お前が打たなきゃ誰かが打つ。カープ黄金期を予感させる圧倒的な選手層

お前が打たなきゃ誰かが打つ。カープ黄金期を予感させる圧倒的な選手層

  • Sportiva
  • 更新日:2017/09/19

「お前が打たなきゃ誰が打つ」――野球の応援ではおなじみのフレーズだが、今年の広島にはこれが当てはまらなかった。

シーズン終盤、不動の4番だった鈴木誠也が故障で離脱したが、代わって4番を任された松山竜平がきっちり穴を埋め、菊池涼介、丸佳浩に当たりが止まった9月前半には、岩本貴裕が4割台をマークし、安部友裕も3割台後半を記録。「お前が打たなきゃ誰か打つ」という状態だった。

投手陣も、黒田博樹が引退し、昨年の沢村賞投手のクリス・ジョンソンが開幕直後に咽頭炎で長期離脱した先発では、岡田明丈と薮田和樹が2ケタ到達の大躍進。リリーフでも中﨑翔太の不調で不在となった抑えに今村猛が入り、中継ぎが苦しい時期には九里亜蓮が先発からの配置転換で存在感を見せつけた。

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阪神を3-2で下し、37年ぶりのリーグ連覇を達成した広島

誰かがいなくなっても代わりの選手が台頭する。これはカープの伝統でもある。特にFA制度が施行された1990年代以降は、その傾向が強い。

たとえば、95年に前田智徳がアキレス腱断裂で長期離脱した際には、野村謙二郎がトリプルスリーの活躍を見せた。その野村や前田、緒方孝市など、ケガ人が続出し、江藤智がFAで巨人に移籍した2000年には、金本知憲がトリプルスリーを達成。また、金本が阪神に移籍すれば新井貴浩が台頭し、その新井もチームを去ったときには栗原健太がその穴を埋めた。

さらに、黒田がメジャー移籍した08年に前田健太が先発ローテーションに定着して9勝をマーク。2年後の2010年には15勝を挙げるなど、投手三冠を獲得しエースに君臨した。その前田もメジャーに移籍した昨年は、野村祐輔が16勝で最多勝に輝き、チームも25年ぶりのリーグ優勝を果たしたのは記憶に新しいところだ。

かつては新陳代謝があってもチームは低迷期を抜け出せずにいたが、近年は新戦力の台頭が結果につながっている。その理由は、選手層の厚さにある。

今季でいえば、鈴木誠也が天才と評する西川龍馬、外野ではシーズン途中に育成から支配下登録され、驚異的な長打力を発揮したバティスタ。また、胃がん治療で離脱した赤松真人に代わる代走・守備固め要員としてその穴を埋めた野間峻祥など、多彩な顔ぶれが揃う。

投手陣も中村祐太がローテーション定着のきっかけをつかみ、ルーキーの加藤拓也や床田寛樹もスポット的だがピンポイントで好投。リリーフでは故障から復活した中田廉や一岡竜司などの活躍も見事だった。

主力選手の不在が致命傷にならない戦力は、安定した戦いを可能にした。開幕2戦目から10連勝し、交流戦後からは独走態勢に入り、終盤の勝負どころで9連勝と、まさに理想的ともいえる展開で連覇を果たしたが、必ずしも順風満帆のシーズンではなかった。

昨シーズンは1度もなかった同一カード3連敗が3度もあり、その内容もシーズンの行方を左右しかねないダメージの大きいものだった。

5月のゴールデンウィーク終盤に甲子園で阪神に3連敗を喫したカードでは、その2戦目に最大9点差をひっくり返される逆転負けを喫した。緒方孝市監督が「自分の責任。絶対に取らないといけないゲームだった」と語ったように、まさかの敗戦で、4月8日から守り続けた首位の座を明け渡してしまった。

さらに5月19日からは、ナゴヤドームで最下位に低迷していた中日に3連敗。初戦でジェイ・ジャクソンが中日の主砲、ダヤン・ビシエドにサヨナラ弾を浴び、2戦目は守備陣がミスを連発。

そして8月22日からのDeNA戦の3連敗は、独走状態にあったチームに冷や水を浴びせられるような内容だった。

初戦に筒香嘉智、ホセ・ロペス、宮﨑敏郎の3者連続本塁打でサヨナラ負けを喫すると、2戦目は9回二死から中﨑がロペスに同点本塁打を打たれ、延長で中田が打たれてサヨナラ負け。3戦目も同点で迎えた9回裏、二死二塁の場面で倉本寿彦の二遊間へ飛んだ小フライがワンバウンドで処理しようとした菊池の前でイレギュラーする不運なサヨナラ打となり、リーグワーストタイ記録となる3試合連続サヨナラ負け。

大型連敗につながりかねない同一カード3連敗のあと、大崩れしなかったのが今年の広島の強さと言えるのかもしれない。そしてこの窮地を救ったのが、7割を超えるホームゲームでの驚異的な勝率の高さだ。

5月の阪神3連敗のあと、神宮でもヤクルトに1勝2敗と負け越したが、地元に戻って巨人、DeNAとの2カードを4勝1敗で乗り切り、立て直しに成功した。横浜での悪夢の3試合連続サヨナラ負けのあとも、マツダスタジアムに帰って中日に連勝し、暗雲が立ち込めかけたⅤロードに再び灯をともした。

今季、広島は同一カード3連勝が10度あるが、その半分の5カードがホームでのもので、特に中日にはマツダスタジアムで10勝2敗と圧倒した。

また、首位攻防戦となった9月5日からの阪神3連戦は、初戦を安部のサヨナラ2ランでマジック12を点灯させると、2戦目は延長戦でサヨナラ勝ちし、3戦目も安部の逆転打で事実上、リーグ連覇を確実なものとした。

「優勝するチームは、連敗は4まで」とは、90年代にヤクルト黄金期を築いた名将・野村克也氏の言葉だが、今季の広島はそれを実践した。4月と5月に4連敗を一度ずつ記録したが、交流戦以降は一度もなし。

ダメージが残りそうな連敗を喫しても引きずらなかったのは、緒方監督をはじめとして、新井やタナキクマル(田中広輔、菊池涼介、丸佳浩)らの主力が呪文のように口にしてきた「一戦一線を戦うだけ」の信念を貫いたからだ。

9点差を逆転された阪神戦の試合後、リリーフで打たれた中田は「もう試合は終わった。次に向けて必死で準備する」と悔しさをにじませながらも前を向いた。DeNA戦のサヨナラ3連敗の後には緒方監督が「やっている野球は続けていくし、変えるつもりはない」とコメントした。

優勝マジックは点灯と消滅を繰り返したが、一喜一憂することなく、目の前の試合に全力を尽くした。1日1日の積み重ねが、いつの間にか頂点へとつながっていく――そうした昨年から変わらない姿勢が、37年ぶりの連覇へとつながったのだ。

紆余曲折を経て頂点へと上り詰めたチームの次なる目標は、昨年成し遂げられなかった日本一しかない。

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