ダイハツのムーヴキャンバス、“超ニッチ”戦略に将来性はあるか

ダイハツのムーヴキャンバス、“超ニッチ”戦略に将来性はあるか

  • マイナビニュース
  • 更新日:2016/10/20

●未婚女性と親の同居世帯がターゲット

ダイハツ工業の新型軽自動車「ムーヴキャンバス」は、未婚女性と親の同居世帯を狙って企画されたという。ダイハツはなぜ、こんなにニッチな商品を送り出したのか。そのためにどんなクルマとしたのか。将来性はあるのか。今の日本社会の状況を踏まえながら検証したい。

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ダイハツのムーヴキャンバスは“超ニッチ”なクルマだ

“日本の今”から導き出したクルマづくりの方向性

ムーヴキャンバスの報道関係者向け試乗会に参加して、もっとも印象に残ったのは、クルマそのものよりも、試乗前に行われたプレゼンテーションの内容だった。

話はいきなり、近年の日本女性の行動特性から始まった。社会進出と所得が増加しており、クルマを含めて、世帯内で商品を選ぶ際の決定権も高まっているというのだ。さらに今後も、政府がアベノミクスの成長戦略の一つとして「女性が輝く日本」を掲げていることから、女性の就業率や指導的地位への就任の増加が見込まれているという。

一方で女性の晩婚化が進み、親と同居する30~40歳代の女性は多くなっている。こうした世帯が増えた結果、未婚女性の軽自動車ユーザーのうち、親と同居している人の割合は増加しており、その比率は約8割に上っているそうだ。そういった人の半分以上は、クルマの購入資金を親と折半するか、あるいは全額出してもらい、多少高価であっても気に入った車種を選ぶ傾向が強いという。

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綿密なユーザー分析を披露したダイハツ

そこでダイハツは、クルマの購入時に親が重視する機能や基本性能と、娘が重視するデザインや品質を両立したクルマを送り出せば、買い物から旅行まで母娘が行動を共にし、家庭円満につながるのではないかと考えた。そんな想いで送り出したのがムーヴキャンバスだ。

ダイハツがここまで日本の女性のライフスタイルを調べ上げているとは思わなかった。でも言われてみれば、腑に落ちることがいくつかあった。

見えてくるリアルなマーケット

東京への一極集中が問題となり始めて久しい。しかし総務省が今年発表したデータによると、全国の大都市圏で人口増加率がもっとも高いのは東京23区ではなく、福岡市だ。さらに首都圏にある横浜市より、仙台・札幌・広島・名古屋の増加率が上回っているという数字もある。

首都圏や京阪神圏と比べると、これらの大都市圏は公共交通が発達しておらず、移動のかなりの部分を自家用車で賄う必要がある。しかし、地方のように広い敷地の一軒家に住める世帯は少ないから、ひとり1台という感覚でクルマを選ぶことは難しい。大都市圏で晩婚化がより進行していることも、各種データで明らかになっている。

つまり首都圏や京阪神圏以外の大都市圏では、ダイハツが注目している、30~40歳代の未婚女性と親が同居する世帯が多いことが想像できる。しかも彼女たちは、移動にクルマが必需品という状況でもある。ムーヴキャンバスのマーケットがリアルに見えてくるのだ。

軽自動車だから可能な“割り切った”クルマづくり

ムーヴキャンバスは、ガラパゴスのさらに一歩先を行くニッチな商品と言えるかもしれない。でも逆に、1~1.3Lエンジンを積むコンパクトカーでは、ここまで割り切った作りができないのも事実だ。

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ムーヴキャンバスは軽自動車ならではのクルマだ

コンパクトカーを作る際、メーカーはスケールメリットによってコストダウンを図る傾向が強く、グローバルモデルとして開発することも多い。日本で生産されない車種すらあるぐらいであり、当然ながら我が国の未婚女性と親の同居世帯のことなど、ほとんど眼中にはない。

その点、軽自動車は日本国内専用規格だし、ボディサイズや排気量の上限が決まっているのでプラットフォームやパワートレインは共通化しやすく、パッケージングやデザインの自由度は高まる。こうしたメリットを生かし、きめ細かいニーズに沿ったものづくりを進めているのだ。

ではその結果、ムーヴキャンバスはどんなクルマになったのか。

女性ユーザーを意識した作りに

まずパッケージングは、ムーヴと同等の全高でありながらスライドドアを備え、後席の折り畳みを簡略化した代わりに、座面の下に引き出しを用意するという仕掛けを織り込んだ。

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後部座席は引き出し付き

スタイリングは、最近の日本車としては無駄なプレスラインが少なく、シンプルかつプレーンな造形だ。でもそのままでは商用車っぽく見えてしまう可能性もあるので、ムーヴキャンバスは独特の塗り分けのツートンカラーを用意するとともに、クロームメッキのアクセントをあしらった仕様を用意することで、個性的に見せている。

インテリアも一部にボディカラーを入れたりして、こちらも実用車っぽくない雰囲気を作り出すことができる。ただ前席はかなり前まで伸びたルーフのために上方にある信号が見えにくく、後席は座面下の引き出しも床も黒なので見分けがつきにくいなど、改良を望みたい部分もあった。

女性ユーザーがメインだからなのか、エンジンは自然吸気のみで、ターボはない。背が低いとはいえスライドドアを持つので、車両重量はタントとほぼ同じだ。よって発進や追い越し加速で、もう少し力が欲しいと感じることがあった。もっとも回り方は滑らかなので、回転を上げても気にならなかった。

乗り心地はまろやかで、なかなか快適だ。となるとハンドリングが不安になる人もいるだろうが、車高がタントより低めということもあり、安心してコーナーを通過していくことができた。

スタートダッシュは成功、将来性はいかに

ダイハツは10月11日、発売から約1カ月が経過したムーヴキャンバスの累計受注台数を発表した。月販目標台数5,000台に対し、4倍にあたる2万台の受注を集めているという。主な購買層は20~30歳代の女性とのことで、狙いはドンピシャだったようだ。

しかし今後もこの状況が続くとは限らない。そもそも女性の晩婚化は社会的には問題とされており、積極的な子育て支援を行っている石川県小松市など、いくつかの地方都市では対策を打ち出しているからだ。

しかもダイハツの親会社であるトヨタ自動車が、軽自動車の分野でダイハツの最大のライバルであるスズキと、業務提携に向けた検討を始めたというビッグニュースが発表された。提携が順調に進めば、ダイハツとスズキの軽自動車作りそのものが変わっていくこともあり得る。

ムーヴキャンバスは典型的なマーケットインのクルマである。でもそのマーケットは、さまざまな外的要因で激変する可能性があることもまた確かだ。

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