老後2000万どころか「すごい退職金」をもらっている会社もある

老後2000万どころか「すごい退職金」をもらっている会社もある

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/08/22
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終身雇用の夢は潰え、退職金は年々減るばかり。その一方で、会社員平均の2倍を軽く超える退職金を出す大企業もいまだに多数存在する。老後生活するおカネに不安がないとは、羨ましい限りだ。

年額150万円が終身で

「この特集に載っている、有名企業OBの退職金を見て、ある意味で『日本のいちばんいい時代』に、有名企業を勤め上げた人たちだな、と率直に思いました。

'70年代後半から'80年代前半に就職した世代は、バブルを経験して給与水準も高く、それでいて退職金もピークに近い額を受けとっている人が多い。大手では、いまだに退職金が高止まりしたままの企業が多数あります」(獨協大学経済学部教授の森永卓郎氏)

東京海上日動4800万円、東芝4100万円、東京電力5100万円――。有名企業の元社員が手にした、生々しい退職金の「実額」を掲載したのは、『週刊ダイヤモンド』(7月27日号)である。

こちらには企業名と退職金の額に加え、退職時の役職や退職時期、就職時の学歴が新卒か否かなども明記されている。

老後資産の大きな支えになる退職金。だが、「終身雇用神話」があった一昔前ならいざ知らず、決して多くはない金額を手切れ金のように渡され、頭を抱えている人も多いはずだ。

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、日本企業の約5社に1社では退職金制度がそもそも存在しない。さらに退職金の平均額も、20年前と比較すると3203万円('98年)から1997万円('18年)と、1000万円以上減っている。

ところが件の特集を開くと、今や中高年の最大関心事ともいえる「老後2000万円」問題など、まるで私たちには関係ありませんというような数字が並んでいる。

とりわけ破格の退職金を貰っているのが、ガスや電力などのエネルギー、航空会社や通信などインフラを扱う業界だ。

たとえば、大阪ガスの理事まで上り詰めて退職したOBは、年間400万円を企業年金の形で15年間、合計で6000万円超の退職金を受け取る予定だという。さらに16年目以降は年間150万円の年金が「終身で」支給されるのだ。

当然のことながら、企業年金に合わせて国民年金や厚生年金といった公的年金も満額受給することになる。合算すれば、現役世代の社員たちを凌駕する収入で余裕のある老後生活を送っているのではないか。

また、石油業界再編の末に誕生したJXTGホールディングスの元部長は、在籍約15年でありながらも約6300万円の退職金を受け取っている。

「エネルギー関連は規制産業で長いあいだ寡占状態にあるうえ、再編が進んでもまだ莫大な内部留保のある企業もあります。

また島国である日本は海運や空運が無くなることはなく、従業員の権利も保障されてきた歴史があります。そのため、社員は長い間、手厚い福利厚生を享受してきたといえるのです」(経済ジャーナリストの溝上憲文氏)

こんな俺でも4000万円

'90年代後半に退職したJAL(日本航空)の元次長級社員には、一時金で3000万円、総額で約8000万円もの退職金が支払われているという。

'10年に経営破綻し、約3500億円もの公的資金が注入されたのは、この社員が退職した後とはいえ、世界を股にかける「鶴丸」の福利厚生はケタ違いだった。

「経営難が表面化しても、OBの発言力は強かった。実際に経営破綻した後、退職金の減額に頑として応じなかったOBには、予定通りの額が支払われているんです。破綻直後に募集された早期退職では、給料の約6ヵ月分が退職金に上乗せされました。

年収2000万円の社員もザラにいたわけで、1000万円増額されるわけです。外からは相当な批判を受けましたが、今の現役社員は当然、そんな金額はもらえませんよ」(JAL現役社員)

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同じく給与水準が高い金融業界でも、相応額の退職金を享受する元社員が多いようだ。

まずはメガバンク。「出世がすべて」の業界にあって、キャリアパスは退職金にも大きく影響する。いずれにしても高額ではあるのだが。

三菱UFJ銀行の部長級では一時金約3800万円に加え、企業年金が10年分で2400万円、以降年200万円の年金を終身で受け取っているという。

みずほ銀行で支店長のイスを射止めたOBは、グループ会社に出向した4年分が「ご祝儀」として退職金査定に加算され、約5200万円の一時金を受け取った。

また三井住友銀行から40代半ばで出向、50歳を過ぎたところで退職した元社員は約3000万円を受け取った。この元社員も、出向中の給料減額分は退職金で補填されたという。

ちなみに、出世競争からリタイアした三井住友銀行OBの退職金は約1900万円。ひとくちにメガバンクといえど、「社内格差」があることがはっきりわかる。

経済評論家の山崎元氏は次のように語る。

「やはり銀行では、どの役職まで出世したかが大きく退職金に影響するようです。メガバンク統合以前の都銀でいうと、『一国一城の主』である支店長になるかならないかで、企業年金が月額10万円ほども差があったと聞きます。

出向が非常に多い業界ですが、出向先のランクでも退職金の額が増減するはずです」

3メガを凌駕する退職金を退職者に支払っているのが、生命保険業界だ。日本生命の課長級OBは約6000万円、住友生命の課長級で早期退職を選んだ社員は約5100万円の退職金を受け取ったという。

「50代前半で年収は約1200万円のピークを迎えました。その後出向し、給料は1割程度下がりましたが、定年退職して貰ったのは約4000万円。

昔はメガバンクの給料が高くて羨ましかったのですが、たいして出世もしなかった自分にこれだけ退職金が出たと思えば、むしろラッキーだったと思います。

それに加えて、今は関連会社で週に3日程度働いています。もちろん現役時代より給料は少ないですが、今のところ老後に必要なおカネに不安はないですね」(大手生保会社OB)

上乗せに次ぐ上乗せ

「高給取り」の代名詞とも言える商社では、その破格の給料と比較すると退職一時金は少ないように見えてしまう。

たとえば、住友商事の元副部長は約2100万円、丸紅の元副本部長では約2200万円。いずれもピークの年収は2000万円以上と推測されるが、なぜこれだけの金額にとどまっているのか。大手商社OBがその意味を教えてくれた。

「退職時に支払われる一時金は比較的少ないのですが、後払いの企業年金が非常に手厚いのが特徴です。住友商事や丸紅は月10万円以上の企業年金が終身でついてくるので、公的年金と合わせれば毎月30万円は手元に入ります。

どうしてウチの業界がこうした体系になっているかって?商社マンは早死にしがちで、年金式にしたほうが会社の得になるからだって、OBのみならず、みんな思っていますよ……」

生涯賃金では金融業界や商社に届かないが、労働組合の強い業界、たとえば自動車メーカーでは十分すぎる額の退職金が社員に支払われる。

頭一つ抜けているのがグローバルメーカーであるホンダだ。部長級で定年を迎えたOBの退職金は約5000万円。サラリーマン平均の2倍以上の金額を手にしている。

「ホンダに限らず自動車メーカーでは、高卒・大卒といった学歴や、事務職・現場職というキャリアに関係なく、最終的なポストで金額が決まることが多い。

バブル崩壊後に経営難が続いたマツダでは、給料やボーナスカットの補填として退職金が上乗せされたケースもあるようです。

ただ、トヨタや日産では退職金で自社株を持つ人が多く、今後の業績次第で実質的な資産が大きく左右される不安はあるかもしれません。いずれにしても、定年まで勤め上げれば老後資金に困ることはないと思いますが」(大手自動車メーカーOB)

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業界全体で苦境が続き、早期退職の募集が相次いだ電機メーカーでは、うまく「逃げ切り」に成功したOBが、老後の安定を確保したようだ。

東芝のあるOB(部門長)は、'15年に発覚した不正会計事件前に退職。56歳で役職定年となり、子会社に転籍した。退職金は、早期退職手当などなしで約4100万円。モノづくりの栄光とともに歩んできた一流企業の面影を感じさせる金額と言える。

「問題発覚後、会社は新入社員の採用を1年間取りやめたり、ボーナスをカットしたり、色々と身を切る改革をやったわけですね。

1万人規模の早期退職を募ったのもそのときで、経営陣がリストラを急いだために、退職金が上乗せされて5000万円になったという話も聞きます。

あくまで一部ですが、主力だった半導体部門の技術者はトヨタなどの大手メーカーで再就職先が見つかり、むしろキャリアアップになった人もいる。

インフラ系の子会社に転籍になったり、下請けの部品メーカーに辛くも再就職した人に比べたら、恵まれた存在です」(東芝現役社員)

上を見ればキリがない

'12~'13年度に業績を大幅に悪化させたパナソニックも、東芝と同様に早期退職を募集。いわゆる「特別加算金」を手にした元社員は多い。

直近5年以内に退職したパナソニックОBは次のように言う。

「私が退職した年度は、2300万円の早期退職加算金の制度が残っていて、部長級の退職金でおよそ5000万円支給されました。

『ポストがなく、昇進が遅いから年収も上がらない』と言う現役社員からすれば、『逃げ切り世代』と言われても仕方ありませんが、上を見ればキリがありません。

V字回復を主導した中村邦夫社長が就任したのは'00年ですが、その時『特別ライフプラン支援制度』なるものが設けられたんです。

すると退職金は一気に給料40ヵ月分から60ヵ月分、管理職でいえば5000万円から6000万円に跳ね上がったと聞きます。その時代に辞めた人たちがいちばん幸せでしょう」

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OBの言葉とは反対に、パナソニック現役社員の声色は明るくない。

「パナソニックは'14年から、退職金制度が確定拠出年金に移行しました。要は社員が自分で責任を持って退職金の原資を運用してください、ということですが、結局のところ自分が何歳まで勤めたらいくらもらえるのか、不透明です。

同業のソニーも最近確定拠出年金になりましたが、ソニー社員と話すと『年金まで自己責任なんて、会社に見捨てられたようだ』と言う人もいる。今の時代、退職金が出るだけありがたいのかもしれませんけどね」

これまで見てきたように、世間では退職金が貰えないことも当たり前になる一方、大手企業OBは羨ましい限りの一時金や、終身保障の年金を手にし、悠々自適の老後生活をスタートさせている。

「汗水流して会社に30年以上勤めあげたのは同じなのに、退職金の額はまるで違う。

暮らしていけるかどうかの瀬戸際の人もいれば、『老後2000万円不足問題』は自分に関係ないと思う人もいるわけです。

リタイア後の生活の『格差』は、現役時代からすでに積みあがっていたかと思うと、空しく感じるところはあるかもしれません」(前出・森永氏)

いまさら埋めようのない格差が、老後社会には広がっている。

「週刊現代」2019年8月10日・17日合併号より

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