夫を憎みたくない妻はFBIに相談した。「子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法」

夫を憎みたくない妻はFBIに相談した。「子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法」

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  • 更新日:2018/02/14
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毎月のように、新しい子育て本、教育本が書店に並ぶ。教育熱心な親、子育てに悩む親がそれだけ多いということなのだろう。教育に関してはさまざまな考え方があり、どのような考え方を選ぶかは各家庭の裁量だ。ただ、一つの考え方に固執するよりも、他種多様な手段・方法・考え方を知って選択肢を持っておきたい。正解はないが、結果はあるのが子育て。あなたは親としてどう子どもと向き合いたいだろうか。この連載では、教育関連本を出版した著者の方たちにインタビューしていく。

『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』(ジャンシー・ダン/太田出版)は、過激なタイトルの一冊だ。著者はNYに暮らすフリーライターの女性で同書は翻訳本だが、タイトルは原題のままだという。

(iStock/JackF)

日本でも、「子どもが生まれてから妻は変わってしまった」「出産後、夫に愛を感じなくなってしまった」という夫婦の話は多い。著者・ジャンシーは妊娠中、「出産後に夫と険悪になるなんて、まさか」と思っていたという。ところが実際に育児が始まってからは夫との壮絶な怒鳴り合いを幾度となく経験。疲れ果てた彼女は、夫とこれからも良きパートナーで居続けるためにはお互いがどう変われば良いのかを模索する。出産後の夫婦の闘いと苦悩を綴った前書き部分はやや長いが、夫婦カウンセラーやファイナンシャル・セラピスト、セックス・セラピストから直接聞いたアドバイスは具体的かつ合理的だ。

圧巻は、FBIの元人質解放交渉人のスキルを学びに行くくだり。つまり、家庭内労働に参加しようとしない夫に対して激しい怒りを感じてブチ切れている妻に向き合う夫は、人質をタテに武装する犯人とやり取りする交渉人に似ている。「生理的に興奮している人に、合理的思考を取り戻して」もらうスキルを学ばなければいけないということだ。こう置き換えてみると、何らかの要求をしている犯人(妻)を無視したり、鼻で笑ったり、一方的に自論をまくしたてても事態は好転しないことは明らか。人質交渉人のテクニックは、相手の言葉を言い換えることで理解への姿勢を示したり、最低限の相づちを打ったり、クローズド・クエスチョンではなくオープン・クエスチョンを使うことで、問題への参加意欲を示すことという。

紹介が長くなったが、今回はこの書籍を翻訳した村井理子さんの話を聞いた。双子の男の子を育てる村井さんも、育児中に「夫への憎しみ」を感じた一人だという。

==訳者プロフィール==
村井理子(むらい・りこ)さん 1970年静岡県生まれ。翻訳家。訳書に『ヘンテコピープルUSA』『ローラ・ブッシュ自伝――脚光の舞台裏』『ゼロからトースターを作ってみた結果』『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『7日間で完結!赤ちゃんとママのための「朝までぐっすり睡眠プラン」』『兵士を救え!マル珍軍事研究』など。連載に『村井さんちの生活』(Webでも考える人)、『犬(きみ)がいるから』(Webマガジンあき地)、『村井さんちの田舎ごはん』(COSMOPOLITAN Web)。

タイトルに激怒した男性もいた

――多くの母親にとってはピンとくるタイトルだと思いますが、男性にとってはちょっとツラいかもしれません。

村井:タイトルを見て激怒した男性から文句が来たりもしました。男性も男性で「何をやっても叱られる」とか、そういうフラストレーションが溜まっている中でのこのタイトルなので、イラッと来る方もいるのでしょうね。逆に、奥さんに買ってプレゼントしたという人も何人かいました。

――タイトルは過激ですが、本書の中では育児に関する夫婦間の溝を埋めるために、著者があらゆる専門家からアドバイスを受けていて、そのアドバイスは非常に合理的です。とても参考になると思いました。

村井:そうですね。8割~9割は、日本の夫婦でも使える内容だと思います。出産後の夫婦のセックスレスについてなど、日本の価値観とは違う部分もありますが。

話し合えていたはずの夫婦でも、育児が始まると……

――アメリカは「家族を一番に考える文化」があると言われますし、女性も意見をはっきりと主張するイメージがある。一方で育児に関して妻が夫にフラストレーションを感じやすいのはアメリカでも同じなのか……と思いました。

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『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』(ジャンシー・ダン 著、村井理子 翻訳、太田出版)

村井:アメリカでも、というのもそうですが、著者のジェンシーはフリーライターで、夫のトムは作家。2人はマンハッタンのソーホーにマンションを持っているっていう、いかにも「進んだ」夫婦なんです。お互いに何でも話し合って解決することができると思って結婚して、実際に妊娠9カ月目まではうまくいっていた。でも産んだ瞬間に(夫婦関係が)がくっと崩れてしまう。そういうことがあり得るんですよね。

――知的でユーモアがあり、経済的にも余裕のある夫婦で、同じような働き方をしている。それでも育児となると、負担が妻に偏ってしまう。共働きの場合でも、子どもに睡眠を邪魔される母親の数は父親の3倍という調査が本書では紹介されています。

村井:赤ちゃんの泣き声で女性はすぐに目を覚ますけれど男性はそうではなく、彼らにとっては車のアラームや強風の方が潜在的な脅威であるという調査結果も載っていましたね。訓練だとも思うんですけどね。もし妻が出産後に体を壊すとか入院しなくてはいけない状況であれば、同じように起きないかと言ったら恐らく違うので。睡眠って大きなネックだと思います。

――睡眠不足はメンタルに直結するのでツラいですよね……。

村井:睡眠不足が続くことの恐ろしさっていうのは私も骨身にしみて感じています。子どもが乳幼児の頃は、本当に睡眠を取りづらい。その頃にもし「子ども見てるだけなら疲れないだろ」なんて言われたら、その恨みは一生消えないでしょうね。

アメリカの父親が好むのは「インスタ映え」する育児?

――村井さんの訳者あとがきには、「『家にいるのになぜそんなに疲れるの?』『一日中、一体何をやっていたの?』という、夫からの何気ないひとことが、妻たちの心を引き裂いていることは、もっと広く認知されてもいいはずだ」とあります。

村井:「子育てで疲れたりしないでしょ」って、言われる妻は多いですよね。

――1日でも子どもを1人で見た経験があれば、言えないですね。

村井:最近の若い男性は、育児に参加することを自分のライフスタイルの一つと考えたり、自分の喜びでもあるから奥さんと一緒に育てようっていう意気込みを持っている人が増えていると思います。けれどそれでも、選択的な育児になりがち。たとえばアメリカの場合では、「インスタ映えする育児しからやらない」って言われています。

――インスタ映え育児。

村井:パンケーキを焼いたり、公園に連れて行って遊ばせたりはするけれど、ウンチのついたオムツは替えない。掃除はするけどトイレ掃除はしないとかね。女性の場合、基本的に選択肢はないのだけれど、男性の場合はそうじゃない。女性は24時間いつでも動かなければいけないんだけれど、男性は「8時間寝た後でいいよね」みたいなのがありますよね。

日本で根強い母乳信仰

――「母親にしかできない仕事だから」というような言い方もありますね。

村井:日本の場合は母乳信仰が未だに強いからっていうのもありますね。断乳していない状態だと男性が介入しようにも介入しづらい部分があるだろうし。アメリカの場合は育休からの復帰も早いこともあり、粉ミルクに対する「罪悪感」は全然ない。「授乳授乳って気持ち悪い」って言う人もいますよ。

――日本でそんなことを言ったらすごく非難を浴びそうです。

村井:日本のお母さんでも「気持ち悪い」って思ってる人もいると思いますよ。私の場合、双子だったので最初から完全に粉ミルクでした。双子を母乳で育てるとお母さんがギスギスに痩せてしまうこともあるので。病院の先生も「あなたの母乳より粉ミルクの方が栄養価が高い」って。「粉ミルクを山積みに用意して、哺乳瓶は10本買いなさい(毎回消毒をせずにすむ)」と言われて、その通りにしたら本当に楽でしたね。母乳信仰や自然分娩が一番というプレッシャーは未だに強いですよね。

子どもは24時間「親と一緒」を本当に望んでいる?

――『子どもが産まれても……』の中では、夫婦の時間を楽しむためにたまにはベビーシッターを利用しなさいとか、母親が精神的な安定を保つためにたまには育児や家事を夫に任せたりアウトソーシングしたりして、自分だけの時間を持ちなさいとアドバイスをされる場面もあります。日本だと楽をするために育児をアウトソーシングするという考え方が、非常にタブーだなと感じます。楽をするっていうのは精神的な余裕を持つために必要なことだと思うのですが、ヤフーニュースのコメント欄とかではとても叩かれやすいですね。

村井:発言小町とかね。家事をアウトソーシングすることを「愛情がない」って捉える人が多いことがびっくりですよね。たとえば私は自動で揺れるゆりかごとか、いろいろな器具をレンタルしたんです。でも見る人が見たら、こんなことを機械にやらせるのかって。イチから自分で作った離乳食じゃなきゃダメっていう人もいるし、「お金をかけて育児の手間を省く」ことは、「愛情がない」と置き換えられる。それは無痛分娩や帝王切開はダメで自然分娩がいいって考え方にもつながっていますよね。

――日本はそもそもベビーシッター文化があまりないですけど、夫婦2人の時間ってやはり大事だし、それナシに夫婦仲良くしろ、なんでも話し合え、そうしている人もいるんだからっていうのも、精神論っていうか、なかなか難しい話だなと思います。

村井:本書の中でも、親たちは子どもが「親と一緒にいることを望んでいる」と思っているけれど、子どもたちは「両親のストレスが少なくなってほしい」ことや「両親の徒労が減ってほしい」ことを願っているという研究が紹介されています。

――本当は、「子どもはいつでも親といたい」は、親の思い込みかもしれない。

村井:ただ、日本でシッターに預けたいと願ってもなかなかできない環境にありますよね。どんどん経済的にも厳しくなっているので、2~3時間の余裕が欲しいからといって5~6000円をベビーシッターに払えるかって言ったら、なかなか厳しい。そういう現実的な問題もあるでしょうね。

――確かにそうですね。また、本書では母親が何でもやりすぎる問題、夫の育児に目を光らせる問題も指摘されていますね。それが結果的に母親に負担が偏ることにつながると。

村井:夫が何かやると「それは違うわよ」って否定したり、自分がやった方が早いからって先回りしてやってしまう。妻が「門番」の役割をしてしまうと書かれていますね。ずっとそれを続けていると、育児に関して夫を信頼できないままになってしまいます。

収入差で家事分担を変えるべきではないという考え方

――村井さんが、本書で印象深かったのはどんなところですか?

村井:私がすごく衝撃を受けたのは、家族間の収入差で家事の分担率を変えるべきではないというところ。収入の額にかかわらず、家族全員の作業として家事を分担するという考え方が当たり前に出てくるのですが、日本では今までこういう考え方があったかなと。専業主婦が多かった時代は「あなたが稼いできてくださるから家の中は私が」だったかもしれないけれど、女性が外で働くようになって、そこのバランスがどう変わったのか。

――そういえば、知人女性が「夫が家事をしないって話をしたときに、男友達から『でも旦那さんの方が稼いでるんでしょ』って言われた」と怒っていました。実は彼女の方が夫より収入があったので、決めつけも含めていろいろとひどい。

村井:口に出さないけれどそう思っている人もいるでしょうし、口に出しちゃうぐらい無自覚な価値観をまだ持っているのかもしれないですね。こういう価値観が前提の中で、子どもを産みたいかってなると、正直産みたくないっていうのはすごくありますよね。女性にとっての出産、どの道に行っても厳しく見えてしまう。

――お金も時間も膨大にかかるわけで。

村井:それもそうだし、子どもはかわいいっていう夢のような部分しかクローズアップされないけれど、子どもって本当は全然かわいくないときもあるし、別の人間だから自分の思った通りになんか全然育たない。結婚して子どもを産んだら幸せ、お花畑の世界、というわけでは全くないです。

アメリカと日本のセックス観

――だからこそ、対策は必要ですね。最初にセックスレスの話が出ましたが、日本とアメリカで夫婦間のセックスに関する価値観はどんな違いがあるのでしょうか。

村井:アメリカは日本よりも、夫婦間のセックスは重要だと捉えられていると感じます。たとえば日本では「子どもが生まれてから8年間セックスレス」なんて話はよくありますが、アメリカの場合はあまりこういうことがない。1年間セックスレスが続くと、離婚の理由になってもおかしくない。だからアメリカの方が、真剣にセックスレスを克服しようとするのでしょうね。

――本書では、家族や子育てに関する非常に多種多様な調査結果が紹介されています。

村井:アメリカは家族研究をとても広くやっていると思いますね。たとえば、父親が育児に参加した場合、娘が自由な職業を選ぶ傾向にあるという調査結果が本書の中に出てきますが、日本でこういう調査はすごく少ない。

――日本でもやってほしいですね。

村井:アメリカと同じように多様な調査を行うには、規模の問題もあるので、なかなか難しいかもしれません。 ただ、ここで紹介されているような調査結果に、育児中の日本のお父さんお母さんがもう少し近づける環境があるといいですよね。手軽に海外の調査内容を読めるような場があれば。この本にしても分厚くて、育児中で時間のない方はなかなか手に取りづらいかもしれない。それでも有用な情報が少しでも届く場があればいいなと思いますね。

今回のポイント
・仲良く話し合えていた夫婦でも子育てが始めると関係が変わることがある
・「選択的な家事・育児」でパートナーに負担をかけていないかチェックを
・夫婦が余裕を持つために、家事や育児をアウトソーシングしたり、人に頼ることも必要

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