「なぜラグビーW杯日本代表に五郎丸がいないのか?」に答える“2つの理由”

  • 文春オンライン
  • 更新日:2019/10/14

「なぜ、日本代表メンバーに、五郎丸が入っていないのか」

【写真】五郎丸 ゴールライン間際での強烈なタックル

第9回ラグビーW杯日本大会に近づくなか、友人や知人の疑問を何度か耳にした。そのたびに感じたのが、五郎丸歩の存在の大きさである。

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五郎丸歩選手 ©Michael Steele/getty

前回W杯で、またたく間に時の人に

改めて振り返る必要はないかもしれないが、五郎丸の名が世間に知れわたるきっかけが、前回W杯だ。ラグビー日本代表は、初戦で世界屈指の強豪国である南アフリカから劇的な逆転勝ちを果たした。ルーティンの一環として、腕を胸の前で組む独特のポーズからキックを次々と決める五郎丸は、躍進の原動力となる。端正な風貌も注目を集めて、またたく間に時の人になった。

それが、4年前のことである。

五郎丸はいまもヤマハ発動機ジュビロの中心選手として国内のトップリーグで活躍を続けるが、なぜか前回W杯を最後に日本代表に招集されていない。

五郎丸のポジション・フルバックの役割の変化

ポイントとなるのが、五郎丸のポジション、フルバックの役割の変化である。15番を背負うフルバックは、チームの最後尾に位置し、ディフェンスでは最後の砦となり、チャンスでは攻撃にも参加する。

五郎丸がフルバックとしての能力を見せつけたのは、前回W杯のスコットランド戦である。

後半に連続トライを奪われ、日本代表は大会で唯一の黒星を喫したが、前半終了時点で7対12。強豪と接戦を演出したのが、五郎丸のプレーだった。

前半終了間際、スコットランドが猛攻を仕掛けた。ボールがサイドライン際に走り込んできた快足のトミー・シーモアにわたる。観戦する誰もがトライを確信した。しかし――。最短のコースで走りこんできた五郎丸が、ゴールライン間際で強烈なタックルを見舞って、トミー・シーモアを弾き飛ばしたのだ。

まさに最後の砦と呼ぶにふさわしいプレーは、前回W杯のベストタックルのひとつに数えられた。

だが、近年、世界的にラグビーの潮流が変わった。組織的なディフェンスが進化した結果、パスを回すだけで相手ディフェンスを破るのが難しくなり、キックを多用するようになったのだ。

ヘッドコーチ交代にともなって、日本代表の戦術も一変

それは日本代表も例外ではない。エディー・ジョーンズからジェイミー・ジョセフへ。前回W杯後のヘッドコーチ交代にともなって、戦術も一変した。

エディージャパンは、日本代表の強みであるスピードを活かすためにパスとランを中心に攻撃を組み立てた。ロングパスを禁止し、相手を引きつけて短いパスをつなぐ。攻撃のキーマンのひとりが185センチ、100キロの大型フルバック五郎丸だった。

また、エディーはキックに頼らないチーム作りを一貫して進めてきた。陣地を取り戻すロングキックは蹴るが、ボールを高く蹴り上げて相手にプレッシャーをかけるハイパントはほとんど使わなかった。

反面、現ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフは、世界的な主流であるキックを多用する戦術を採用してきた。まず相手の背後にボールを蹴りこんで、アンストラクチャー(ディフェンスの陣形が崩れた状況)をつくり出す。その後、相手の混乱に乗じてボールを奪って攻め込む作戦だ。

キックを主体とした戦術が広まった影響で、フルバックにはこれまで以上に相手のキックを警戒し、広いエリアをカバーする機動力――モビリティが求められるようになる。

1986年生まれの五郎丸は現在33歳。一般的に瞬発力や反射神経、俊敏性は10代半ばから発達して20代半ばでピークを迎えると言われている。スピードの衰えがあらわれる年代である。

同学年の堀江翔太や38歳のトンプソンルークも日本代表に選ばれたが、彼らは経験やフィジカルがより重視されるフォワードのプレーヤーだ。

五郎丸が日本代表から遠ざかったもうひとつの要因

もうひとつ。五郎丸が日本代表から遠ざかった一因には、バックスの選手の台頭もあげられる。

前回W杯で五郎丸がつとめたプレースキッカーは、成長したスタンドオフの田村優が担う。

高いモビリティに加え、加速力あふれるランや自在なステップ、簡単に倒れないボディバランスが魅力の松島幸太朗は、フルバックだけでなく、ウィングなどもこなせるユーティリティープレーヤーだ。

五郎丸は、前回W杯が日本代表として最後の大会と決めていたとも聞く。

いま、彼は知名度を活かして、ラグビーの魅力をメディアで発信し、W杯日本大会の成功を支えようとしているのである。

(山川 徹)

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