本当に役立つ情報は有料化へ 重要な経済ニュースはタダでは手に入らない

本当に役立つ情報は有料化へ 重要な経済ニュースはタダでは手に入らない

  • THE PAGE
  • 更新日:2016/12/01
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最近、ネットニュースでも「鍵マーク」のついた有料ニュースが増えている(写真はイメージ、提供:アフロ)

ネット上のニュース配信サービスを巡り、ここ1〜2年、大きな変化が起きつつあります。情報収集をポータルサイトに頼っていると気づきにくいのですが、新聞社が無料で読める記事の配信を縮小しているのです。個人情報などを登録すれば読める記事の本数も、1日あたりの上限がどんどん減らされています。全国紙のサイトを見れば、有料記事であることを示す「鍵マーク」であふれていますし、地方紙では、独自の記事はほとんど掲載していないサイトも少なくありません。

つい数年前まで、新聞社は記事を気前よく無料配信していました。そもそも、ポータルサイトのように他社が配信している記事を集めてネットで配信するキュレーションサービスが発展したのは、新聞記事がタダ同然で手に入ったからです。ところが、この前提が崩れつつあるのです。

「タダで流しても惜しくない記事」とは?

こうした課金化の波を受けやすいのが、実は経済ニュースです。もともと「経済情報はお金にしやすい」というのがマスコミ業界では定説になっています。投資やビジネスに生かせればモトが取れるので、お金を払ってもいいと考える消費者が多いからです。新聞社からすれば、せっかく売れるのだから、ネットにタダで流すのはもったいない、ということになります。このことは、日経新聞の「鍵」だらけのサイトを見ればすぐに理解できるでしょう。同社が電子化で先行したのも偶然ではないのです。

もちろん、だからといってポータルサイトから経済ニュースが消えるわけではありません。ただ、掲載される記事の種類はこれまで以上に偏っていくでしょう。もともとネットでは「見出しをクリックされやすい記事」が多くなりがちですが、これに加えて「タダで流しても惜しくない記事」が増えていくと考えられます。
もちろん、産経新聞のようにほとんどの記事を無料配信している会社もあります。課金制が主流になれば競争相手が少なくなるので、紙媒体を廃止しネットの広告収入だけで経営する会社も出てくるかもしれません。しかし、ポータルサイトがたくさんの有力メディアの中から記事を選ぶことができた時代は終わりを迎える可能性が高いのです。

具体的にはどんな記事でしょう。新製品の紹介など、宣伝色が強い記事もその一つです。企業がマスコミに情報を積極的に提供するので、コストや手間をかけずに記事を書けるからです。

私自身も新聞記者時代に新製品や新サービスについての記事を書いていましたが、企業にとって報じてほしい情報は、自分から取材を申し込まなくても、企業の広報からメールや電話で提供されることが少なくありませんでした。「商品の写真をメールで送ってほしい」などと言えば、すぐに対応してくれます。M&Aなどの企業秘密や不祥事を取材する場合と比べ、労力が天と地ほども違うのです。

新興のニュースサイトの独自記事で、商品紹介が多いのはこのためです。極端に言えば、企業が自社サイトに掲載しているプレスリリースを読んだだけでも記事が書けます。フリーライターが取材を申し込んでも、「あなたは記者クラブに所属していませんよね」などといって冷遇されることもほとんどありません。ですから、今後もこうした記事はいくらでも無料で読めるはずです。

裏返せば、取材にコストや手間がかかる経済情報は、「買って読む」必要があるということです。そして、そうした情報こそが、経済を本当の意味で理解するのに必要なものなのです。

タダでは手に入らない人事情報は今後の企業動向を読み解く鍵が隠されている

例えば、人事関連のニュースはそうした情報の代表といっていいでしょう。前回は、景気変動など経済の「マクロ」の動きについて説明しましたが、人事は企業など「ミクロ」の動きを追ううえで欠かせない要素です。企業の戦略や再編の動きを理解し、先を読むには、技術動向などと並び「人」に注目する必要があるのです。

これは野球やサッカーが好きな人はすぐに理解できるはずです。組織で競うスポーツでは、選手の構成はそのままでも、監督やコーチが代わるだけで、劇的に強くなったり弱くなったりすることがあります。指揮官が打ち出す戦略や戦術、そのキャラクターが選手のモチベーションに与える影響は、チームに決定的な影響を与えるからです。同様に、選手のポジションの変更も戦力を左右します。適材適所に配置できれば、選手一人一人の能力を単純に足し合わせた以上の力を発揮することさえあるのです。

企業や役所などの組織でも、これは同じです。ですから経済記者は、自分の担当企業の人事を常にチェックしています。幹部一人一人の能力や人間関係、働いている人たちのやる気を引き出す仕組みなどの取材に、非常に大きな労力を割いているのです。

こうした取材は、信頼関係がものを言います。技術や経営業績の動向なら、資料やデータを手に入れることができればかなりの部分を把握することができます。しかし、ある人物の性格や哲学を理解しようと思えば、長期にわたって付き合ってみる必要があるからです。そうした取材が組織的にできるのは、現在のところ新聞やテレビといったオールドメディアだけです。

もちろん、そうした「長期の人間関係」が、マイナスに働くこともあります。記者も人間なので、情が移って批判的な記事を書きにくくなったり、客観的な見方ができなくなったりするリスクは存在します。ただ、そうした情報の偏りがあったとしても、新聞に掲載されるトップについての人物評や、人事案の背景説明などは、その組織を理解する上で重要なポイントを大きく外すことが少ないと思います。

「人」の発する言葉を知れば、「企業」のこれからがわかる

いずれにせよ、企業などのミクロ記事を読むときは、「人」の動きに注意を払う必要があります。初心者は株価や決算の数字などの客観データに目が行きがちですが、そうした情報こそ、新聞を読まなくてもネットで簡単に手に入ります。

それが顕著に現れるのが、企業不祥事のニュースです。私は新聞記者時代、銀行担当が長かったため、いわゆる「不良債権」になってしまった会社をたくさん見てきました。業績が悪化して、借りたお金を返せなくなった企業です。その中には、業績悪化の原因が不正会計や、商品の欠陥の隠蔽というケースが少なからずありました。

こうした企業は法的に倒産したとしても組織が消えてなくなるわけではありません。ほかの企業や銀行の支援を受けて再建を目指すことになります。その際、再建がスムーズに進むかどうかは、「人」を見れば、かなり正確に予測することができました。ひとことで言えば、「トップや従業員が正直かどうか」を見ればいいのです。私の経験から言えば、記者会見や、一対一の取材の際、幹部や従業員が嘘をついたり、重要なことを隠したりする企業は、ほぼ例外なく再び問題を起こし、経営が悪化しました。

大企業は何万人という従業員を抱えているので、確率的に言って深刻な不祥事は避けようがありません。必ず何人かは不道徳な人が紛れ込んでいるものだし、仮にそうした人がいなくても、人間である以上はミスを犯すからです。しかし、トップが組織の犯した過ちの責任を自ら背負い、改革に取り組む企業はすぐに立ち直ります。逆に、幹部が責任を押し付け合い、都合の悪い情報を隠蔽する従業員が目立つ組織は、すぐに同じ過ちを繰り返してしまうものなのです。

重要な企業ニュースは企画記事やインタビュー記事の中にある

不祥事に限らず、企業ニュースを読む際には、幹部や従業員の発言や行動についての記述は無視できません。そして、そうした情報が多く含まれているのは、事実を淡々と伝える「雑報」ではなく、企画記事やインタビュー記事です。こうした記事に、内紛を匂わせるような記述が出てきたり、トップの不誠実な発言が引用されていたりするケースは要注意です。中身のない「官僚答弁」が目立つ組織も信用できません。

逆に、幹部が自社の問題点を率直に語り、「自分の言葉」で改革を約束しているような組織は、仮に経営上の問題が生じても深刻な事態には陥らない可能性が高いと思います。アナログに聞こえるかもしれませんが、どんな組織でも結局は人が動かしているということを忘れてはいけません。

そして、こうした記事をたくさん読むには、やはりポータルサイトよりも新聞などの紙媒体の方が向いているのです。取引先や同業他社の動向を知りたいビジネスパーソンや、株式の長期投資をする人は、決算や株価の情報はポータルサイトをはじめとするネットで収集するにしても、お金を出して新聞や経済誌を読む方が合理的ではないでしょうか。

【連載】ネットで経済ニュースを読むのはおやめなさい(報道イノベーション研究所・代表取締役・松林薫)

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