クックパッドの「自爆」経営の代償...急成長の立役者追放で株価大暴落

クックパッドの「自爆」経営の代償...急成長の立役者追放で株価大暴落

  • Business Journal
  • 更新日:2016/11/30
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黒字会社の株価が下落し、赤字会社の株価が上昇するという、そんな奇妙な現象が起きた。料理レシピサイトを運営するクックパッド(東証1部上場)と不動産情報サイトを運営するオウチーノ(東証マザーズ上場)の株価である。

クックパッドの業績は好調だ。2016年1~9月期連結決算の売上高は、前年同期比36%増の123億円、純利益は50%増の37億円。運営する料理レシピサイト、クックパッドの有料会員数が増え、同サイトの広告事業も伸びた。連結子会社にした結婚式口コミサイト運営の「みんなのウェディング」が好調だった。

一方、オウチーノの業績は絶不調。16年1~9月期連結決算の売上高は前年同期比20%減の7億6400万円、最終損益は1億4700万円の赤字(前年同期は7500万円の赤字)。不動産サイトへの掲載物件が伸び悩み、赤字経営が続く。8月には子会社がモンゴルの建設業者と結んだ大型物件の契約で1億6000万円の不良債権が発生した。

ところが、株価は対照的な動きを示す。クックパッドの株価は、好決算にもかかわらず11月14日の終値は975円。1000円割れで推移している。料理レシピ情報サイトが大当たりし、ネットベンチャーともてはやされていた頃のクックパッドの株価は2880円(15年8月17日)と上場来の高値を更新した。それが今や、株価は3分の1に下落した。

対するオウチーノの株価は暴騰中。11月7日に7営業日連続で続伸した。一時、前営業日比1003円高(50%高)の3005円となり、年初来の高値をつけた。10月12日の年初来安値の793円から実に3.8倍になった。

10月28日、クックパッド前社長の穐田誉輝氏がオウチーノを買収すると発表したことをきっかけに買いが集まった。穐田氏の経営手腕は高く評価されており、経営改革への期待からオウチーノ株が買われた。

●クックパッド前社長が14億円を投じ買収

住宅・不動産サイトを運営するオウチーノは10月28日、穐田氏がTOB(株式公開買い付け)で同社を買収すると発表した。TOBの期間は10月31日から12月2日まで。買い付け額の1株807円は28日の終値802円を1%上回る。オウチーノはTOBに賛同した。

オウチーノの筆頭株主で創業者の井端純一社長は保有する22%分の株式を売却し、任期満了となる17年3月29日の株主総会をもって退任する。穐田氏はTOBと第三者割当増資の引き受けを合わせて、オウチーノの株式を最大66%保有することになる。穐田氏が投じる費用は14億円に上る。

第三者割当増資は、穐田氏とともにクックパッドの前執行役員も引き受ける。前執行役員は堀口育代氏、林展宏氏、菅間淳氏、舘野祐一氏の4人。TOB完了後、オウチーノの顧問に就任する。

穐田氏は8月25日、保有していたクックパッドの株式の大半を売却し、議決権比率は14.73%から2.40%に低下している。クックパッド株式の売却代金を今回の買収資金に充てる。

オウチーノは投資目的の出資と説明。穐田氏がオウチーノの経営に参画する予定はないとしている。ただ、17年3月29日の株主総会で井端社長が退任し、経営陣は一新される。穐田氏とクックパッドの4人の前執行役員で構成される経営チームが経営を担うことになる。その期待からオウチーノ株が買われたのだ。

●ベンチャー企業を2社上場させた手腕

穐田氏は、青山学院大学経済学部卒。ベンチャーキャピタル大手の日本合同ファイナンス(現・ジャフコ)を経て独立。99年にベンチャー投資を行うアイシービーを設立した。

価格比較サイト・価格.comを運営するカカクコムに出資、2001年に同社の社長に就いた。カカクコムは03年に東証マザーズ、05年東証1部に上場した。上場という使命を果たしたことで穐田氏は06年に社長を退いた。カカクコムは、価格比較サイトとグルメサイト・食べログを2本柱に急成長。16年3月期の売上高は412億円、純利益131億円をあげる高収益企業に育った。

次に穐田氏が投資したのがクックパッド。創業者の佐野陽光氏は慶應義塾大学環境情報学部卒。97年10月、コイン(現・クックパッド)を設立、料理レシピの検索・投稿サイトを立ち上げた。主婦たちが自分でつくった料理のレシピを投稿するサイトとして人気を集めた。だが、ビジネスとして採算が取れるかどうかは別の問題。

クックパッドは創業後8年間営業赤字が続き大苦戦していた。このとき、穐田氏が創業間もないベンチャー企業に資金を提供するエンジェルとして登場する。ベンチャーキャピタリストとして07年12月、クックパッドに出資、社外取締役に就任した。上場を指南して、09年7月、東証マザーズに上場(11年に東証1部に指定替え)。穐田氏は14.73%を出資する2位の大株主となる。

佐野氏は12年3月、穐田氏を後継社長に指名し、料理レシピサイトを米国に広げるため渡米。穐田氏は時価総額経営を進め、クックパッドは急成長を遂げる。

●レシピサイトは“一発屋”で終わる?

投資家である穐田氏にはレシピサイトに対する思い入れはなかった。入山章栄・早稲田大学ビジネススクール准教授との対談(15年9月25日付「ダイヤモンドオンライン」記事)でこう語っている。

「自分たちはまだ『一発屋芸人』に近いと思っています。(中略)時流を捉えて一度大ヒットすると、あとは営業しながら、しっかり稼ぐ。一度当ると意外に長持ちするな、みたいな(笑)」

「『もっと便利なものができたら(クックパッドは)なくなる』と思ってます。Facebookの料理投稿で充分とか、YouTubeの料理動画で良いじゃんとなれば、それでお終いです」

レシピサイトで食えなくなることに備えて穐田氏はM&A(合併・買収)に打って出る。米国、スペイン、インドネシア、レバノンなどの海外レシピサイトを買収。スーパー特売情報の提供や食材の定期宅配などEC関連、電子書籍のイーブック、子育て支援の日本テクト、結婚式口コミサイトのみんなのウェディングなど、新規分野のM&Aを進めた。

事業の多角化の結果、決算期を変更した15年12月期の連結売上高は147億円(13年3月期の単独決算の売上高は49億円)まで急拡大し、時価総額は7倍以上になった。

だが、レシピと関係ない投資を加速させた穐田氏に対して佐野氏の怒りが爆発。16年3月の定時株主総会後の取締役会で佐野氏は穐田氏を社長から解任した。

一方で株式市場では、カカクコム、クックパッドの2つのネットベンチャーを上場させた穐田氏は高い評価を得ている。穐田氏がV字回復させるとの期待からオウチーノの株価は暴騰した。

逆に、クックパッドを急成長させた立役者である穐田氏を追放した創業者の佐野氏には厳しい評価が下され、クックパッドの株価は下落した。
(文=編集部)

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