肉体を賄賂に「ロケット出世」中国・美貌の女性官僚の栄光と転落

肉体を賄賂に「ロケット出世」中国・美貌の女性官僚の栄光と転落

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/08/23
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美女の来歴

7月18日、甘粛省定西市に所在する定西市中級人民法院(地方裁判所)で、甘粛省政治協商会議の「農業・農村工作委員会」元副主任の火栄貴による収賄、公金横領、職権濫用の容疑に関する事件の一審裁判が公開で開廷された。

当該法廷で火栄貴は1300万元(約2億800万円)の収賄について罪を認めた。

が、それよりも、その火栄貴と“権色交易(権力と色欲の取引)”を行っていた女性官僚の姜保紅(きょうほこう)が、大学のミスキャンパスから“淫官(淫らな官僚)”へ変身したという特異な経歴がメディアで大きく報じられ、中国社会で大きな話題になったのだった。

今年45歳の姜保紅は甘粛省武威市の前副市長だったが、2019年1月10日に火栄貴と共に“双開(中国共産党の党籍解除と公職解除)”の処分を受け、1月21日に2人一緒に逮捕されたのだった。姜保紅の逮捕は収賄容疑であり、火栄貴の逮捕は上述の収賄、公金横領、職権濫用の容疑だった。

姜保紅は甘粛省の省都「蘭州市」内に所在する甘粛政法学院(2019年6月に「甘粛政法大学(GANSU UNIVERSITY OF POLITICAL SCIENCE AND LAW)」と改称)の法律学部法学専攻に、1993年に入学し、1997年に卒業した。

甘粛政法学院在学中の姜保紅に対する周囲の第一印象は、“漂亮(美しい)”の一言であったという。

彼女の担任教官や同級生の記憶によれば、姜保紅の体つきは一般の女子学生に比べてすらっと背が高く、目は大きいだけでなく輝いていたという。姜保紅は“吊梢眼(つり目)”だったようで、同級生たちは「あのつり目は特別に人を引き付ける魅力があり、姜保紅は我々の“校花(ミスキャンパス)”だった」と述べている。

彼らによれば、姜保紅は美しいだけでなく、“質僕(飾り気がなく)”、“没有心機(計算がない)”という得難い特性があり、彼らにとって姜保紅は憧れの的だったと思われる。

階段を上がりはじめる

甘粛政法学院を卒業する前に、姜保紅は蘭州市にある“七里河区人民法院(七里河区を管轄する下級裁判所)”で実習を行ったが、実習期間中に指導教官に連れられてある裁判官と知り合い、親しくなった。

1997年6月に甘粛政法学院を卒業した姜保紅は、7月には希望通り蘭州市七里河区人民法院に配属となったが、これは知り合った、この裁判官の引きによるものと思われる。

姜保紅は、七里河区人民法院で5年間勤務した後の2002年9月に、甘粛省人民政府の“維穏辦公室(社会安定維持弁公室)”へ移籍となり、同弁公室で10年間勤務した。

この10年間に姜保紅は、一般の“科員(課員)”から“副処長(副部長)”まで出世したばかりか、人間的に徹底的な変身を遂げたのだった。

姜保紅と比較的に付き合いがある人によれば、甘粛省政法委員会某部門の副書記は、頻繁に姜保紅を帯同して宴会に参加していたし、彼女も甘粛省の政法委員会や組織部系統に属する部門の重要な指導者と意識的に交際していたという。

宴会の席に“庁級幹部(局長級幹部)”の姿があれば、そこには姜保紅の姿が必ずあった。

そうこうするうちに、一部の庁級幹部や“省級幹部(省指導部)”の宴会の席から姜保紅の姿が徐々に消えて行き、姜保紅は特定の幹部と交流するようになったが、実際上それは一種の取引きで、それによって姜保紅の役職は上昇して行った。

2012年1月、姜保紅は10年間勤務した維穏辦公室から離れて、甘粛省中部に位置する武威市(ぶいし)へ転勤となった。

武威市の中枢部は甘粛省の省都・蘭州市の中枢部から北西に直線で220キロメートルの距離にある。武威市は古くは凉州と呼ばれた歴史遺産の都市として名高く、面積は3万2347平方キロメートルで、日本で2番目の面積を持つ岩手県(1万5279平方キロメートル)の2倍よりも大きいが、人口は182万人に過ぎない。

一説によれば、上述した火栄貴は、2010年に武威市の最高指導者である党委員会書記に就任した。そして2011年のある日、武威市から省都の蘭州市へ出張したが、この出張の際に甘粛省維穏辦公室に勤務していた姜保紅と偶然に出会い、“看上了她(彼女を見染めた)”。

そこで、火栄貴は人事部門に掛け合って姜保紅を武威市へ転勤させたのだという。この説の真偽のほどは分からないが、あり得ない話ではないように思える。

大躍進

さて、姜保紅は武威市の“招商局(企業誘致局)”局長兼“党組(党組織)”書記に任命されたが、武威市に着任してからの姜保紅の躍進は輝かしいものだった。

それは1年に1段ずつ出世の階段を上ると言って良いもので、わずか4年の武威市在職中に招商局局長という“副処級”の地位から、副市長という権力を持つ“副庁級”の地位にまで昇進を果たしたのである。その出世を裏で支えたのは姜保紅をお気に入りの愛人としていた火栄貴であった。

姜保紅は、甘粛省人民政府維穏辦公室で“科員”として役人人生の第一歩を踏み出した2002年9月から、14年後の2016年11月には武威市副市長に就任している。

中国は日本と比べれば女性差別が格段に少ないとはいえ、依然として男性優位の傾向が強い。その中国の官界で姜保紅はとんとん拍子の出世を遂げたのである。

その昇進の経過はメディアが報じた彼女の略歴から見て取ることができる。

【略歴】
姜保紅、女性、漢族、1974年4月15日生まれ、出身:黒龍江省ハルビン市呼蘭区、
学歴:在職研究生を経て法学博士
1997年7月:仕事に参加
2003年9月:中国共産党へ入党
2008年12月:甘粛省維穏辦公室第2処副処長
2012年 1月:武威市招商局党組書記兼局長
2012年 4月:武威市招商局党組書記兼局長、武威市政府副秘書長、市政府弁公室党組員
2013年10月:武威市発展・改革委員会党組書記兼主任、天祝チベット族自治県党委員会副書記、県党委員会常務委員、県党委員会委員
2015年7月:武威市発展・改革委員会党組書記兼主任
2016年11月~2018年8月:武威市政府党組成員、副市長(商業・貿易・流通、教育、衛生、計画出産担当)

自らの肉体が賄賂

それでは姜保紅は、どうしてわずか14年間で平の科員から権力を持つ副市長へと飛躍的な出世が出来たのか。

メディアは彼女を“火箭式幹部(ロケット式出世の幹部)”と呼ぶが、そこには隠された秘密があった。その秘密とは彼女が40人以上の上級役人と性的交渉を持ち、彼らにその肉体を賄賂として贈ることで出世を図ったことだったが、そのうちの17人は指導者クラスの人物だったことが確認されている。

人々は姜保紅が自ら進んで己の肉体を上級役人に提供し、それと引き換えに彼らの推薦を受けて立身出世を果たしたことから、「“床上培養女幹部(ベッドで女性幹部を養成する)”」という中国共産党の伝統的なモデルを塗り替えたと面白おかしく噂し合ったものだった。

昔の姜保紅を知る旧友はメディアの取材に答えて次のように語った。

「姜保紅の頭には官界のことしかなく、関心があるのはより高い官界内の秘密情報と自身の出世だけで、明確で強烈な権力への欲望を持っている。ミスキャンパスであった時代には飾り気も何らの計算もなかった姜保紅だが、今では純粋な官界人間となり、“名利(名誉と利益)”に心を惑わされる人間に変わってしまった」。

2019年1月26日付の「中国財新ネット」によれば、甘粛省の官界では、姜保紅が、その肉体を賄賂として提供することで出世を図っている、という噂は早くからささやかれていたという。

とりわけ、武威市においては、その美しさが一際目立つ女性副市長の姜保紅と、当時は市党委員会書記として武威市の最高指導者であった火栄貴が、昵懇(じっこん)であいまいな関係にあり、火栄貴が密かに姜保紅の出世を後押ししていることは公然の秘密となっていた。

1月21日に姜保紅と共に逮捕された56歳の火栄貴は、2010年1月に武威市党委員会書記、武威市人民代表大会常務委員会主任に就任し、7年以上の歳月を武威市の最高指導者として過ごし、2017年4月に突然免職となった。

その3か月後に甘粛省政治協商会議「農業・農村工作委員会」副主任に任命されたが、2018年7月13日に失脚し、その1カ月後の8月10日に姜保紅も失脚したのであった。

火栄貴がその権力を振りかざして収賄、公金横領、職権濫用の罪で処断されたことは文頭に述べた通りだが、調査によって火栄貴がその地位を利用して姜保紅以外にも多数の女性と肉体関係を持っていたことも明らかになったのだった。

中国共産党の「脈々たる伝統」

ところで、中国共産党は「ベッドで女性幹部を養成する」のが伝統モデルだと先に述べた。

大した能力もないのに、上級幹部に自身の肉体を提供し、ベッドで養成された女性幹部は多々いるが、その中の最たる例は江沢民の情婦と言われる黄麗満(こうれいまん)である。

黄麗満は1945年2月に黒龍江省チチハル市で生れたので、74歳の現在も健在である。1964年に黒龍江省ハルビン市にあるハルビン軍事工程学院自動制御学部を卒業したエンジニアである。

ハルビン軍事工程学院時代の彼女を知る人は、成績は芳しいものでなかったが、人を引き付ける天性の魅力があり、決して美人ではないのに、男子学生が彼女を奪い合ったという。また、学院の教員と男女関係になった結果、妻に知られて大事になり、教員は処罰されたという。

ハルビン軍事工程学院を卒業後に黄麗満が配属されたのは、北京市にある中央政府の第四機械工業部であった。1982年に第四機械工業部は電子工業部と名称変更されたが、1983年6月に第2代部長に任命されたのが江沢民だった。

その当時、黄麗満は電子工業部の弁公庁(事務局)に勤務していた。当時の同僚の記憶によれば、黄麗満は江沢民の気を引こうと、毎日派手に着飾り、厚化粧にハイヒールを履き、フランス香水の香りを振りまいていたという。

生来の女好きとして知られる江沢民が黄麗満の呼びかけに応じて、彼女を部長執務室へ呼び込むまでにはさほどの日数を必要としなかった。

当時、中国の役所では昼食後に昼寝の習慣があったが、毎日昼寝の時間になると、黄麗満がこっそりと江沢民の執務室へ入り込み、ドアを閉めると内側からガチャリと鍵を掛けた。周囲の人々は鍵の音が聞こえると、「また始まった」と目と目で合図したものだった。

そんなある日、江沢民宛に党中央から緊急文書が届いたが、江沢民の逢瀬を邪魔する度胸のある人間はおらず、1時間ほどして黄麗満が衣服を整えながら執務室から退出するのを待って文書を江沢民に届けたこともあったという。

1985年6月、上海市長に任命された江沢民は電子工業部を離れるが、その直前に江沢民は黄麗満を電子工業部弁公庁の副主任に異例の出世をさせた。

また、上海市に着任した江沢民は北京市内にある黄麗満の自宅に北京・上海の専用電話を設置させ、毎日のように黄麗満との電話を楽しんだが、連日の電話は2時間以上に及び、電子工業部は電話代の処理に苦慮する始末であった。

一方、黄麗満には夫がいたが、江沢民の存在を知る夫が黄麗満に離婚を切り出したことで、驚いた江沢民は夫の口を封じるべく広東省深圳市で夫が商売できるように支援し、夫の深圳市滞在中に黄麗満との電話会話を楽しんだのだという。

女性の社会進出というべきか、男社会ゆえの特典か

1991年に黄麗満は中国電子工業総公司弁公室主任となったが、その翌年の1992年には江沢民の手配により深圳市党委員会副秘書長となった。

その後は深圳市党委員会秘書長、深圳市党委員会常務委員などを歴任後、1995年には深圳市党委員会副書記、2001年には広東省党委員会副書記、深圳市党委員会書記となり、2002年には深圳市人民代表大会常務委員会主任を兼ねるようになり、深圳市の最高指導者となった。

2005年3月に深圳市の最高指導者を引退した黄麗満は、2005年から2008年まで広東省人民代表大会常務委員会主任を務め、2008年から2013年までは中国の国会に相当する全国人民代表大会の華僑委員会副主任委員を務めた。

江沢民によって無能な黄麗満を送り込まれた深圳市の役人にとって、黄麗満は目の上のたん瘤で邪魔者以外の何物でもなかったが、江沢民は中国共産党中央委員会総書記であると同時に国家主席であり、彼の命令に逆らえるはずはなかった。

しかし、2012年11月に習近平が胡錦涛に代わって党総書記に就任すると、江沢民の力は急速に衰え、黄麗満を支える力も一気に失せて、黄麗満は一線からの引退を余儀なくされて現在に至っている。

黄麗満は、たまたま配属先の部長になった江沢民の手によって「ベッドで女性幹部として養成された」。

後に幸運にも江沢民が中国の最高指導者に就任したことで、黄麗満は中国の四大経済都市(北京、上海、広州、深圳)の1つである深圳市の最高指導者にまで上り詰めることが出来た。

これは彼女に実力があったからではなく、あくまで江沢民の女好きに起因するもので、中国の諺に言う「“鶏犬昇天(鶏でも犬でも天に昇る=1人が出世するとその親類縁者まで権勢を得ること)”」の類という事ができる。

一方、美貌を売り物にした姜保紅は、自らの肉体を武器として数多の上級役人と肉体関係を持つことで、彼らを篭絡することにより出世の階段を上った。

彼女はさらなる出世を望みつつ夢半ばにして失脚したが、彼女が歩んだ道が中国共産党の伝統モデルではなかったことは明らかであると同時に、彼女は新しいモデルを創出したと言えるのかもしれない。

中国の官界に男と女がいて、色と欲が渦巻けば、第二、第三の姜保紅が出現する可能性を否定することはできないのである。

中国のメディアは、姜保紅をフランスの文豪スタンダールの小説『赤と黒』の主人公で、立身出世の野望を抱く野心家の青年であるジュリアン・ソレルになぞらえ、中国の「女版ジュリアン・ソレル」と呼んだ。彼女も本物のジュリアン・ソレルと同様に最後には自滅したのだった。

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