職場のメンタルヘルス対応で「病名」よりも大切なこと

職場のメンタルヘルス対応で「病名」よりも大切なこと

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  • 更新日:2017/12/06
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いま、多くの会社で「メンタルヘルス対策」が経営の重要課題になっています。みなさんも、「長時間残業」や「パワハラ」などを理由にうつ病を発症したとして、会社が従業員から訴えられた事例や、就業中に自殺者が出てしまった会社が「ブラック企業」として報道された事件を、ニュースなどで目にしたことがあると思います。

「メンタルヘルス対策」が人事・労務に敬遠される3つの理由

一方で、人事労務分野においてメンタルヘルス対策やメンタルヘルス不調者対応は、難しいと敬遠されがちです。その理由は主に3つあります。

理由1.メンタルヘルスの病気は、診断や回復過程の判断が難しい

第一の理由は、メンタルヘルスの病気は病状が客観的な数字で表せず、診断や回復過程の判断が難しいことです。たとえば、同じように気持ちが落ち込んでいる人が医療機関を受診した場合、主治医によって「うつ病」「抑うつ状態」「適応障害」「自律神経失調症」などさまざまな診断名がつけられます。また体調不良の程度や原因は人それぞれであり、同じ治療や対応をすれば同じように良くなるとは限りません。

理由2.「社員が被害者、会社が加害者」という構図が生まれやすい

第二の理由として、メンタルヘルス不調が問題となるケースでは、職場自体にストレス原因がある場合が多く、「メンタルヘルス不調者が被害者、会社が加害者」といった構図が生まれやすいことが挙げられます。従業員も会社も「良い関係性で健康に仕事を続けること」を目標としていても、メンタルヘルス不調者と周囲の上司や同僚との不満がくすぶっているようなケースでは感情的な対立が生じ、お互い協力して現状を改善していくことの障害になってしまいます。

理由3.「適切な就業上の配慮」がケースによって異なる

さらに第三の理由として、メンタルヘルス不調を抱えた従業員に対して会社が取るべき「適切な就業上の配慮」はケースによって異なるため、医学的診断や労務コンプライアンスの専門的知識に乏しい人事労務担当者だけでは、しばしば判断に迷う事態が生じることが挙げられます。

重要なのは「病名」ではなく「どんな困難が生じているか」

しかし、メンタルヘルス不調者対応の原則を理解していれば、どんな難しいケースでも対処は可能です。その原則とは、メンタルヘルス不調の「疾病性」(医学的な病気の有無)と、「事例性」(就業上の配慮の必要性)を分けて考えることです。メンタルヘルス不調は症状や経過が多彩なため、病名や疾病性にとらわれすぎてしまうと対応を見極めることが難しくなります。それに対して事例性を重視し、「あくまでも労務の問題としてとらえる」ことで解決策が見えてきます。つまり「〇〇病だから、何か配慮しなくてはいけない」ではなく、「仕事を続ける上で××に困難が生じているので、どう解決するか一緒に考える」という視点が大切です。

病名がどうあれ、病気そのものは会社が治せるわけではありません。人事労務担当者がすべきことは、出勤状況や仕事のアウトプットを確認し、職場のラインケアを通じてメンタルヘルス不調者をサポートしていくことに尽きるのです。

事務職Aさん(25歳・女性)の事例

こういった視点で対応困難なケースにどうアプローチするか、筆者の経験した事例を検討してみましょう。

Aさんは事務職の25歳女性です。周りに合わせて仕事をするのが苦手で、同僚からは協調性がない人と思われていました。ある時、重要書類を紛失したAさんを上司が厳しく注意したところ、急に落ち込みがちになり、「仕事のストレスによるうつ病で自宅療養を要す」との診断書を提出して、休職に入ってしまいました。上司が連絡しても返事がなく、職場の人たちは皆心配していました。しかしある日同僚がAさんのSNSを覗いてみたところ「休職期間を利用して海外旅行に行ってきました♪」との書き込みがありました。

不適応環境でのみ、抑うつ症状が出現する「現代型うつ病」

この事例はいわゆる「現代型うつ病」の典型例です。通常のうつ病が周囲に気を遣い過ぎる「過剰適応タイプ」の従業員に好発するのに対して、現代型うつ病(「新型うつ病」「非定型うつ病」などとも呼ばれます)は「不適応タイプ」とも言うべき病態であり、低いコミュニケーション能力などを理由として職場に不適応を起こすことが原因となって発症する病気です。職場など、その人にとっての不適応環境のみで抑うつ症状が出現する点が大きな特徴です。

周囲から反感を買い、自らサポートを受けにくい状況を作ってしまうことも

本事例の労務的問題を考えてみましょう。労務能力の低下や勤怠の悪化といった労務的問題は通常のうつ病と同様ですが、現代型うつ病では自分の体調不良をより強く主張する傾向があります。また職場とプライベートで極端に症状が異なることや、自分よりも他人や職場に発症原因を求める傾向がある(他罰的傾向)があることで周囲から反感を買い、自ら適切なサポートを受けにくい状況を作ってしまうことがあります。

うつ病のタイプにかかわらず「業務上適切なサポート」を考える

では、こうしたケースではどのように対応すればよいでしょうか。

まず、Aさんの状態に対して「仮病ではないか」「性格の問題ではないか」と感じてしまう人も少なくないと思います。しかし、現代型うつ病も「本人が抑うつ症状に心から苦しんでいる」という点では通常のうつ病と変わりません。自殺などの社会的リスクも決して低くないので、原則としてはうつ病のタイプにかかわらず業務量の軽減など適切なサポートを考える必要があります。

気の遣いすぎは、回復を阻害してしまう

一方、周囲の人々が気を遣いすぎると「病気のままでいた方が楽だ」「周囲の人のせいで病気になったのだから、気を遣ってもらえるのは当たり前である」と考えるようになってしまい、かえって病気からの回復を阻害してしまうことがあるのが難しいところです(専門用語では「疾病利得が生じる」と言います)。

これらの特徴から、現代型うつ病の従業員に対しては事例性を重視して「配慮すべきところは配慮し、言うべきことは言う」という一貫した対応を心がけることが重要です。

問題点を指摘し、適応的な行動を一緒に考える

このケースでは、Aさんが復職を希望してきたタイミングで人事面接を行いました。その際にSNSの内容を確認し、「休職中の過ごし方は原則自由だが、サポートしてくれる同僚の気持ちも考えて行動するように」と指導しました。また仕事量などの配慮を約束する一方で、Aさんにも改善すべきことがないか考えてもらったところ、「仕事の悩みを誰にも相談できず抱え込んでしまっていた。今後は上司や同僚と積極的にコミュニケーションを取るようにする」といった解決策が出てきました。復職後は毎週上司がAさんと面接して体調を確認するとともに、Aさんにもホウレンソウ(報告、連絡、相談)をしっかり促したところ、職場での人間関係が休職前より改善し、仕事のアウトプットも出るようになりました。

仕事を続ける上での障害を解決し、誰にとっても働きやすい環境を作る

メンタルヘルス不調者が、十分な職務遂行能力を発揮できないことが多かったり、周囲とのトラブルが生じがちなことは事実です。しかし、会社が多くの従業員の集合体である以上、ストレスで調子を崩してしまう従業員が出ることを完全に防ぐことはできませんし、体調不良の従業員を全員排除すれば組織が健全になるわけでもありません。

「メンタルヘルス不調者が健全に仕事を続ける上で問題となっている、具体的な障害の解決方法を考える」こと、つまり事例性に基づいた適切な労務管理を行うことで、メンタルヘルス不調者の職場への適応を高め、誰にとっても働きやすい職場環境を作りましょう。結果的にそれが会社全体の生産性向上に結びつくはずです。

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