米国の「予防戦争」発動間近、決断を迫られる日本

米国の「予防戦争」発動間近、決断を迫られる日本

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  • 更新日:2017/12/07
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米ホワイトハウスで話すドナルド・トランプ大統領(2017年11月20日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News

11月29日、北朝鮮は「火星15号」と称するICBM(大陸間弾道ミサイル)の試射を実施した。米軍当局の計算では、通常軌道で発射された場合にはアメリカ全域が射程距離にすっぽり収まるという。いよいよ北朝鮮がアメリカ領内を核攻撃できる能力をほぼ確実に手にしつつあることが確実な状況に立ち至ってしまった。

トランプ大統領は、すでに半年以上も前から軍事オプション発動をほのめかしているが、実際には中国の影響力が発揮されることを期待しつつ経済制裁を中心とした外交的解決のための努力を継続してきた。しかし、これまでのところ、全く成果は認められない。事態は悪化をたどる一方である。

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トランプ政権のオプションは?

北朝鮮に確実な対米核攻撃能力を手にさせないために現在トランプ政権がテーブル上にのせているオプションは、大ざっぱに言って以下の3通りである。

(1)外交的解決
国際社会とりわけ中国の北朝鮮への影響力をより強化させて、北朝鮮にこれ以上のICBM開発を思いとどまらせる──少なくとも停止させる。

(2)限定的予防戦争
北朝鮮のICBM、移動式発射装置ならびに関連施設を軍事攻撃して完全に破壊する。

(3)徹底的予防戦争
上記軍事攻撃と同時に、金正恩ならびに政権首脳たちを葬り去る──少なくとも軍とのコミュニケーションを分断し(「斬首作戦」と呼ばれている)、可能ならば核関連施設を接収する。

過去四半世紀の経験によると、北朝鮮と外交交渉をしても単に北朝鮮側に時間を与えるだけの結果となりかねない。そこでアメリカ外交当局は、中国を引き入れて、中国の影響力を担保として北朝鮮にICBM開発を中止あるいは凍結させようと考えている。しかしながら、北朝鮮軍と中国軍の裏の関係ははなはだ不鮮明であるうえ、中国が北朝鮮問題を外交カードとして用いながら、南シナ海ならびに東シナ海への膨張主義的進出を加速させているのが現状だ。トランプ政権が、これ以上中国に北朝鮮ICBM開発問題への関与を期待すると、東アジアでのアメリカの影響力はますます低下してしまうことになる。

したがってアメリカにとっては、中国の影響力を当てにせずに、アメリカが主導して北朝鮮による対米核攻撃能力を摘み取る方策、すなわち北朝鮮に対する「予防戦争」の発動しかない、ということになる。

とはいっても、軍事オプション発動には、アメリカ軍当局は極めて慎重にならざるを得ない、というのが現状である。

「徹底的予防戦争」のハードルは高い

アメリカが北朝鮮に対する先制攻撃、すなわち「予防戦争」を実施する目的は、アメリカ領域内を核攻撃可能なICBMならびにそれを発射する地上移動式発射装置(TEL)を完全に葬り去ることにある。

したがって、アメリカ軍による先制攻撃は、北朝鮮軍のICBMとその発射関連装置の格納位置(山間部の洞窟や地下式施設)が判明した場合に限られることになる。つまり、ICBMとその発射関連装置を完全に破壊することが可能な確証を手にするまでは、「予防戦争」が発動されることはない。

場合によっては北朝鮮のICBM関連施設のみならず金正恩政権首脳を一網打尽に排除してしまい、ミサイル開発能力と核開発能力を一掃してしまう、といった「徹底的予防戦争」も取り沙汰されてはいる。しかし、国防当局の戦闘態勢準備や政府首脳、そして連邦議会などの論調といった現状からは、とてもそのような軍事作戦を実施することはできない。最大の理由は、「徹底的予防戦争」を実施するには、どうしても地上軍を北朝鮮領内に送り込まなければならないからである。

徹底的予防戦争を実施する場合、韓国軍特殊部隊と行動を共にする米軍特殊部隊に引き続き、米海兵隊上陸部隊が侵攻し、米陸軍の大部隊が投入されることになる。地上軍が北朝鮮領内での作戦行動を開始すると、アメリカ軍将兵の死傷者をはじめとする甚大な損害が予想される。そのような犠牲は極力避けなければならないというのがアメリカ国防当局はじめ米国世論の支配的論調である。

それだけではない。アメリカ軍地上部隊が北朝鮮領内に足を踏み込むと同時に、現在中朝国境付近に展開している中国地上軍大部隊が、「北朝鮮からの難民を保護するとともに、米韓連合軍の侵攻により大混乱に陥った北朝鮮の秩序を維持する」という名目で北朝鮮領内に雪崩れ込むことは確実視されている。

その結果、米韓連合地上軍は、北朝鮮軍に対する掃討作戦だけではなく、中国地上軍と衝突する可能性にも直面する。

万が一にも中国軍との間で戦闘が勃発すると、隣接する中国からは中国軍航空部隊それに海軍部隊も出動し、本格的な米中戦争へと発展しかねなくなる。大戦争はちょっとした偶発的衝突が引き金となり得ることは、古今東西の歴史が物語っている。

以上のような理由によって、現時点では徹底的予防戦争をトランプ政権が発動する可能性は極めて小さいと考えざるを得ない。

十二分に現実的な「限定的予防戦争」

徹底的予防戦争と違って限定的予防戦争、すなわち北朝鮮のICBM発射・開発能力を破壊して、少なくともアメリカに対する核攻撃の可能性だけは除去する戦争は、現状においても実施される可能性は否定できない。

もちろん、アメリカ政府、とりわけ国防当局ならびに外交当局としては極力軍事力の行使は差し控えたいのが本音である。だが、外交的対処では中国の動きに期待せざるを得ない。とどのつまりは北朝鮮情勢も打開できず、南シナ海と東シナ海への中国の膨張主義的拡張政策も完成の域に近づけさせてしまい、下手をすると台湾も中国の手中に落ちかねない。

したがってトランプ政権が、より確実にアメリカへの核攻撃の芽を摘むためには限定的予防戦争を敢行するしかないと腹をくくることは、十二分に現実的であるといえよう。

ただし、限定的予防戦争は徹底的予防戦争よりもアメリカ側(韓国や日本も含む)の人的・物的犠牲が少ないとはいえ、それでもマティス米国防長官がかねがね口にしているように「想像を絶するほど壊滅的」であることには変わりはない(下の図を参照)。

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北朝鮮からの報復攻撃圏

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51782

そして、日本がそのような言語に絶するほどの損害を被らないためには、トランプ政権に予防戦争を開始させないという選択肢しか存在しない。莫大な税金を投入してアメリカから弾道ミサイル防衛システムを購入することではないのだ。

しかし、その瞬間に日米同盟は危殆に瀕しかねない。まさに、日本政府・国会は極めて厳しい決断を迫られつつあるといえよう。

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