金正恩・プーチンの「カラ振り初会談」で見えた、北朝鮮の行く末

金正恩・プーチンの「カラ振り初会談」で見えた、北朝鮮の行く末

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/04/26
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金正恩がロシアに目を向ける理由

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が4月25日、ロシアのウラジオストクを訪れ、プーチン大統領と会談した。両首脳は非核化問題や経済面での連携と協力を確認したが、大きな進展は期待できそうにない。

正恩氏がプーチン氏と会談するのは、これが初めてだ。どちらが先に会談を望んだのか、報道では確認できないが、私は事実上、正恩氏の側とみる。米国のトランプ政権から非核化を迫られて、より苦しい立場に追い込まれているのは北朝鮮であるからだ。

正恩氏は昨年3月、中国を訪れ、習近平国家主席と会談した。冷え切っていた中朝関係を改善し以後、計4回にわたって中朝首脳会談を開き、対米交渉で中国を後ろ盾に付けるのに成功した。だからといって、中国が全面的に北朝鮮を支援してきたわけではない。

そもそも、中国は北朝鮮を完全に信頼していない。北朝鮮が核とミサイルを開発してきたのは、米国に対抗すると同時に、実は「中国の子分という立場から抜け出したい」という秘めた思惑もある。中国はそうと分かっているからこそ、核開発に反対してきた。

加えて、中国は米国と貿易戦争の真っ只中にある。当初は2月末が期限だったが、交渉は難航し、いまや妥協が成立するのは、早くても5月以降とみられている。そんなタイミングで、中国は北朝鮮を露骨に支援して、米国を刺激するのは避けたいはずだ。

正恩氏とすれば、中国に多くを期待できない以上、ロシアに目を向けざるを得ない。私は1年前、正恩氏が初めて中国を訪問した直後、2018年3月30日公開コラムで「中国の次はロシアである」と書いた(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55057?media=gb)。

当時は米中関係がいまほど緊張していなかったが、北朝鮮は米中関係がどうあれ、米国に対抗するために、中国だけでなくロシアも味方につけたい、と考えるのは当然である。実際、外相レベルでは何度も接触し、首脳会談の可能性を探ってきた。

プーチン氏は会談の意思をちらつかせながらも、先送りしてきた。相手を焦らせば焦らすほど、いざ会談となったら有利な立場に立てる、という計算があっただろう。プーチン氏にとって、北朝鮮の地下に眠っている膨大な希少資源は魅力だが、焦る必要はない。

米中対立が激化し、中国が動きにくくなったタイミングを見計らって、プーチン氏はようやく重い腰を上げた。老獪なプーチン氏は正恩氏に自分の価値を見せつけている。だが、ここから先は不透明感が漂っている。

大したことはできない

まず、北朝鮮とロシアはどんな関係にあるのか、確認しておこう。先のコラムでも書いたように、そもそも北朝鮮という国を作ったのは、ロシアの前身であるソ連だった。

正恩氏の祖父である金日成はソ連軍将校として平壌に入り、ソ連が米国に対抗するために、金日成を「建国の父」に仕立て上げた。その金日成は建国から2年後の1950年、無謀にも韓国を攻撃して朝鮮戦争を始め、一時は敗北寸前に陥った。

そのとき義勇軍を送って北朝鮮を守ったのが中国だ。中国は死者30万人とも言われる膨大な犠牲を払った。北朝鮮にとっては、ロシアも中国も切っても切れない関係にある。そんな北朝鮮が中国に続いて、ロシアに救いの手を求めるのは、歴史的必然とも言える。

とはいえ、良くも悪くもロシアが北朝鮮にどれほどの影響力を行使できるのか、といえば、疑問が残る。なにより、貿易関係が発展している、とはとても言えない。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究所、MITメディアラボが運営している経済複雑性観測所(Observatory of Economic Complexity)のデータによれば、北朝鮮のロシア向け輸出は2017年で367万ドル、全体のわずか0.21%にすぎない。中国の15億8600万ドル、比率にして91%とは比較にならない。(https://atlas.media.mit.edu/en/visualize/tree_map/hs92/export/prk/show/all/2017/)。

輸入はどうかといえば、ここでも中国が34億2000万ドル、全体の94%を占めているのに対して、ロシアは7410万ドル、2.2%にとどまっている。つまり、北朝鮮を貿易面で支えているのは圧倒的に中国であって、ロシアはほとんど貢献していない(https://atlas.media.mit.edu/en/visualize/tree_map/hs92/import/prk/show/all/2017/)。

そんな貧弱な実績から考えれば、仮にロシアが国連制裁決議違反のリスクを犯して、北朝鮮を支援しようとしても、そもそも基盤がないので、大したことはできない、という話になる。

この数字は2017年だ。その後、国連制裁が厳しくなったのにつれて、中ロとも北朝鮮との貿易関係は縮小しているだろう。それを考慮すれば、ロシアができる支援は限界的な役割しかない、とみていい。

耐乏生活を続けるしかない

中ロ両国を除くと、北朝鮮の貿易相手国は輸出でガーナなどアフリカ諸国とブラジルなど中南米、あと若干の欧州である。全部合わせても一桁台にすぎない。輸入も似たようなものだが、全体に占める割合はさらに小さい。

結局、経済面で北朝鮮の頼みの綱はなんといっても断然、中国であり、ロシアはほとんど支えにならない。それでも国連の常任理事国だから、マスコミはいまだに大国扱いしているが、そもそもロシアの国内総生産(GDP)は1兆6000億ドル程度にすぎない(https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html)。これは韓国並みである。

逆に言えば、そんなロシアでも頼りにせざるをえないほど、北朝鮮は苦境に陥っている。プーチン氏は「オレのほうだって困っているのに、そんなオレでも頼りにされるとは、まったく愉快な展開だ」くらいに受け止めているのではないか。

ようするに、北朝鮮とロシアの関係は「貧者の弱者同盟」である。そんな両国が米国を相手にして、事態を有利に動かせるか。答えは明らかだ。結局、北朝鮮は国連制裁を前に、ひたすら耐乏生活を続けるしかない。

安倍晋三首相は26日に米国を訪れ、トランプ大統領と会談する。正恩氏をさらに追い詰めるために、何ができるか。日米首脳の作戦会議に注目したい。

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