が成し遂げられ、その後、10年経過し、iPhoneが登場しました。これにより、コンピュータが手の掌におさまるようなサイズになりました。そして、コンピュータに常にアクセスできる状態になったのです。

そして、ほぼ同時期にアマゾンのAWSが立ち上がりました。コンピュータをクラウドに入れるというアイデアが生まれたのです。これによって、モバイルクラウド革命が世界に巻き起こりました。

その結果として、30億人の人がコンピュータにアクセスできるようになりました。コンピュータが使えない人でも、我々が開発したコンピューティングのテクノロジーを使えるようになりました。これによって社会に大規模な変革が起きたことは疑いもありません」

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最近のコンピューティングの移り変わり。

「そして今、新しい時代が始まっています。みなさんはそのためにここに来たのではないでしょうか? みなさんがここに来たのはアイデアをほかの人と共有するためでは?この新しい時代に何が起きているのか? 知るためでは。この人工知能、AIの時代に何が起きているのか?理解するために、ここに来たのではないでしょうか?

今は、AI、そして、IoTの時代です。

この新しい時代において、ソフトウェアは学ぶことができるようになります。ソフトウェアがソフトウェアを書くんです。この新しい時代にはマシンが推論できるようになります。そして、何億のインテリジェントなデバイスが登場し、その自立性はますます向上していきます。

そして、さらにそれらのデバイスがクラウドコンピュータにつながっていき、これらすべてがAIを原動力にしています。そして、10年前には考えられなかった問題解決ができるようになります。

AIコンピューティングの時代です。これは多くの人の心をとらえ、多くの企業が参入しています。それはまさに我々がこのGTCで取り上げたいトピックです。

ディープラーニングは非常にパワフルで、学習する機能があります。また、非常に複雑な画像を認識することもできます。

たとえば、人間には顔があり、目があり、まつ毛があり、口がある。他の動物、サルにも目があり、まつ毛があり、口があります。それではどうやってその違いを認識することができるのか? 人間とサルとチンパンジー、そして、他の動物。

人間にはその違いを区別することができます。非常に多くのパターンがあるからです。さまざまな変数を認識していきます。人間はさまざまな複雑なパターンを認識することができます。

パターンを認識するのはどのようにしているのでしょうか? パターンを認識し、その特徴を抽出する。この2つが重要な要素となります。ディープラーニングによって、これらを自動化していきます。ディープラーニングによって人間を認識することができます。

しかし、ここに問題があります。それは計算が難しく、演算負荷が高すぎるということです。大量のデータから自動学習するには、重要なフィーチャーを抽出するには、多くのデータが必要でありすぎるということです。

2010年のはじめ、スイスの研究者とカナダのトロント大学の研究者が同時に新しい発明を発表しました。それが「GPGPU」です。汎用GPUです。NVIDIAがCUDAという技術を発明しましたが、それをベースにしています。GPUには、こうしたニューロネットワークを並列で処理できる機能が備わっているということに気が付いたんです。それによって、10~100倍もスピードアップすることができました。

データ学習の速度がそれだけ高まったんです。GPUがなければ、この新しいニューロネットの学習は何か月もかかったでしょう。数か月かけて開発するソフトは現実的ではない。しかし、GPUによって、根本的にはじめてこれらが実際に使えるテクノロジーになったのです。

そして、2012年に重要なネットワークと論文が発表されました。これはアレックスネットと呼ばれます。これがどんなものか?というとNVIDIAの2つのプロセッサによってトレーニングしたものです。これは100枚余りの画像から対象物を認識することをこころみました。そして、その成果を世界大会で発表しました。そして、彼はその大会で優勝しました」

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2012年にディープラーニングビッグバンが起きた。

「わずか数日間のトレーニングで、このプログラムは数十年かけてきたアルゴリズムを打ち負かしました。これが世界中のAIの研究者が注目するようになるきっかけになりました。「ディープラーニングとは何なのか?」注目が集まりました。これがAIコンピューティング時代の幕開けと言っていいと思います」

「世界中の研究者はディープラーニングの重要性に気が付いています。そして、GPUによるディープラーニングがいかに現実性があるかにも気が付いています。

マイクロソフトの音声認識はディープラーニングで6.3%のエラー率というものを実現しました。さまざまな状況下で正確な音声認識をすることは非常に難しく、人間はそれができる優れた能力を持っています。今やディープラーニングによって、人間並みのイメージ、パターン、音声の認識ができるようになりました。

さて、なぜここでNVIDIAなのか? まず、NVIDIAは世界最大の並列コンピューティング企業です。我々は会社の創業時代から並列に注目してきました。それは我々の魂と言ってもいい。我々はGPGPUを発明し、CUDAを発表しました。並列処理が必要なものは世の中に多いので、これが世の中を革新すると考えていました。それを汎用的な形で提供できれば、コンピュータ業界を大きく改革できると信じていました。

そして、我々は今、3つの抜本的なところに注目しています。まずはHPC。これは普通のコンピュータより高度な処理を実行できるコンピュータです。2つ目はビジュアルコンピューティング、3つ目は人の見解をコンピュータとして適用すること。我々はコンピュータが脳を理解すること、すなわちAIに注目しました。

はじめて、SFだと私たちが考えていたことが形となります。この3つを駆使することで、VR、AR、そして、コンピュータとインタラクションしながら、インテリジェントエージェントとして接することができる世界を実現することができます。アイアンマンの映画に出てくる研究所に「ジャービス」という人工知能が出てきて、いろいろやり取りをしています。これが現実のものになる時代はもうすぐやってきます」

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映画「アイアンマン」に出てくる人工知能ジャービス。

「だからこそ、コンピューティングが今面白い。そして、GPUディープラーニング開発者は2014年と比較して実に25倍増えています」

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数年で25倍に増えたGPUディープラーニング開発者。

『なぜAI研究者はGPUをディープラーニングに利用するのか?』というと、脳がGPUのようなもので、GPUが脳のようなものだからです。などと脳とGPUの関係を語った。

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脳とGPUの処理は似ているという。

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そして、GPUディープラーニングは新しいコンピューティングモデルであることを紹介し、そのステップは、インテリジェントデバイス(大量のデータ)>学習>ディープニューラルネットワー>推論<>インテリジェントデバイスというものになる。

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ディープラーニングの処理ステップ。

「マイクロソフトのディープラーニングを使った画像認識は2012年から2015年にかけて実に16倍速くなっている。つまり、ムーアの法則を超えているわけです」

続いて、新製品「TESLA P4&P40」とソフトウェア「TensorRT」を紹介した後で、「それで何ができるのか?」を紹介し、ディープラーニングの持つパワーを示すために映像を使ったデモを行った。これはライブビデオに対して、ディープラーニングで独自フィルタをかけ、映像を有名な画家の画風に変えてしまうというものだった。普通の風景映像が、ピカソ風とかゴッホ風にアレンジされたのは見事で、人々は喝采を送っていた。

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ディープラーニングのパワーで有名アーティストのフィルタをリアルタイムにかけていく。

その後、日本のメーカー「FANUC」がその工場にNVIDIAプラットフォームが採用されたことが紹介された。そして、そのロボット事業本部長の稲葉氏が登場し、スピーチした。

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日本企業FANUCが紹介された。

そして、ディープラーニングに最適化された「PASCAL」が紹介され、自動車の自動運転向けコンピュータ「Drive PX2 AUTCRUISE」やそれを使った自動走行が実用の域に達してきたことを紹介したりして、イベントは終了した。

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ディープラーニングは自動走行にも活用される。

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■GPUからAIの主役になったNVIDIA

かつてゲーム向けのグラフィックカードで一世を風靡した(今でも主流ではあるが)NVIDIAが、そのGPU技術で人工知能界をけん引し、自動走行自動車で大きな役割を果たす存在になりつつあるのに感心する。このGPUディープラーニングによって認識分野が飛躍的に進化し、人工知能が実用に近づいたのは驚きだ。もはや、人間並みの人工知能が登場するのも数年後とイーロンマスクが言ったというのもうなずける。GTCはそんなディープラーニング技術に興味がある人にお勧めなイベントだった。

■関連リンク
「GTC」公式サイトhttps://www.gputechconf.jp/

文/一条真人

ITジャーナリスト。雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスONE」編集長などを経て現在にいたる。著書50冊以上で、近著は「はじめてのChromeBook」(インプレスR&D)。IchijoMasahto。本名:OSAMU SAKATA。

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