中国に出現した「未来都市」深センで見た驚くべき光景

中国に出現した「未来都市」深センで見た驚くべき光景

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/02/12
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1980年、人口3万人の漁村・深圳が中国初の経済特区になった。以来38年、隣接する香港を凌駕する「アジアのシリコンバレー」に成長した。世界最先端都市に飛び、深圳のいまを現地ルポした。

秋葉原の30倍の電子街

そこはまさしく、中国人の無限の欲望の大噴火が起こっていた。

「アジアのシリコンバレー」「世界最先端都市」――最近、深圳に冠せられる形容詞は多い。今回、香港に隣接するこの人口1200万の経済特区を訪れてみると、格段の進化を遂げていた。

深圳中心部の福田区の一角を占める「華強北」。もともとは秋葉原を模して作ったが、いまや秋葉原の30倍という世界最大の電子商店街に膨張した。ビックカメラやヨドバシカメラの本店が、地平線の彼方まで連なっている感じだ。

だが、秋葉原の家電量販店が一般の個人客を相手にしているのに対し、華強北が相手にするのは、主に中国国内及び世界各地から買い付けに来るバイヤーたちである。

もちろん、個人の観光客が買っても構わないが、あまり親切に対応してもらえないし、値引きもしてくれない。

サウジアラビアから来たバイヤーが、子供向けのIT教育用品の交渉を行っていた。数万個、数十万個単位の交渉だ。成立すれば、その場で代金を支払い、即日、商品がサウジアラビアに向けて発送されるという。

一歩裏通りに入ると、商品を包む段ボール会社、配送会社などがズラリ軒を並べている。いわゆる「深圳スピード」だ。

中国鉄道出版社刊『深圳』('16年版)では、華強北をこう解説している。

〈華強北の前身は、電子・通信・電器製品の部品工場群で、40棟以上あった。'98年に深圳市が華強北の改造に着手し、深圳を代表する商業地域に変身させた。いまでは、携帯電話関連産業の成長のバロメータと言われる。

華強北道は、南北930m、東西1560m、商業区の総面積は約1.45平方キロメートル。

一日の集客量は30万~50万人だ。内部の企業は717社で、電子、電器、通信、時計、アパレル、金飾、銀行、証券、保険、不動産、ホテル業界に集中している。大型デパートも20数店舗ある〉

華強北の店舗群を回っているうちに、'18年1月現在の売れ筋商品が見えてきた。それらは、以下のようなものだった。

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バックミラー・ナビゲーター 500元~(1元≒17.2円、以下同)

ドライバーは運転中、運転席からカーナビとバックミラーを見る。そこで、「2つを同時に見ることはできないか?」という発想から生まれた商品だ。

女性店員が実践してくれた。彼女が横長のバックミラーの左隅に指でタッチすると、バックミラーの中心部が、カーナビの地図に変わった。

店員が、「警察署へ行きたい」と、バックミラーに向かって話しかける。するとバックミラーのスピーカーが女声で、「警察署って、どこの警察署?」と聞き返してきた。

店員は「最寄りの警察署よ」と答える。するとたちどころに、バックミラーの中のカーナビの地図に赤いラインが入り、「この先、200m先を右折してください」と指示してくれた。あとはバックミラーの指示通りに走っていけばよい。

この商品は、Anytek(安尼泰科)という'03年に深圳で創業した会社が作っていた。安尼泰科は、いまや中国最大の車内機器メーカーに成長している。

360度監視カメラ 460元~

同じくAnytekの人気商品で、球状のカメラのスイッチを入れると、360度の風景を撮影してくれる。各国の政府機関などからの注文が多く、日本にも輸出している。

社員のボーナスはベンツ

自撮り用ドローン 1999~6000元

世界のドローン市場でシェア7割を超えるDJI(大疆創業)が開発した自撮り用ドローン。手のひらサイズのドローンを頭上に飛ばし、俯瞰的に撮影してくれる。

DJIは「深圳ユニコーン」(ユニコーンとは時価総額10億ドル以上の非上場企業)の代表格である。'80年生まれの汪滔氏が、'06年に「空飛ぶスマホを創る」との発想から、20人で創業した。

'11年に初のドローン関連商品を発売し、'16年発売の「ファントム4」が、世界で爆発的に売れた。商品はまず英語でリリースを発表し、その後、中国語版や各国語版を出すなど、完全に世界を見据えている。

いまや社員数1万1000人の巨大企業に成長。社員の平均年齢は28歳で、BMWやベンツをボーナスに出すことなどから、「深圳で一番モテる会社」と言われる。

販売代理店は、中国国内に約250社あり、日本でも7社を数える。

このDJIに加え、電気自動車で世界最大手のBYD(比亜迪)、携帯電話で急成長を遂げるファーウェイ(華為)、後述する中国最大のIT企業テンセント(騰訊)などが、「深圳ブランド」の代表格である。

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手巻きピアノ 338元~

長年の一人っ子政策の影響もあって教育熱が高い中国では、電子ピアノが大ブーム。

ところが電子ピアノのネックは、持ち運びができないことだ。そこで鍵盤が手ぬぐいのようになっていて、クルクル巻いて持ち運べる電子ピアノが開発された。

テーブルに手ぬぐいを広げると、その表面にピアノの鍵盤の絵が描いてあって、そこに指を乗せると音が鳴る。手ぬぐいの中のセンサー(音の強弱)と、手ぬぐいの両端に備わった赤外線センサー(指までの距離で音を定める)が作動して、音を発する。

女性店員が無茶苦茶な指使いで『エリーゼのために』を弾いていたが、右手と左手の重奏にも音が対応していた。

球状携帯スピーカー 259元~

拳より一回り小さい球状の2つのスピーカーで、チップをスマホに挿し込んで、スマホで音楽をかける。すると、スピーカーから良質の音楽が聞こえてくる。

その際、歌手が歌う曲ならば、片方のスピーカーから歌が流れ、もう片方のスピーカーからは伴走音が流れる。

他にもユニークな最先端の商品がゴマンとあった。まるでドラえもんのポケットからモノが溢れ出したかのような街である。そして世界のバイヤーたちが、それらの商品を、鵜の目鷹の目で買い漁りに来ているのだ。

アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中東、アフリカ……いろんな国籍のバイヤーを見かけた。

創業者たちの厳しい競争

だが、商品が華強北の表通りにきらびやかに並ぶまでに、裏では多くの「格闘」があった。

華強北にあるビルの中の、投資会社が借り受けた一室。そこには、だだっ広い机が広がっていて、若者たちがパソコンに向かって、熱心に仕事していた。

彼らは同僚ではなく、全員が「創業者」だった。各創業者には、ひと月1000元で、パソコンが置ける狭いスペースと、椅子だけが与えられる。

創業者たちは3ヵ月以内に、自社の商品を営業し、契約を取って来なければならない。3ヵ月経っても華強北で認められなければ、即退場である。

もし周囲の反応がよければ、一つ上の階に「格上げ」され、やや広いスペースが与えられる。かつ投資会社から資金も与えられる。最初の資金供与は10万ドルで、その企業の株式の5~6%を受け取るというのが相場だ。

台湾から来たという若い創業者が、自社製品を見せてくれた。石膏を使って、親指大の小さな肖像をフルカラーで作れる3Dプリンターを開発したのだという。

「深圳に来て1ヵ月余りで、約100台売れました。タイの工場で生産していますが、おかげで注文が相次ぎ、生産が間に合わない状況です」

彼はまもなく、さらに上の階に用意された「個室」に移るという。かつ投資会社は、多額の資金提供を申し出た。

深圳のサクセス・ストーリーを夢見てやってくる人々は2種類に分かれる。何らかの先端技術やユニークなアイデアを持っている創業者と、それを商業化して売り出す投資家だ。どちらも厳しい「目利き」が要求される究極の資本主義の世界だ。

スマホ決済レストラン

華強北で名を挙げた「一軍企業」が越して行く先が、南山区にある「深圳湾創業広場」だ。

'16年の国際特許出願数で世界最大となった企業はZTE(中興通訊)の4123件で、2位はファーウェイの3692件。いずれも深圳の会社だ。特に南山区の国際特許出願数は1万389件に上る(深圳全体で1万9648件)。

深圳湾創業広場は「深圳ソフトウエア産業基地」の中にあって、18棟の高層ビルを含む3.6万平方メートルの広大な地域だ。最終的に完成したのは昨年で、すでに300社以上が入居している。うち7割以上がハイテク企業だ。

管理会社の深圳市投資ホールディングカンパニーは、4500億元もの資金を動かしている。

中国の「IT50強企業」は、すべて深圳湾創業広場に入っている。深圳湾創業投資ビル、深圳湾科学技術生態園、深圳市ソフトウエア産業基地、深圳湾イノベーション科学技術センター、創智ビル、生物医薬産業園……目もくらむような集積地だ。

その中で、ひときわ眩く輝いているツインタワーがあった。中国で10億人以上が利用するWeChatで有名な、テンセントの新たな本社ビルである。

テンセントは、「深圳ブランド」のトップランナーで、昨年末時点の株式時価総額で世界6位に躍り出た(日本企業の最高位は42位のトヨタ)。

そのテンセント本社ビルの1階に、レストラン「超級物種」があった。ランチ時ということもあって、広い店内は、IT企業に勤める若者たちで立錐の余地もないほどだ。

このレストランは、日本のデパ地下のように、各種料理がパックに入れてあり、客は食べたい物を勝手に取っていく。サーモン、タコ、サラダ巻きが計8貫入った39元の寿司セットが人気だった。

ところが、レジ台が店のどこにもない。客はパックにスマホを近づけ、WeChat Payのスマホ決済で支払っていく。そういえば深圳の町で現金を持ち歩いているのは外国人だけである。

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Photo by GettyImages

レストラン奥の海鮮コーナーでは、500gあたり249元もする巨大なカニが、水槽を泳いでいた。そのカニを、若い女性が水槽の前にスマホを翳して、買い上げていった。

カニは3kg以上あって、3万円以上した。彼女は、きっとビジネスで一発当てたのだろう。

テンセント本社ビルの入り口には、巨大なサイコロを立てたようなモニュメントが建っていて、そこには、「跟党一起創業」(共産党とともに創業する)と刻まれていた。そしてロゴの右脇には、中国共産党を示す鎌と槌のマークが入っていた。

グーグルもフェイスブックもツイッターもLINEも共産党政権に禁じられている中国で、IT企業が生きていく苦悩を見た思いがした。

近藤大介(こんどう・だいすけ)
中国や朝鮮半島を中心とするアジア取材をライフワークとする。『大国の暴走』『活中論』など24冊の著書がある。

「週刊現代」2018年2月10日号より

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