中村雅俊が『花神』を振り返る「自分は高杉晋作と思い込んでいた」

中村雅俊が『花神』を振り返る「自分は高杉晋作と思い込んでいた」

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  • 更新日:2017/11/12
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中村雅俊 (c)朝日新聞社

昨年の2月、多数のメディアが「司馬遼太郎没後20年」を報じた。「関ヶ原」が映画化され、催事「没後20年司馬遼太郎展『21世紀“未来の街角”で』」が昨年に引き続き今年も各地で展開されるなど、没後20年経った今も人気と知名度は衰えていない。

そんな報道の中でひときわ興味を引いたのは、「司馬遼太郎書籍累計発行部数ランキング」だ。

版元各社(文藝春秋、朝日新聞出版、新潮社、講談社)の累計では1位が「竜馬がゆく」で2477万部、2位が「坂の上の雲」で1967万部、3位が「街道をゆく」で1191万部。上位20作品を合計すると1億3453万部というとてつもない数字になる。

大河ドラマ15作目の原作は、そんな司馬遼太郎の「花神」だった。

主人公は幕末維新ものの表舞台には殆んど現れることがない大村益次郎(村田蔵六)だから低視聴率に喘いだ本作だが、作品的な評価は高かった。例えば「大河ドラマとともに大人になった」というタレントの松村邦洋は、「大人になってあらためて見返した名作が『花神』。山口中心の幕末を篠田三郎さんの吉田松蔭に始まり、中村雅俊さんの高杉晋作につながって、最後は中村梅之助さんの大村益次郎で終わる。この3人が主役なんですよ。明治維新というものを野球で言う先発、中継ぎ、抑えという分業でやり遂げたっていうね。主役が途中で代わっていくというのは、なかなかないパターンで、すばらしかったですね」

“花神”とは中国で言う“花咲爺”のことで、幕末期に彗星のごとく現れて明治維新という花を咲かせた天才戦略家・大村益次郎を指している。彼を主人公にした短篇「鬼謀の人」のラストで、司馬は大村についてこう記している。

「歴史が彼を必要としたとき忽然と現れ、その使命が終わると大急ぎで去った。神秘的でさえある」。

その時代背景については、「時代の変革期には思想家、行動家、最後を仕上げる技術者と3段階に連なる系譜がある」と表現しているが、それを本作に当てはめると、思想家は松陰吉田、行動家は高杉晋作、そして、技術者は大村益次郎ということになる。

その高杉晋作を演じた中村雅俊さんは当時の事を次のように回想している。

「初めての時代劇がNHKの大河ドラマだったので、台詞の言い回し、立ち居振る舞い、殺陣などほとんどが初めての経験でプレッシャーに押しつぶされそうにもなりました。しかし実際に撮影が始まってしまうと、とても仕事がやりやすい現場でした。物を作る意欲、気持ちがみなぎっている人たちが溢れていました。振り返ると本当に楽しい現場で、良い出会いをしたと思っています」

また演じた高杉晋作については、「幕末の天才革命児という、偉大すぎる歴史上の人物。この人を演じることは容易ではないと覚悟しました。結果導き出した答えは、自分が高杉晋作だと思い込むこと。自分が思う表現は全て高杉もそうだったと信じて演じました」と語る。

松村のように今でも「花神」のファンが多いのは、小説やテレビ、映画で取り上げられることが少ない大村益次郎を主軸にした長州の群像劇だからだ。それは大河ドラマ班の気骨ともいえるものだが、その大河について、中村さんは次のように語る。

「当時の大河ドラマは視聴者のニーズに合わせるというよりも、企画した人や周りのスタッフが自分たちの作りたいように作っていた信念のようなものがあったと思う。制作者が一生懸命作って、視聴者に胸を張って提供する。視聴率は気にしなかったような気がします。視聴率が一番大事になってしまってはダメだと思います」

脚本を担当した大野靖子は以下のようなナレーションを書いたが、そこに大河全スタッフとキャストの想いが現れている。

「一人の男がいる。歴史が彼を必要とした時、忽然として現われ、その使命が終ると、大急ぎで去った。もし維新というものが正義であるとすれば、彼の役目は、津々浦々の枯れ木にその花を咲かせてまわる事であった。中国では花咲爺いの事を花神という。彼は、花神の仕事を背負ったのかもしれない。彼―村田蔵六。後の大村益次郎である」

(植草信和)

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