中国経済、GDP6%成長とは思えない「ヤバすぎる実態」

中国経済、GDP6%成長とは思えない「ヤバすぎる実態」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/10/23
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「6.0%成長」をどうみるか

先週10月18日、中国国家統計局のスポークスマンを務める毛盛勇(マオ・シェンヨン)国民経済総合統計司長(局長)が、3ヵ月に一度の記者会見を行った。今年第3四半期(7月~9月)の中国の主要経済統計を発表したのである。

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中国国家統計局HPより

毛司長は、まず前置きとして口上を述べた。

「今年の第1四半期から第3四半期まで、国内外のリスクやチャレンジが目に見えて増している複雑な局面において、習近平同志を核心とする党中央の堅強な指導のもとで、各地域各部門は、党中央、国務院の政策決定を真摯に貫徹し、『安定した中にも進展を求める』(穏中求進)という活動の総合的な基調を堅持し、新たな発展の理念を堅持し、供給側構造改革の深化を持続し、(経済下降の)周期調整に逆行する力を強め、安定した就業・金融・貿易・外資・投資・予期を適切に行い、各種政策をコントロールして着実に落ち着かせ、国民経済を総合的に平穏に運行し、経済構造の良化を継続し、民生福祉を不断に改善させた」

中国の政治家や官僚が、このような長い「枕詞」でスピーチを始める時は、だいたい何か悪い知らせを取り繕いたい時と、相場が決まっている。以下は、要約でお届けするが、毛司長はまず、GDPの成長率について述べた。

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中国国務院HPより

「初歩の概算によれば、今年第1四半期から第3四半期までのGDPは69兆7798億元で、前年同期比6.2%増加した。各四半期ごとで言えば、第1四半期が6.4%、第2四半期が6.2%、第3四半期が6.0%だ。産業別に見れば、第1次産業が2.9%増、第2次産業が5.6%増、第3次産業が7.0%増だった」

この発表に、日本の6大紙は、一斉に辛口の見出しをつけた。

<中国6.0%成長に減速 7~9月、過去最低を更新>(日本経済新聞)
<中国成長率6.0%、歴史的低水準に 7~9月>(朝日新聞)
<高まる世界経済への懸念 中国GDP減速の6.0%増>(毎日新聞)
<中国GDP6%増、成長率最低を更新…米中摩擦激化で>(読売新聞)
<中国GDPが6.0%増と過去最低更新 7~9月>(産経新聞)
<中国GDP、6.0%に減速 7~9月、92年以降で最低>(東京新聞)

本当に、取りつくしまもないほど、否定的な見出しだ。ここまで各紙に酷評されると、天邪鬼な性格の私は、「6%も成長できれば十分ではないか」と反論したくもなってくる。何せ日本の経済成長率は0.3%(第2四半期)、韓国は1.1%(同)、香港は0.6%(同)、台湾は2.4%(同)である。近隣諸国・地域と較べても、中国の経済成長率は群を抜いているのだ。仮にもし、日本が6.0%成長を果たしたなら、「アベノミクスの偉大な成果!」とか書くに違いない。

また、仮に中国が今年通年で6.0%成長したなら、GDPの「増加分」だけで、IMF(国際通貨基金)の昨年の国家別GDP統計に照らすと、20位につけてしまうのだ。これはスイスの上、トルコの下である。トルコやスイスに匹敵するほどのGDPを、一年間で増やしているのだから、これは十分ではないかと思えてしまうのだ。

だが、中国に問題がないかと言えば、そんなことはない。

国家統計局の魔法

私の最大の疑問は、「体感温度とのギャップ」である。私はだいたい四半期に一度、訪中しているが、6%も経済が成長している社会には思えないのだ。

日本がバブル絶頂の1989年の経済成長率が、4.9%だった。あの頃の東京は活気と笑顔に満ちていたが、あの活気と笑顔は、いまの北京・上海・深圳を見る限りない。むしろ「沈滞ムード」である。中国を牽引する大都市でさえ、そのような状況なのだから、ましてや農村地帯は推して知るべしである。

中国の経済成長が鈍化している理由を、読売新聞は「米中摩擦激化で」と書いているが、北京や上海で経済の専門家に聞くと、「雪上加霜」(シュエシャンジアシュアン)という成語をよく使う。すなわち、もともと「雪が降っていた」(中国経済が悪化していた)上に、「霜が加わった」(米中貿易摩擦が加わった)という見方だ。私もそちらの方が、的を射ていると思う。

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〔PHOTO〕gettyimages

胡錦涛政権から習近平政権にバトンタッチして以降、それまで長く続いていたバブル経済は終焉し、景気の悪化に歯止めがかからなくなってきた。そのため、2016年から「供給側構造改革」と呼ぶ「5大改革」(生産過剰の除去、在庫過剰の除去、金融不安の除去、生産コストの削減、弱者の救済)を断行した。

この徹底した改革によって、ようやく中国経済が一息ついたと思ったら、そこへ「トランプ台風」が襲ってきた。そこで昨秋から今年にかけて、過去に前例を見ない2兆元(1元≒15.3円)規模の大型減税を実施している。だがそれでも、景気の悪化に歯止めがかからないというのが現状なのだ。

中国のGDP統計に対する私のもう一つの疑問は、統計を発表する時期に関するものだ。中国は、日本の26倍もの国土と11倍もの人口を有する巨大国家なのに、9月30日までの経済統計が、翌月18日に発表されてしまう。このスピーディさは、世界に類を見ないものだ。

しかも、今年の10月1日は建国70周年で、7日まで丸一週間も連休が続いた。もちろんその間、中央官庁も休みである。そうしたことを勘案すると、中国国家統計局が魔法使いのように思えてしまう。

そう言えば、中国ではここ数年、こんなアネクドート(政治小咄)が流布している。

「私たち中国人は、何と幸せなのだろう。なぜなら今後、中国経済が悪化して、財政部や中国人民銀行がさじを投げたとしていも、国家統計局がついていてくれるのだから」

アメリカに対する「貸し」

先へ行こう。毛司が次に言及したのは、農業関係の統計だった。

「農業生産はおそらく豊作で、通年の生産量は6.5億トン以上を維持するだろう。第3四半期までで4.3%増加している。米と大豆を増産し、トウモロコシを減産した。

第3四半期までで、卵は5.5%増、乳牛は2.5%増、鶏肉は10.2%増、牛肉は3.2%増、羊肉は2.3%増だったが、豚肉は17.2%減だった」

最近の中国で、農業に関する話題と言えば、二つである。一つは、アフリカ豚コレラの蔓延で、もう一つはアメリカ産農産品の大量購入である。

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〔PHOTO〕gettyimages

昨年8月3日、中国動物衛生流行病学センターが、「瀋陽で豚コレラが発生した」と発表。その後、豚コレラは中国各地で猛威を振るった。今年10月16日現在、全31地域中、発生は28地域に及び、157件確認。これまでに計119万2000頭の豚を殺したという(10月17日付『中国新聞ネット』)。

そのため、豚肉価格は高騰の一途を辿り、今年9月は前年同期比で69%増! その影響で、9月のCPI(消費者物価指数)は6年ぶりに3%の大台に乗った。

こうしたことから、中国としては外国産の安全な豚肉を大量に輸入したい。そこで10月10日と11日にワシントンで行われた13回目の米中閣僚級貿易協議で、アメリカ産の豚肉購入を約束することで、アメリカに「貸し」を作ろうとしたのである。

10月15日の中国外交部の定例会見で、耿爽(ゲン・シュアン)報道官は、米中閣僚級貿易協議の成果について、こう述べた。

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中国外交部HPより

「初歩的な私の把握によれば、今年に入って中国企業は、アメリカから以下の農産品を買い付けている。大豆2000万トン、豚肉70万トン、高梁70万トン、小麦23万トン、綿花32万トン。中国側はさらにアメリカの農産品購入を加速させていく」

禁断の「発表」が示すもの

さて、毛司長が農業に続いて発表したのは、工業に関する統計だった。

「今年第1四半期から第3四半期までの全国の規模以上の工業増加値は、前年同期比で5.6%の増加だった。企業形態別には、国有企業が4.7%増で、民営企業が6.9%増、外資・香港マカオ台湾企業が1.4増だ。3大部門で言えば、鉱業が4.6%増、製造業が5.9%増、エネルギー分野が7.0%増だ。

また、1月から8月までの全国の規模以上の工業企業は、総額4兆164億元の利潤を達成した。前年同期比では-1.7%だった」

工業に関しては、5月から6月にかけて、広東省の製造業地帯を見たが、5.9%も伸びているような実感は湧かなかった。ある広州の電器メーカーの社長は、次のように述べていた。

「繊維(衣料)工場のような低付加価値製品を作る工場は、どんどんベトナムなどに移転しつつあり、空洞化が加速している。携帯電話などの高付加価値製品を作る工場は、広東省に残っているが、部品問題に悩んでいる。下請けの部品メーカーの資金繰りが悪化し、部品を正常に供給できなくなってきているのだ」

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また、工業企業の利潤が、前年同期比で-1.7%と、マイナス成長になったことが気になるが、建国70周年記念日(10月1日)の前日、浙江省である「事件」が起こった。

9月30日、浙江省統計局は、ホームページ上で一瞬だけ、「1月~8月の浙江省の工業企業の利潤の増加速度は全国よりも高い」という表題の発表をアップしたのだ。察するに、翌日は晴れがましい70周年の建国記念日ということで、つい「発表してはならないこと」を上げてしまったのだろう。

すぐにホームページ上から削除されたが、次のような内容だった。

〈 今年1月~8月の浙江省の規模以上の工業企業利潤は、前年同期比で2.8%増だった。これは全国平均の-1.7%よりも4.5ポイント高い。

全国の東部の10省市の中で、浙江省の利潤の増加速度は海南省の12.9%、福建省の10.4%に次いで良好である。北京市-14.4%、天津市-5.8%、河北省-11.2%、上海市-19.6%、江蘇省-3.5%、山東省-13.0%、広東省-0.4%であり、それよりも良好である 〉

ここには、中国経済を牽引する北京、天津、上海の悪化ぶりが如実に表れている。特に、中国で最もGDPが高い都市である上海が、前年同期比で2割近く減少しているのは、由々しき問題だ。

すでにスタグフレーション状態か

さて、続いてはサービス業と小売業である。毛司長はこう述べた。

「今年第1四半期から第3四半期まで、サービス業は継続して、比較的よい発展の勢いを保持している。情報伝達・ソフトウェアと情報技術サービス業、不動産賃貸とビジネスサービス業、交通運輸・倉庫と郵政業、金融業の増加値は、それぞれ19.8%、8.0%、7.4%、7.1%の増加だった。また、1月~8月、規模以上のサービス業企業の営業収入は、9.5%増だった。

第1四半期から第3四半期まで、社会消費品の小売総額は29兆6674億元で、8.2%増だった。都市部が8.0%増で、農村部が9.0%増だ。飲食収入が9.4%増で、商品の小売りが8.0%増だ。

また、第1四半期から第3四半期まで、一人当たりの平均消費支出額は1万5464元で、8.3%増だった。

電子商取引の9ヵ月の売り上げは、7兆3237億元で、16.8%増だった。そのうち実物商品の売り上げは、5兆7777億元で、20.5%増だった。すべての社会消費品小売総額に占める割合は、19.5%である」

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いまやサービス業が中国経済を支えているのは間違いない。消費がGDPの増加に占める割合は、60.5%に上る。都市部の若者たちは、ミネラルウォーター1本、コーヒー1杯から、スマホの電子商取引で買っているので、発展していくのは理解できる。

しかし、消費が8%以上、電子商取引の売り上げが2割も増加しているのは、消費が活発化しているというより、物の値段がどんどん上がっている要素が大きいのではないか。

これも体感から言うことだが、いまの中国は、不況下のインフレ、すなわちスタグフレーション状態に陥っている気がする。

消費で一番、景気動向が出やすいものの一つである自動車販売台数は、1月~8月は1610万台で、前年同期比11%減である。

景気を占う「2大指標」はどうか

続いて、毛司長は投資について述べた。

「今年第1四半期から第3四半期まで、全国固定資産投資は46兆1204億元で、5.4%増加した。うち民間投資は26兆4805億元で、4.7%増である。うちインフラ投資が4.5%増である。

同様に、全国不動産開発投資は9兆8008億元で、10.5%増。全国商品家屋売上面積は11億9179万㎡で、0.1%減。全国商品家屋売上額は11兆1491億元で、7.1%増だった」

固定資産投資の増加率が減少しつつある状況をどう見るかについては、意見の分かれるところだ。だが、消費・輸出・投資という中国経済を牽引する「三頭馬車」のうち、投資が減少しているのは、中国経済の体力が落ちていることの証左と受け取れる。

2015年の年初は、固定資産投資が16%増だったことを思えば、5年足らずで3分の1以下に減ってしまったことになる。

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ちなみに、インフラ整備特別債は、9月までに今年分の2兆1500億元(前年比8000億元増)を使い切ってしまい、10月からは来年分を前倒しして使っている。政府が高速鉄道建設などで地方のインフラを作ることによって、何とか地方経済を支えているのだ。だが中国鉄道総公司の負債は、すでに5兆元を超えている。

また、地方債の増加は、まるで降り積もる雪のようで、今週(10月21日~25日)だけでも、浙江省、四川省、湖北省、海南省、湖南省など9地方が、計670億6400万元も発行する。国家統計局によれば、8月末時点での地方債の残高は、21兆4139億元に上るが、「全国人民代表大会が承認した限度額内でコントロールの範囲内」だとしている。

このあたりは、昨年末に債務が1100兆円を突破した日本を見習っているのかもしれない。

不動産に関して、面積・売上高ともに増加しているのは、中古マンションの取引が増えていることが、牽引しているものと思える。ちなみに、全国300都市の第3四半期の新築住宅用の販売面積は8.6%減、契約面積は6.8%減である。

新車と新築マンションの販売は、中国経済の景気を占う「2大指標」とも言えるだけに、この減少傾向は気になるところだ。

米中貿易戦争の影響

続いて、貿易である。

「第1四半期から第3四半期まで、貨物の輸出入総額は22兆9145億元で、前年同期比2.8%増だった。うち輸出が12兆4803億元で5.2%増、輸入が10兆4342億元で0.1%減である」

貿易額がいま一つ伸びていかないのは、昨年7月以来のアメリカとの貿易戦争の影響が大きいだろう。米中貿易戦争に関しては、11月16日、17日にチリで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、米中首脳会談を開いて決着を図ると、ドナルド・トランプ大統領は強調している。

だが、米中対立は今後長期的かつ多岐にわたる見込みで、とても1回のトップ会談で解決するとは思えない。6月の大阪G20(主要国・地域)サミットの前にも、トランプ大統領は同じ発言をしていたが、根本的な解決にはならなかった。

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輸入に関しては、中国は昨年11月、習近平主席の肝いりで、「進博」(ジンボー)と呼ばれる大規模な第1回中国国際輸入博覧会を開いた。だがそれでも、輸入は増えない。景気が悪いのだから、「笛吹けど踊らず」となるのは当然だ。

毛司長は、就業についても言及した。

「今年第1四半期から第3四半期まで、全国の都市部での新規就業は1097万人で、今年の目標(1100万人)を99.7%達成した。9月の都市部での失業率は5.2%で、8月と変わらなかった。うち25歳から59歳までの失業率は4.6%だ。

9月末時点での農村から都市部への出稼ぎ労働者は、1億8336万人に上る。前年同期比では、201万人の増加だ。

9ヵ月の平均収入は2万2882元で、名目上は8.8%増、物価要素を控除すると6.1%増だ。都市部の住民の平均収入は3万1939元で、実質5.4%増。農村の住民の平均収入は1万1622元で、実質6.4%増だ」

就業に関しては、今夏に840万人もの大学生が卒業したが、そのうちどれだけの若者が、自分の望む就職ができているのかが気になるところだ。私は毎週1回、明治大学で東アジアの国際関係論を講義していて、中国人留学生も数十人いるが、彼らの口からは、あまり楽観的な話は聞こえてこない。

毛司長はその後、9人の内外の記者の質問に答えたが、あくまでも統計学的な観点から回答していて、中国経済の本質には触れていないので、省略する。

いつもながらに思うのは、中国という巨大国家を運営していくことの難しさだ。それでも日本にとっては最大の貿易相手国であり、米中貿易戦争の行方も踏まえて、今後とも注視していく必要がある。

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「5G」という言葉を聞かない日がなくなってきた今日この頃ですが、世界で一番5Gを研究しているファーウェイについて徹底解剖した本です。ご高覧ください!

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米中冷戦 中国必敗の結末
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山田順氏は、思想(主張)とデータ(論拠)を併せ持つ稀有な論客である。「日本のイアン・ブレマー」とも呼びたくなる人だ。そんな山田氏が、近未来を読み切ったように、「米中冷戦で中国はアメリカに勝てない」と説いたのが本書だ。
その根拠は? 昨年来の米中貿易戦争が、今年8月にアメリカが中国を為替操作国に認定したことで、第二局面の「金融戦争」に突入。だが人民元はドルに勝てないからだという。私は少し異論もあるが、それはいま封印するとして、世界中から賓客が日本に集まる「令和外交」の時期に、視野を広げられる一書だ。

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