絶対王者バイエルンの危機を救った72歳の名将 老獪な手腕に見る采配の奥深さ

絶対王者バイエルンの危機を救った72歳の名将 老獪な手腕に見る采配の奥深さ

  • Football ZONE web
  • 更新日:2017/12/05
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期待よりも疑いが強かった“三冠監督”ハインケスの復帰

カルロ・アンチェロッティを解任したバイエルンに10月6日、ユップ・ハインケスが復帰した時、ドイツ紙「ビルト」は「今年のサッカー界最大のセンセーション」との見出しで報じた。だが2012-13シーズンにバイエルンを三冠に導いた英雄監督も、御年72歳。すでに一度引退していた老将に、どこまでの力があるのだろうか。期待よりも、疑いの方が強かった。「大丈夫なのか」と――。

だが、ハインケスはすぐにその手腕を発揮した。とはいえ、特別に複雑なことをしたわけではない。

やるべきことをシンプルにまとめ上げ、問題を一つずつクリアしていく。まずはアンチェロッティのもとで緩んでいたとされる空気を引き締めた。チーム内に明確なルールを定め、歩んでいく方向を一致させた。選手それぞれの立ち位置を認知させ、役割を理解させた。

チームとして必要なのは、まず成功体験。だから最初はメンバーをいじらなかった。よく知るメンバーを多く起用し、責任感を持たせ、信頼を力に変えさせる。求めるのはやるべきことに100%集中して、パフォーマンスを出すこと。そこでサボる選手には、厳しい態度で迫るし、前半で交代させることも厭わない。

勝利という結果がついてきたことで新加入選手を馴染ませて、調子を落とした選手の尻を叩き、元のフォームに戻していく時間もできてきた。コミュニケーションをただ取るだけではなく、自分のビジョンをダイレクトにも伝えていく。

ビダル、ハメス、ミュラーが再び輝く

例えば、不摂生や生活の乱れが報じられていたMFアルトゥーロ・ビダルを叱責した。レバークーゼン時代から知り、その才能を開花させた教え子の今を認めるわけにはいかなかった。するとビダルに、恩師の言葉が響いた。11月18日の第13節アウクスブルク戦(3-0)では素晴らしいゴールを決め、中盤でのダイナミックなプレーも蘇ってきた。

鳴り物入りで加入しながら順応に苦しんでいたMFハメス・ロドリゲスには、焦らずにゆっくり取り組むようにと諭した。アスレチック・ビルバオ、レアル・マドリードで監督を務めていた時の経験、そしてスペイン語に堪能だったことも首脳陣がハインケスを頼った理由の一つ。ドイツ独特の寒さと厳しさに理解を示し、徐々にチームの輪に溶け込ませた。指揮官からの信頼を感じ取ったハメスのプレーからは、軽やかさが感じられるようになっている。

そしてアンチェロッティ政権下で調子を落とし続けていたFWトーマス・ミュラーが、再び輝き出している。サッカーではゲームプランとともに、“プランブレイク”が大きな意味を持つ。ミュラーは味方のプランから外れながら、相手のプランの泣きどころを突くことができる。自由と規律。そのバランス感覚を巧みにコントロールし、「既存の戦術にはまらない」ミュラーの良さを最大限引き出していく。

その采配の妙からは、監督という仕事の奥深さに感嘆せざるをえない。全て計算された希代の戦術家と対抗しうるだけの老獪さ、明確なプランと選手の力を開放させる人心掌握術――。現有戦力の単純な比較だと、例えばUEFAチャンピオンズリーグを優勝できるだけのレベルにはないかもしれない。だが、バイエルンの怖さは、そうした既存の分析を吹き飛ばす何かが生まれる時だ。そしてその雰囲気が、少しずつ生まれてきている。

【了】

中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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