ブラック企業問題を映像にし続ける監督が涙ながらに語った友人の死

ブラック企業問題を映像にし続ける監督が涙ながらに語った友人の死

  • シネマトゥデイ
  • 更新日:2019/10/17
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亡くなった友人を想い、熱弁を振るいながら声をつまらせた土屋トカチ監督。 - (撮影:中山治美)

労働組合に加入したことで嫌がらせを受けた社員とその会社との労使紛争を追ったドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』(公開未定)が第16回山形国際ドキュメンタリー映画祭日本プログラムで上映され、土屋トカチ監督が舞台挨拶を行った。テレビ東京系のドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」でも取り上げられて話題となった訴訟だけに、248席の会場はほぼ満席となる注目度の高さだった。

同作は、長時間労働の末に交通事故を起こした元社員が会社から弁償金を請求されたことに疑問を持ち、個人加盟型の労働組合に加入したところ、露骨な嫌がらせにあった告発ドキュメンタリーだ。その戦いは壮絶なもので、元社員は営業職からシュレッダー係に配属されること約1年11か月。配置転換の無効などを求めて東京地裁に訴えたところ、会社に甚大な損害を与えたとして懲戒解雇され、その理由が“罪状”として全店舗に掲示されたこともある。

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『アリ地獄天国』のワンシーン。シュレッダー係だった元社員は、1日何度も紙屑を持って会社とゴミ置き場を往復した。

元社員は、不服を唱えて解雇を撤回されて復職となるも会社との紛争は3年に及び、人種差別的なイジメに、親や妻の実家にまで裁判をやめさせるよう脅しともとれる匿名の手紙も届いた。ちなみにその間のボーナスは、驚愕の20円だったこともある。

監督は、ブラック企業問題を追い続けている土屋トカチ。以前にも過酷労働に耐えかねて労働組合に加入したところ、会社ぐるみの脱退工作に遭ったセメント輸送運転手のドキュメンタリー『フツーの仕事がしたい』(2008)を制作しており、「また同じテーマかと言われると癪なので違う題材を探していた」(土屋監督)そうだが、会社でのイジメが原因で命を絶った友人の姿が重なり、制作に至ったという。

土屋監督は「新国立競技場の建設現場で過労自殺者が出ているのにニュースにならない。こういうテーマで撮っていると、怒り狂って死んじゃうんじゃないかと思う日があるくらい。特に日本では労働組合に加入しているというとカルト的な扱いをされるけど、その誤解を解いて、命を救い出す術にもなるのだということを伝えていかないと。じゃないと僕の友人の死も浮かばれない」と涙ながらに語った。

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Q&Aに登壇した土屋トカチ監督。(撮影:中山治美)

会場からは、シュレッダー係に徹した元社員の戦いを「マハトマ・ガンジーの非暴力抵抗運動のよう」と称する人も。その上で、「そばで見ていて、彼はなぜ会社に通い続けたと思いますか?」という素朴な疑問も飛んだ。

土屋監督は「“やってやる”と決めたのでしょうね。通勤にも何回か密着したのですが、急行に乗れば早いのに、わざわざ鈍行に乗ってすぐに寝るんです。彼は“スイッチを入れる”と表現していましたが、その間に気持ちを入れ替えて、別人格に成り代わって会社へ向かっていたのだと思います」と説明した。

また「映画を観て、怒り震えながらも感動している」と語った男性からは「なぜこのような異常な社会になったと思いますか?」と土屋監督に意見を求めた。

土屋監督は「ロボットのような人間を育てる学校教育が原因では? そこからはみ出すとイジメが起こる。それと同じ構造がずっと続き、50歳、60歳でも引きこもりがいますからね。めちゃくちゃな職場で心と体を傷つけられたら、誰も働きたいと思わないですよ。うまくやりくりできる人だけが生き残れる。その総仕上げが安倍政権で、イエスマンばかり揃っている」と持論を展開した。

続けて「この世の中、スーパーヒーローが現れて助けてくれるようなことはなく、おかしいと思ったことは自分で立ち上がらないといけない。それでしか、今のズタボロの日本は変えられないと思ってます」と力強く訴えた。(取材・文:中山治美)

第16回山形国際ドキュメンタリー映画祭は17日まで開催

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