飲食店が潰れない世界をつくる!favyの「サブスク」モデルの真価

飲食店が潰れない世界をつくる!favyの「サブスク」モデルの真価

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/10/18
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「Amazon Prime」や「Apple Music」と同じ仕組みの「飲食店」があるーー。こう聞いて、あなたはうまく想像できるだろうか?

その仕組みとは「サブスク(=サブスクリプション)」、いわゆる定額課金制のことだ。サブスクリプションモデルの飲食店をいくつも手がける企業「favy」に、これからオープンする新店舗の話も含め、そのモデルの大きなメリットを聞いた。

取材・文/黒川なお

潰れやすい飲食店に「潤沢なキャッシュ」を

目標金額300万円に対して、集まった金額は3182万円、達成率は驚異の1060%。しかも、プロジェクトの締切りは10月30日23時59分だから、まだ伸びしろもある。

これは、クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」で8月3日にリリースされたプロジェクトの経過である。プロジェクト名は、「世界でひとつだけ!星付きシェフが『あなた専用のコース』をつくる会員制レストラン」。今秋11月、店名非公開で表参道にグランドオープンする予定だ。

ちなみに、この集金額は「Makuake」に掲載された飲食店プロジェクトの中でも歴代2位である(数字はすべて2018年10月17日13時40分時点)。

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「Makuake」より

注目を集めるこのプロジェクトは、飲食市場に特化してマーケティング支援を行う「favy(ファビー)」が仕掛けた。ビジネスモデルは、定額課金制であるいわゆる「サブスクリプション」。事前に会員を募ることで、年会費と会員権によるキャッシュが潤沢に入るため、ヒト、モノ、カネの流れに見通しを立てることができる。

翌日配達が常に無料という特典が付いた「Amazon Prime(アマゾンプライム)」や、4500万曲が聞き放題の「Apple Music(アップルミュージック)」などが代表的なサービスとして挙げられるだろう。今やサブスクリプションモデルは、私たちの生活にすでに浸透しているといえる。

では、飲食店がサブスクリプションモデルを採用するメリットについて具体的に見ていきたい。詳しくは後述するが、一般的にポイントは以下の4点に集約されるだろう。

1.潤沢なキャッシュが先に入る(初めからキャッシュフローが安定する)
2.食材の廃棄ロスがない(食材に原価を掛けられる)
3.会員に対してきめ細やかなサービスが提供できる(LTV《Life Time Value:顧客生涯価値》が向上する)
4.会員が来店する動機が明確(集客しやすい)

まず1つ目だが、店の賃料や物件の購入、設備投資、人件費、仕入れなど、飲食店はオープン前から何かと資金がかさむ。オープン後も、日々の客足や仕入れなどに見通しを立てるのが難しいというのが定説だ。開店3年で7割の店が潰れ、経常利益も2%から4%が相場の非常に厳しい世界である。IT化も遅れており、課題は多い。

しかし、同モデルを導入することで、本来は資金が出ていく一方であるオープン前の店の経済的苦境が、一挙に解消する。最初から潤沢なキャッシュが手に入りキャッシュフローが安定するため、店の経営を軌道に乗せやすいのだ。

favyは、すでに有名な焼肉店「29ON(ニクオン)」、コーヒースタンド「coffee mafia(コーヒーマフィア)」など、「会員制」「定額課金制」飲食店の先駆けとして、自社でもいくつか店舗を運営しているが、このビジネスモデルは会員側のメリットも大きいようだ。

1万5000円で3万円クラスの料理を提供できるワケ

食材の廃棄ロスがない。

これは、飲食店がサブスクリプションモデルを導入するメリットとして非常に大きい。今秋オープンする表参道のレストランでは、食材の原価率を約20%も底上げすることができるという。

現場の声を聞いてみた。

「会員制と高価格設定により、料理の原価にお金を掛けることができます。これは残念ながら、高級レストランといわれる店でもなかなか出来ないことなのです。利益を出すために、原価を極力抑えるのが一般的ですから。

けれども、favyであれば、お客様に高原価の料理を召し上がっていただくことができる。例えば1万5000円払うなら、一般的な高級レストランで3万円払って出てくるレベルの料理を楽しむことができます。これがお客様にとってもシェフにとっても嬉しい。みんながハッピーになる好循環が生まれます」

こう話すのは、これまで名だたる高級レストランを渡り歩き、今夏同社に入社したシェフの佐藤道広さん。シェフとして関わった店を3店舗計5回、星付きレストランに輝かせてきた実績がある。

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佐藤道広シェフ

「それに、サブスクリプションモデルを取ることで、お客様一人ひとりに合わせて『オーダーメイドで料理を提供する』ということが実現できます。6月に社長の高梨から打診があり、話をするうちに、favyなら面白いことができそうだと思い切って転職を決めました」

「初めから常連」になれる仕組み

お客様第一主義でサービスを提供する。

言うのは簡単だが、名の知れた高級店でも実際はなかなか難しいのが現実のようである。

「ある高級レストランで働いていたときのことです。私のコース料理を気に入って、3日に1度来店くださるお客様がいらっしゃいました。けれども、店のコースメニューが代わるのは季節毎に1度。毎回同じコースをお出しするたびに、『そのうち飽きられるんじゃないか』という不安に駆られました。そんなとき、普段とは違う一品を加えてみたんです。そうしたら、その常連のお客様がとっても喜んでくださった。このとき心底、お客様それぞれに合った料理を提供したいという強い思いが湧いてきました」

「お客様によって食べたい料理も、思いも、それぞれ違います。ところが、これまでの店のシステムでは、常連のお客様に対しても『ちょっとしたサービス』をするのがせいぜい。お客様一人ひとりに細やかに対応するのに、シェフとしての限界を感じたり、面白みに行き詰まっていました」

そんなとき、佐藤さんが出会ったのがfavyだった。同社のビジョンは「飲食店が簡単に潰れない世界を創る」こと。今までになかったビジネスモデルで業界に改革を起こす。その姿勢に、佐藤さんは共感し惹かれたという。

「上下関係のないフラットな組織で、とにかく決断が早い。それに、自発性を何より大切にする社風で、これまでいた組織とはまったく勝手が違いました。自分が本気でやりたいことは責任を持ってやってみろ、とチャレンジさせてくれる。おかげで、会員制レストランのプロジェクトも、7月にコンテンツを作り始めて1か月ほどでスピーディにリリースまでこぎ着くことができました」

そういって佐藤さんは驚きを隠さない。

Makuakeのプロジェクトでは、会員1人ひとりに対応した「食のプロフィール」をベースに、「あなた専用のコース」を作るという。

「食のプロフィール」とは、会員に事前に取るアンケートから得る、客の好みやプライベートな予定・事情などが網羅されたデータベースを指す。開店後は、会員が来店した際の細かなデータも蓄積され、より精巧な個人プロフィールが構築される予定だ。

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「限りなくお客様の希望に添える仕組みになっているので、初めてのお客様でもまるで常連のお客様にするように、私たちは料理や接客などのサービスを提供することができます。これは料理人としても幸せですが、一歩踏み込んだサービスを受けられるという意味で、お客様にとっても『初めから常連』のメリットは大きいのではないでしょうか」

favyが手掛ける飲食店では、「ずっと満席にすること」ではなく、「ずっと会員が満足しつづけること」が目的である。目的が明確なので、「会員との密なコミュニケーションを通して、コストパフォーマンスの非常に高い料理を提供する」というように、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を向上させる具体的施策にブレることなく注力できる。

また、ファンになった会員が知り合いに声がけをしてくれたり、「会員費を払っているから元を取らなければ」と来店する動機付けも明確にあるため、サブスクリプションは集客面でのメリットも大きいようだ。

「会員制+データドリブン」で長くヒットさせる

自前でデータドリブン(効果測定などで得たデータを分析、意思決定などに役立てること)できる。サブスクリプションモデルを導入する他社とfavyが大きく違うのは、ここではないだろうか。

同社は、運営する全店で顧客データをとることを重視しているというが、ここまでは他社でもきっとやれる。問題は、蓄積したデータをどのように活かすかだ。データを分析し、マーケティングに活かすべく外注するならば、経営に余裕がない飲食店にとってはコストがかさんで負担が大きい。しかし、favyはもともとがマーケティング会社。データドリブンは朝飯前である。

例えば「29ON」は、肉と日本酒のペアリングがウリの店だが、リピーターが多くコアなファンが付いている。そのため注文データを詳しく分析し、顧客に飽きられることなく足繫く通い続けてもらうべく、メニュー開発やイベントの企画・集客などマーケティングに細やかに活かしている。これがfavy最大の強みといえる。

「データの扱いに不慣れな店や会社だと、自前でデータドリブンするのはなかなか厳しいかもしれません。でもだからこそ、私たちが築いた仕組みを外に共有し、横展開していく意味もあるのではないでしょうか」

同社でマーケティングを担当する石田龍之介さんはそう話す。favyのビジョンは「飲食店が簡単に潰れない世界を創る」こと。自社で磨き上げたサブスクリプションモデルは今後、外にどんどん展開し、他店の支援に活かしていきたいという。

「マーケティング会社が飲食店をやり始めたのも、一つの実証実験を行うためです。サブスクリプションは飲食業界との相性も良いと思っているからこそ、まずは自分たちでやってみる。29ONやcoffee mafia、秋にオープンする表参道のレストランすべてが、マーケティングの実証店舗だと考えています」

と石田さん。ヒト、モノ、カネ、すべての資源において「見通しを立てられる」ことで、経営分析がしやすくなる。これがサブスクリプションモデルの最大のメリットであるが、そこにデータドリブンが加われば、飲食店経営を「見通す力」はさらに洗練されていくに違いない。

最後に、シェフの佐藤さんに新しい店への抱負を聞いた。

「飲食業界は、とにかく『長くヒットする店』を作るのが難しいんです。私自身、料理は美味しく接客も良いのにお客様が入っていない、という他店の事例を数多く見てきました。

今度オープンするレストランは、お客様ごとに料理を細やかに変える必要があるので正直大変でしょうね。不安もありますが、『皆さまを常連さんのようにもてなす』という取り組みを早くやりたい。お客様に長く愛されて、来店し続けてもらう店を作る。その挑戦に、今はとにかくワクワクしています」

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