北海道「突出して何もない町」が地方創生に成功 陰にアイデアマン公務員

北海道「突出して何もない町」が地方創生に成功 陰にアイデアマン公務員

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  • 更新日:2018/02/14
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「こども園」で遊ぶ子どもたち。園は学童とつながっていて、保護者にとっても便利だ。子育て世帯が移住し、子どもの数も増えている(撮影/工藤了)

「地方創生」の名のもとに、各自治体が奮闘している。昨年12月、地方創生の司令塔、内閣府の「まち・ひと・しごと創生本部」は「移住・定住施策の好事例集(第1弾)」を発表した。3大都市圏以外から、行政・民間の取り組みによって転入者数から転出者数を差し引いた社会増減数を始点年の総人口で割った「社会増減率」がプラスに転じた、または社会減の減少幅が縮小した自治体を選定。全18自治体を紹介した。成功した地方自治体は一体どんな取り組みをしたのか。そのひとつを取材した。

新千歳空港から1日3本のバスに乗って約50分。降り立つと、吹いてくる風が突き刺すように冷たい。

「突出しているものは何もない町ですから」

北海道厚真町(あつまちょう)。役場の応接室で、産業経済課参事の大坪秀幸さん(58)は開口一番、冗談を飛ばした。しかし、その言葉通り何もなく、交通の便も決してよくないこの町が、14年から17年まで4年連続、社会増を実現した。その立役者が、大坪さんだ。昨年3月までの10年間、まちづくり推進課で手腕を発揮した。

北海道南部にある厚真町は人口約4700人。日本創成会議が「消滅可能性」を指摘した自治体の一つだ。

大坪さんは1987年の入庁以来、都市計画を担当した。町は、60年代の高度経済成長期から人口減少がつづいていた。人口を増やすためには、外から人を呼んでくるしかない。

「成功した町の事例をそのまま真似してもうまくいくとは限りません。自治体の役割は、それぞれの地域にあった戦略をいかに見つけ出し、それを行政が一丸となって実現させるか。そのためには、役場内の自由な発想とそれを受け入れる雰囲気づくりが必要だと思っています」

自他ともに認めるアイデアマン。モットーは「怖いのは失敗することではなく失敗を恐れて何もしないこと」。そんな大坪さんが取り組んだのが、分譲地の整備。町内四つのエリアに五つの分譲地を整備して販売。豊かな自然環境と、「東京圏との日帰りも可能」を売り文句に、これまで約600区画を造成。町内や近隣、道外に住む人などに、約500区画を販売した。

14年度から始めたのが「子育て支援住宅」の建設だ。年5棟ずつ3年間、計15棟こしらえた。3LDKの平屋一戸建て、家賃の基準額は月5万6千円。周辺の自治体より2割近く安い。

主なターゲットを隣接する苫小牧市に住む子育て世代に絞った。町から苫小牧まで車で約30分。安い家賃と子育て環境があれば、移住してくれる。思惑通り、15戸に62人の入居が実現した。すべて20代から40代の現役世代だ。

「失敗? あまり考えませんでした(笑)。それよりも、うまくいったらいいなあという、わくわく感のほうが圧倒的に大きかったですね」

町は、若手職員を中心に地域資源を生かしたローカルベンチャー支援などにも乗り出した。

厚真をもっと魅力的な町にしたい──。強い意志と希望を持った職員が増えているという。

「これからは若手に任せ、私はバックアップに回ります」

と話す大坪さんには、夢がある。古い建物を生かした地方創生だ。

「町には築100年以上の古民家が15棟近く残っています。この古民家を活用し、北海道にはまだほとんどない民泊や、民宿を広め、古民家の保存と交流人口を増やしたいんです」

定年まであと2年。最後まで駆け抜ける覚悟だ。(編集部・野村昌二、柳堀栄子)

※AERA 2018年2月19日号より抜粋

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