老猫ホームの最長老猫「てつ」、22歳で大往生 ホーム代表の夫妻に見守られ

老猫ホームの最長老猫「てつ」、22歳で大往生 ホーム代表の夫妻に見守られ

  • sippo
  • 更新日:2016/10/19
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東京都大田区にある老猫ホームで最長老だったオス猫「てつ」(22)が10月16日、旅立った。仲良しの友「トラ」が逝ってから1年足らず。周囲から愛された末の大往生だった。

(末尾に写真特集があります)

どこからともなく黒と白の模様の猫が現れて、こちらを見上げている。てつ君? 丸い頭をなでると、猫はきゅっと目を閉じた……。

老犬や老猫を生涯預かる施設「東京ペットホーム」に暮らすてつが、私の夢に出てきたのは10月はじめ。その夢から1週間ほど後、15日にホームのスタッフから連絡が入った。

「てつ君が危ないんです」

危篤の知らせを受け、翌朝会いにいくと、てつはホームの代表、渡部帝・まいこさん夫妻の自宅にいた。居間に置かれたケージの中に横たわり、オムツをしている。久しぶりに会ったてつは、やせ細っていた。大きな鳴き声がトレードマークだったが、すでに鳴く力もない。渡部さんが見守るようにいう。

「自力で食べられず、1週間ほど前から寝たきりになりました。でも数日前には自分で食べて水も飲んで起き上がろうとしたんですよ」

老猫ホームは自宅と目と鼻の先にあるが「急変もあるかもしれない」と、自宅に連れてきたという。妻のまい子さんがケージの横に布団を敷いて寝ている。

「今までの経験から、食べられなくなると2、3日という子が多いですが、てつ君の生命力はすごい。抱っこしますか?」(まい子さん)

目を閉じたままのてつを、抱かせてもらった。

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すでに1㎏台のようだ。でも、命の重みがじんわりと伝わった。

「てつ君、てつ君、会いにきたよ」

話しかけると、シッポの先が動いた。

「あ、聞こえてる!?」

「耳は最後まで聞こえるといいますね」

渡部夫妻と、スタッフの高橋さんと一緒に揺れたシッポを見た。

「夢に出て呼びにいったのかな、律儀な子だねぇ」と渡部さんが穏やかにいう。

昨年9月から1年の間に、3度の取材をさせてもらった。人間なら100歳に相当する年齢だったが、愛らしく、惹き付けられるおじいちゃん猫だった。

てつがホームに来たのは2015年の1月14日。成人の日に、20歳を超えてやってきた。

「先にトラ君(当時19歳)が来ていて、高齢猫同士、気が合ったんです。トラを追いかけるように2匹で遊び、気付いたら抱き合って寝るようになりました」(渡部さん)

てつの飼い主夫妻(80代)は大の猫好きで、複数の猫と暮らしてきた。だが2人で高齢者施設に入ることになり、最後に残った高齢のてつを高齢者施設には連れて行けず、周囲に預ける人もなく、このホームに託したのだった。

「てつ君はホームに来る前に一度体調を崩し、飼い主さん夫妻は看取る覚悟もしたのですが持ち直したんです。猫も20歳を過ぎたら新環境に順応するのは大変だと思いますが、ホームに来てすぐ食事をして、猫の友達もできた。すごいと思います」

昨年クリスマスには、「仲良しの2匹へ」と、飼い主さんから、てつとトラにお揃いの枕が贈られた。だが今年1月、親友のトラが急に体調を崩して亡くなった。それからてつに、変化が起きたという。

「いつも2匹で寝ていたケージで眠らなくなったんです。プレールームでトラを探すようにぐるぐる回って大声でワオワオ鳴いて、床で寝ることが多くなって」

心配した渡部夫妻とスタッフは、少しでもてつの元気回復につながればと、ホームで気の合うメス猫ビーちゃんと一緒に過ごす時間を増やしてみた。すると、てつの起きている時間が少し「長く」なった。イキイキしたようにも見えたという。

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渡部さんが振り返る。

「少し刺激になったのかと思います。食欲も出ました。でも老衰で目が見えなくなり、粗相も増えた。何しろ、トラがいる時といなくなってからでは様子が違いました」

夏を過ぎるとガクッと体力が落ち、10月はじめにはえさを食べなくなり、一時的に入院した。その時、病院で飼い主夫妻と2年弱ぶりに再会したという。

「会えば、てつ君に里心がつくかもしれないからと、飼い主さんはホームに預けた時に泣く泣く、今生の別れと決めて、会わずにいた。でもいよいよとなり、地方から駆けつけたんです」

てつは生きている間に、懐かしい飼い主さんとも再び会うことができた。

もともとは生後数週間の時に捨てられ、保護されたてつ。

飼い主さんの家でたくさんの猫たちと過ごし、その仲間を見送り、都内の老猫ホームに住まいを移し、そこで親友も見送った。そんなてつが永眠したのは、10月16日朝8時。私が会いにいった12時間後だった。

「妻の腕に抱かれて眠ったまま、痙攣もなく、力が抜けるように、穏やかでした」(渡部さん)

てつは、飼い主さんの要望で、大田区のペット霊園に入るという。ホームの仲間も何匹かそこに眠っている。

てつの体にかけられていたタオルには、こんな文字が記されていた。

〈さだめなき浮世に候へば 一日さきは知れず候〉

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真田幸村が義兄にあてたとされる手紙の一節。一日先のことは私自身にも分からない……。てつ君も激動の22年間を立派に生き抜きました。

どうか安らかに――。もうトラ君とは会えたかな。

(藤村かおり)

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