連ドラ、全話ネット無料放送が一般化か...フジ『明日の約束』視聴率爆増の「隠れた仕掛け」

連ドラ、全話ネット無料放送が一般化か...フジ『明日の約束』視聴率爆増の「隠れた仕掛け」

  • Business Journal
  • 更新日:2018/01/11
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2017年は“テレビ×ネット”をキーワードに、いくつかの局面でターニングポイントを迎えた1年となった。前回記事でテレビCMや全数ログ(視聴履歴データ)分析によるマーケティングの分野で進化が始まっている点を解説したが、もう一つ、連続テレビドラマにも新たな可能性が出始めた。そこで今回は、“テレビ×ネット”がドラマの分野にどのような事態をもたらす可能性があるかについて考察してみたい。

●17年のドラマ界

まず、17年の民放ドラマ全話平均視聴率ベスト10をみてみよう(以下、視聴率はすべてビデオリサーチ調べ、関東地区)

1位:20.9%『ドクターX』(テレビ朝日系)
2位:16.0%『陸王』(TBS系)
3位:14.8%『コード・ブルー』(フジテレビ系)
4位:14.6%『A LIFE』(TBS系)
5位:14.1%『緊急取調室』(テレビ朝日系)
6位:13.6%『小さな巨人』(TBS系)
7位:12.7%『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)
8位:12.5%『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)
9位:11.9%『コウノドリ』(TBS系)
10位:11.5%『過保護のカホコ』(日本テレビ系)

16年秋クールの『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)ほどインパクトのあるドラマはなかった。ただし、『ドクターX』が全話平均で20%を超え、相変わらずの強さを見せつけた。また『陸王』最終回が20%を超え、これでTBSは秋クールドラマの最終回で『下町ロケット』(15年、22.3%)、1『逃げ恥』(16年、20.8%)と、3年連続で大台を連打している。ほかにもTBSドラマには佳作や力作が並び、充実の1年だったといえよう。

●チェインストーリーという仕掛け

そんななかにあり、ドラマが“テレビ×ネット”で新たな可能性を見せ始めた。関西テレビが秋クールで放送した『明日の約束』での新展開だ。まずはチェインストーリーと呼ばれる取り組み。ドラマの初回放送後に“放送では描かなかった”1.5話をミニドラマとして配信し、翌週の2話につなげる。その後、2.5話配信、3話放送、3.5話配信……と鎖のようにつなげていく仕掛けだ。

例えば初回のエンディングは吉岡圭吾の自殺だった。これを受けた1.5話は、『吉岡圭吾-最後の一日-』というタイトルで、自殺までの足取りを紹介した。自殺の謎を解く要因や布石が散りばめられているので、これを見ることで2話の理解を促進するだけでなく、その後の展開にもつながるような工夫がなされていた。

圭吾自殺直後の周囲のリアクションを描いた2話を受けた2.5話は、『田所那美-彼女の明日-』という物語。圭吾と同様にいじめを受けていた女子生徒の物語で、圭吾と関わることで状況を大きく変えていた。やはり3話やそれ以降の展開に多くの示唆を残す出来だった。3.5話『小嶋修平-ゲスの極み記者-』、5.5話『居酒屋にて-現場教師たちの苦悩-』、6.5話『ある男性教師の受難』などは、『明日の約束』に関わる大人たちの裏の顔が紹介された。複数の人々が表の顔で動くことで物語は展開しているが、その背景を描くことで問題の深刻さが理解できるようになっていた。

さらに4.5話『三人-過ぎ去りし日々-』と7.5話『私の声は届かない』は、香澄(佐久間由衣)が最後に襲おうとしている人物への布石となった。そして最終回直前の9.5話『藍沢日向-記憶-』は、主人公・日向(井上真央)と毒母・尚子(手塚理美)との間で交わされた「明日の約束」ノートの内容を明かした。毒母の抑圧のなかで、日向がどこまで自立し、どこでけじめをつけられずにいたのかが見えるようにできていた。

これが最終回の展開に反映され、チェインストーリーを見た人は、放送されたドラマの奥行を堪能できるようになっていた。つまり同ドラマは“テレビ×ネット”で内容に重層性を持たせ、緻密な構成を可能にしていたといえよう。

●ビンジ・ウォッチの可能性

さらに同ドラマは、7話放送直後から全話の見逃し配信に踏み切った。「binge-watch(ビンジ・ウォッチ)」とよばれるドラマの一気見を可能としたのである。米国のNetflixが急普及した要因の一つで、オックスフォード辞典に17年新たに収録されたほど、こうした見方をする人がいま増えている。これらの取り組みが奏功し、7話で4.3%だった視聴率は8話で6.0%と4割も改善した。

しかも一気見は、同ドラマの難解さを緩和する役割も果たした。もともと同ドラマは1シーンが一般のドラマよりかなり短く、テンポよく場面が転換するようになっていた。ところが細かいステップを踏むような展開は、いわばピースが極めて多く解くのが大変なジグソーパズルのようなもの。見ている側は“ちょっと気を許す”と重要な布石を見落としたり、話の流れが見えなくなったりしてしまう。ところが全話と全チェインストーリーを一気見することで、絡まっていた糸が解れるように、すっと緻密な構成と個々の登場人物の関係が見えてくるようになっている。

視聴率が4.3%から6.0%に上昇した原因のすべてとまではいえないものの、ここでドラマにハマった視聴者は少なからずいたはずだ。

●進むテレビ×ネット

ドラマとネットの連携は、2008年に始まったフジテレビオンデマンドやNHKオンデマンドが最初の取り組みだった。ただし当時は、直近の放送がそのまま有料で配信されただけである。

次にNHKは10年から11年にかけて、大河ドラマや連続テレビ小説(朝ドラ)などで『5分でわかる~』というタイトルで、5分の無料ミニ動画を配信し始めた。番組宣伝が主な目的で、11年4月から放送した韓流ドラマ『イ・サン』では、当初6%ほどだった視聴率が11月には9%を超えるほどの効果を上げた。民放各局もすぐにダイジェスト・ミニ動画の導入を始め、なかには初回から直近の回までをすべて配信し、視聴率向上に努めた局もあった。

そして14年1月、日本テレビは『明日、ママがいない』などで見逃し配信を始めた。放送後から1週間、放送を見逃した人に向け、有料ではなく無料で見られるようにした。この取り組みは半年後には広告付きの配信に進化した。放送への視聴回帰を促すだけでなく、広告収入増も狙った取り組みであった。

その後に各局は、放送したドラマのスピンオフや独自ミニ動画などにも乗り出す。例えば日本テレビは、子会社化したHuluの契約増と放送回帰を狙い、16年秋放送の連続ドラマに連動させた『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子…がいない水曜日』や、17年冬放送『東京タラレバ娘』に連動した『東京ダラダラ娘』などの配信を始めた。NHKも大河ドラマ『真田丸』のスピンオフ『ダメ田十勇士』で話題を集めていた。

そして『明日の約束』での、チェインストーリーとドラマ終盤前での全話一気配信だ。紆余曲折はあったものの、“テレビ×ネット”でドラマは確実に連携効果を出し始めている。この先、どんな新しい知恵が出てくるか。楽しみにしたいものだ。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

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