クレーム対応のスペシャリストに聞く「悪質なクレーマーの特徴と対処法」

クレーム対応のスペシャリストに聞く「悪質なクレーマーの特徴と対処法」

  • @DIME
  • 更新日:2017/08/12

「お客様は神様です」ーー演歌歌手、三波春夫の言葉というのは有名な話だ。しかし、三波春夫オフィシャルサイトによると、本人の真意とは違う意味に捉えられたり使われたりしているという。三波春夫にとっての「お客様」とは聴衆・オーディエンスのことで、演者と客席にいるお客との形の中から生まれたフレーズ。商店や飲食店の客、営業先のクライアントのことではないと断言している。

しかし、この言葉の真意を無視し、立場が上にあることを利用して従業員に土下座を強要したり脅したりして、自分の言い分を通そうとする悪質なクレーマーが存在し、社会問題になっている。サービス業を営む人であれば、悪質クレーマーに悩まされた経験は一度や二度ではないだろう。悪質クレーマーにうまく対応するには、どのようにしたらいいだろうか。

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大阪府警OBで元刑事の経験を生かし、多くのトラブルや悪質クレームを解決しているクレーム対応コンサルタントである援川 聡氏。リアルタイムで企業をサポートするほか、講演や執筆活動を通して悪質クレーマーへの対処法を広く一般に伝授している。悪質クレーマーとはどんな人で、実際にどのように対処すべきかを援川氏に聞いてみた。

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援川氏の著書「理不尽な人に克つ方法」(小学館新書)。一見普通の人が理不尽な悪質モンスターに変わってしまう現状を示し、その対処法を伝授している。

■ごく普通の人が悪質クレーマーになる時代

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悪質クレーマーといえば、強面の男性が大声で従業員を恫喝する姿を思い浮かべるかもしれないが、援川氏によるとこれは古いイメージだそうだ。今、多いのは「本当に普通の一般的な人」で、「なかなか納得してくれない、面倒なお客さん」だそうだ。

例えば、数年前、パンやケーキに髪の毛が入っているというクレームを2000件以上つけて詐欺罪で捕まった女性がいる。「やり取りを録音してSNSに流す」と脅し、自分の理不尽な要求を押し通した彼女は、前科も何もない普通の40代の女性だった。こうした普通の人が、プロのようなテクニックで企業を怯えさせるほどのモンスタークレーマーになったケースがあるという。

また、最近は退職した年配のクレーマーが増えているという。学校の校長、教師たちを悩ませているのは、孫を持つ「団塊おじいちゃん」だ。彼らは仕事人間で子どもや家庭を顧みなかったという負い目がある一方、今は時間が有り余っていて、「孫は自分が守るという意識」が強い。校長室に乗り込んで、自分の社会経験を元に延々と正論を語り続けるという。

援川氏は刑事として多くの人を取り調べ、転職後は20年以上、悪質クレーマーたちとやり取りしてきた経験上、こういう人たちは「もともとは悪質クレーマーではない」と断言する。

では、彼らはどうして悪質クレーマーになってしまったのか。援川氏は、世間にあるさまざまな不安から来る心の闇、寂しさが原因だろうと分析している。

前述の40代の女性はバブル時代に青春を過ごした人だ。しかし年齢を重ねるうちに関心を持たれなくなり、世間から取り残されてしまった。そんな状態でクレームをつけたとき、相手の親身な対応が嬉しく、味をしめてしまったのだろう。彼女は独身だったが、家庭の主婦であっても、家庭を顧みない夫、言うことを聞かない子どもに失望してしまうこともある。

退職後の年配者は、「自分の存在を他人に認めてほしいが、ちっとも認めてもらえない。後輩に愚痴を聞いてもらおうとしても、忙しい現役世代からは敬遠される」(援川氏)。その満たされない思いの代償を従業員や教師に求めていたのだろう。

「今の人は、将来や環境への不安、ご近所のトラブル、セクハラ、パワハラなど、さまざまな不安のガスの溜まった風船のような状態で社会生活を営んでいる状態。きっかがあると破裂して、何をしでかすか分かりません」(援川氏)

私もあなたも、誰でも悪質クレーマーになりえる。そんな時代に生きているということを、改めて認識しなくてはいけないと援川氏は指摘する。

■悪質クレームに対処する3つの方法

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ごく普通の人が悪質クレーマーになると、どのような態度で何を要求してくるのだろうか。その具体的な事例と対処法を援川氏に教えてもらった。

1、長時間のクレームには時間を切る勇気を持つ

品質管理部門の役員まで出世したが、現在は退職し悠々自適の毎日を送るAさん。生活にはなんら支障はない。しかし、毎日やることがなく、話を聞いてくれる人もいない。

そんなAさんが友人の見舞いをきっかけに病院にやってきて、自分が気づいたことを延々と語る。品質管理をしてきたので、よく気がつき、若い職員や受付に「これはダメ、こうした方がいい」という“正当な”アドバイスをする。お礼をいわれたところ病みつきになり、毎日のようにやってきては、あらゆることを指摘し始めた。言っていることは正論だが、毎日対応する方はたまったものではない。

「お金のためではない、世のため人のためにと言ってくる水戸黄門気取りの人がたくさん世の中にあふれている。超面倒くさい人」(援川氏)だ。彼らのキメ台詞が「そんな対応じゃ納得できない」というもの。

こういった面倒な指摘に対して援川氏は「時間の観念を持つように」とアドバイスする。会話やクレームが長時間になる前に、

「貴重なお話をありがとうございます。でも、私ひとりで聞いても意味がないですし、次の患者さん(打ち合わせ/仕事/予定)が待っています。行かなくてはいけないので、一度、ご提案を持ち帰らせてもらいます」と打ち切ることが大切だという。

あるいは、

「アンケート用紙がありますので、ここに書いていただけますか」といえるように、アンケート用紙を持ち歩くようにとも提案する。

もっとシビアなクレームで長時間拘束され、帰りたいといったのに帰らせてもらえなかった場合は監禁罪になることもあり、そうなれば警察の案件だ。相手が怖い、帰るといえる雰囲気ではないという状況でも、勇気をもって会話を切ることが大切だ。

2、面倒な人ほど落ち着いた「ギブアップ・トーク」

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「責任者を出せ!」「今すぐお詫びに来い」「誠意を見せろ!」という悪質クレーマーの常套句には、落ち着いて、立ち向かわずに、土俵に上がらずに上手にかわして、相手に無理だと分からせる。これを「ギブアップ・トーク」という。

「今すぐ来いといわれても無理です」
「今すぐ答えを出せといわれても無理です」
「異物混入は企業にとっては重大で、大切なこと。しかも難しいことです。過失の度合いなどいろんな要点があり、今すぐ誠意を見せるとか責任を取ることは難しいのでできません」
「大切なことだから、この場で/電話で答えることはできません」
「しっかりと検査し、協議した上で返事をさせてもらいます」

こういって無理だと分からせ、責任をもって答えるためにクレーマーの名前と連絡先を聞く。責任者を出せ、上司を出せと言われても、「私が責任者で、私が責任をもって答える」という。社長を出せといわれても、「それを断って何も問題ない」と援川氏はいう。

3、電話での怒鳴り声や金切り声には自分で音量調整を

怒鳴り声、金切り声は電話でも恐ろしく感じるものだ。その場合は「音量調整をする」。つまり、受話器を耳から離す。受話器を置いても構わないと援川氏はいう。

「クレーマーに言葉尻を捕まえられるよりは、沈黙の方が金。相手の話を聞く方にまわり、答えるのは2割くらいでいい。『聞いているのか!』といわれたら、受話器を取り上げて『聞いております』と出る。『何で答えないのか!』と聞かれたら、『難しいことなので、今すぐには対応できません』と答えればいい(援川氏)。

■正当な要求か不当な要求かの分岐点を決めて対応を変える

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援川氏は、クレーム対応の流れをスキーのジャンプに例えている。まず、初期対応は「低姿勢」だ。

「どんなに顔が怖くても、プロのクレーマーらしくても、お客様はお客様。低い姿勢で、先入観を持たずにていねいに対応します」(援川氏)

次は、足が付かないグレーゾーンの「見極め段階」だ。相手の感情が不安定で対応が難しく、相手がどんな人物なのか、何を要求しているのか分からないから不安だ。

「最近のクレーマー対応はこの段階が多い。事実や要求を把握し、見極める作業が必要ですが、まだ相手はお客様として対応します」(援川氏)

これだけは譲れないという「K点」を超えた場合は、不当な要求として対応を変える。だから、このK点をどこにするか決めておくことが大切だ。納得してくれないお客に対しては理論武装も必要となる。

「『納得してもらえないのは残念ですが、そこまでの対応はできません』『お気持ちはわかりますが、そこまでの対応はできません。どうぞご理解ください』『ご寛容ください』といいます。もちろん相手は、理解できない、納得できないといってきますが、それでも『今すぐ対応はできません、どうかご理解ください』と、冷静に、淡々と伝えるようにします」(援川氏)

スピーディに対応しなくてはいけないが、スピード解決は禁物だ。

また、「お詫び」と「謝罪」は違う。間違いを認めたことになるので謝らない方がいい、という認識が広まっているが、初期対応のまずさに対する「お詫び」と、本当のミスに対する「謝罪」を使い分ければいいと援川氏はアドバイスする。

「『不快な思いをさせて申し訳ありません』『お手間をとらせて申し訳ありません』といった、与えてしまった不快な思い、不満、手間をとらせてしまったことに対して、ピンポイントに狙いを定めてお詫びをするのです。謝ったからミスを認めたことにはなりません」(援川氏)

■悪質クレーマーにならないためには

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悪質クレーマーの対処法を知っておくのはもちろん重要だが、今の時代、自分も悪質クレーマーになる可能性がある。悪質クレーマーにならない、適切なクレームのつけ方はあるだろうか。

援川氏は、「自分の名前を名乗って、相手にも名前を聞く」作業をするようにとアドバイスする。多くの悪質クレーマーは自分の名前を名乗らないそうだ。メールやSNSで大胆なクレームをつけられるのは、個人が断定されないからという無責任な安心感があるからだろう。名前を名乗ることで、自分の意見に責任を持ち、正当なクレームであることを示すことができる。

また、本当に言いたいことはアンケート用紙など文書で伝えるのがお勧めだという。文章にする段階で問題が整理されるので、冷静に伝えることができる。なお、筆者は過去に某デパートに2年ほど勤務していたが、アンケート用紙に書かれたお客様の声は非常に重視され、社員間で共有されていた。また、個人的に、スーパーに取り扱ってもらいたい製品をアンケート用紙に書いて投書したところ、取り扱いを始めてもらった経験もある。お客の要望は、とても真面目に、真摯に耳を傾けられているのだ。

不安な現代、悪質クレーマーの被害に遭うことや、自分自身が悪質クレーマーになることもあるかもしれない。そういった時代であることをしっかり認識し、できるだけ心のゆとりを持ってモンスターに変身しないように生活していきたいものだ。

構成/いのうえゆきひろ

文/房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

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