男がダイエットに宿命的に向いていない、その理由

男がダイエットに宿命的に向いていない、その理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2016/10/18
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〔PHOTO〕gettyimages

男が激太りする時

ベストセラー『されど“服”で人生は変わる』の著者・齋藤薫さんが初めて男について書いた新刊『されど‟男”は愛おしい』が話題だ。本作の中から「男の激太り」について触れたエッセイを特別公開する。

女には生まれながらに〝太ってはいけない〟という暗黙のルールがあるから、女が〝激太り〟したような時には、失恋したのか、挫折したのかと、世間はすぐそれを不幸な出来事と直結させ、そこにひそむ可哀想な理由をあれこれ執拗に詮索する。

しかし、男の場合は少し意味が違う。男の激太りは、あくまで本人の心や体や生き方の偏りに原因がありそうだからと、〝弱々しさ〟か〝ふてぶてしさ〟かを疑われることになる。

学生時代は痩せていたのに30代までに激しく太ってしまった男には、オタク化している人が少なくない。基本的に運動はせずに、室内でひとつのことに没頭する。

リアルな恋愛はせず、アニメやメイドカフェでの仮想恋愛。人付き合いもあまりせず、名前を知らない者同士、「オタクは?」「オタクも?」の関係で済ます。人と一緒に食事をしないから、食事も偏っていく。

もちろん、深夜残業が続く仕事や並外れてストレスの多い仕事についただけで、人は立ち所に太っていきがちだが、オタクが太りやすい原因は他にある。社会性や協調性、そして客観性を自ら放棄すること。

そこには2つのタイプがあって、極端な話、ニートとIT長者に象徴されるように、片や社会と関わるのが苦手だから、家にいる弱々しい人。片やどっちを向いても自分の天下という、ふてぶてしい人。〝秒速で10億円稼ぐ〟と書いたあの人のように、頭だけで成功したから自信満々で理屈っぽい。いや、理屈っぽいのはニートも一緒で、仕事をしない大義名分など立派なもの。

ところがどちらのタイプも〝人にどう見られるか〟という意識が薄い。だから太っていきがちなのだ。男の場合は社会性が体重の歯止めになるからで、アメリカでは太っているとまず出世できないと言われるのもそれがため。

もちろん、生まれつき太っている向きは別。それはキャラとして体にしみついているもの。脂肪がもともともっている善人イメージだけで生きていける。しかし後天的な肉づきは、偏屈なイメージがダブるせいかどうしても世間と距離を生んでしまう。だから男も途中で太ると損をするのだ。

そこで提案。激太りした時、世間の関心をかわしたいなら、幸せそうに笑うといい。にこにこと人が良さそうに。デブが笑えば非の打ちどころのない善人に見えるが、笑わないといささか悪意ある者に見えてしまう。余分な肉自体が後ろ向きな性格を連想させてしまう。だからできるなら笑いたい。

男とダイエットのやばい関係

男性はいわゆる摂食障害にはなりにくいとされるが、じつは表面化していないだけで、人知れず苦しむ俳優やアーティストは少なくないと言われる。実際体重が3キロ増えたら、アクション俳優は仕事が減る。

役づくりで20キロ減量したのがきっかけで拒食症になっていたデニス・クエイドは、痩せても痩せてもまだ〝自分は太っている〟と言い張り、やがては精神を病んでいったといわれる。

女は子供の頃からダイエットが生活に根差しているが、男の人生プログラムにダイエットの文字はなく、だから〝メタボ〟問題が出てくるまでは、男はダイエットさえ大っぴらにできなかった。

女は、〝ダイエットする男〟が基本的に嫌いなのだ。だいたいがダイエットはひとたび足を踏み入れると、頭から離れなくなるほどの中毒性があるわけで、男はそんなものにハマっている場合じゃないと思うのだ。

だからインパクトがあったのが、一時期一世を風靡したレコーディング・ダイエット。ご存知、オタキングを名乗る評論家のアイディアで、ともかく食べたもののカロリーなどをつぶさに記録していくだけの日記ダイエット。〝数字〟という強烈な脅迫状を日々自分に見せつけることで、自ずと完璧なカロリー制限ができてしまう。

食べるのを我慢するのではなく、いつの間にかカロリーの低いものを喜んで食べるようになっているから、面白いほど痩せられるという仕組み。この発案者は117キロあった体重の50キロ減に成功している。

で、せっかくのサクセスストーリーに水を差すようだけれども、大がかりなダイエットに成功した男は、いくら痩せても、残念ながら即刻好感度が上がったりはしない。

健康上は良かった良かったと〝喝采〟を送られるが、痩せたことで急にモテ始めたり、急に周囲の扱いが良くなったりはしない。それより、太っていることをそのまま好感度に変えた方がよほど早かったりするほど。

なぜなら男の過激なダイエットは、わかりやすい親近感を断ち切って、周囲にあらためて緊張感を与えてしまいがちだから。特に歳を重ねてからの激しい体重増減は、まさに〝整形〟的に見た目印象を別人にするから、旧知の関係さえ、しばらく遠ざけてしまうほどの見えない壁を生んでしまうのである。

かつて友人が何だか半分くらいに痩せていた。間違いなく、何か重篤な病気だろうと思い込んで「変わりない?」とも聞けないまま、会話をするにもいちいち言葉を選ぶ。いっそ病気のことを告白してくれれば、と思った時、「ボク、すごい痩せたでしょ?」。彼は平然と「やったんだよ、ダイエット」。

だったら最初に言ってよ。彼は「わー痩せたねー」と驚いてもらいたかったのだ。痩せたことを絶賛してほしかったのだ。

しかし現実には50代の激痩せは、生死にかかわる不幸感を突きつけてくる。事情を知らない相手を妙なところに追い詰めてしまう。それでも過激ダイエットをしたいだろうか。

メタボの解消は確かに急務だが、意地になって痩せることはない。ダイエットはやっぱり宿命的に男に向いていないのだ。

ちなみに、不思議なほどキレイに痩せ、昔より少し若返った男に、あのホリエモンがいる。見るからに浄化され、ある種〝昇華〟しちゃった印象。長い間、どこで何を熟成させていたのか、ともかくその、意外なほどすっきり引きしまった顔には一定の〝進化〟が見てとれる。

いみじくも、著書で彼はこう語っている。「以前は〝人を理解できない〟こと自体が理解できなかった」と。ということは、沈黙の間に〝人の心がようやく読み取れた〟と考えてよく、まさしく本当の意味での社会性と客観性を身につけたからこそ、キレイに痩せたのじゃないか。その痩せ方を見て、この男の底力を見せつけられるような感慨をもった人は少なくないのだ。

いずれにせよ、人と人の気持ちまではつなげなかったネットコミュニケーションの申し子は、やがて自らその矛盾に気づき始めたということになる。

もしももっと〝やつれ痩せ〟していたら、典型的な時代の寵児として、良くも悪くも過去を振り返られるだけだっただろうし、これで懸命のダイエットで痩せたことをダイエット本にするような行動に出れば、またも社会的な評価を失ないかねないが、何かバランス感覚を取りもどしたことでそこそこキレイに痩せた男は、不思議に社会的な評価を高めていくのだ……。

太るも痩せるも、その人に未来があるかどうかを決定づける、肉による無言のプレゼンテーションなのである。

〝デブ〟と〝恰幅の良さ〟を分けるもの

かつて痛風が「帝王病」と称されていたように、患者は裕福で地位の高い人物に限られていた。アレクサンダー大王に、英国王ヘンリー7世に、フランスのルイ14世、ダンテ、レオナルド・ダ・ヴィンチに、ミケランジェロ……。

かように痛風や出っ張ったお腹は、地位や財力の証でもあったはずだが、アメリカでは今や、〝肥満率〟と収入や学歴は反比例する、つまり貧困層ほど肥満になりやすいと言われている。従って最近は、太っていることが〝富〟ではなく、〝貧しさ〟の象徴となることも。

とは言え、風格や貫禄は相変わらず〝恰幅の良さ〟から生まれる。なのに〝デブ〟はだらしがなく見えるという不思議。体型的には変わらないのに、放つ印象は対極にあるのだ。

〝デブ〟と呼ばれるか、〝恰幅のいい人〟と言われるか、それは同じ60歳でも〝オッサン〟と呼ばれるか、〝初老の紳士〟と呼ばれるかほどの違いがある。その違いは何なのか。

決めては、ひとつめに息づかい、ふたつめに汗、そして当たり前だけれど、身なり。

ある映画にこんなシーンがあった。冷え切った夫婦がリムジンに乗っている。妻は不機嫌そうに夫に言う。「お願いだから息しないで」。

スーハースーハー息を吸っては吐くだけの男の息づかいを、なぜ女は憎むのか。ましてや太った男のせわしない息づかいにはなぜ、軽い殺意を覚えるのか。太った体は軽のエンジンでトラックを動かすような不条理があるのだから、無駄な息が鼓動に合わせてスーハー出てきて当然。

でも相手への配慮と人間としての洗練があれば、音は避けられる。それを避けられないのが、〝デブ〟。息の音を出さずにいられるのが〝恰幅のいい男〟なのである。

彼らは同様に、あまり汗をかかない。息も汗も吐き出さずにおこうと思えば出さずにいられる。そういう意識の有無が印象の大きな分かれ道なのだ。

そして身なり。Tシャツとジーンズだと余分なうわづみにしか見えない肉が、びしっとしたスーツを着せると、風格になっていく。なぜなら背広は、もともと風格ある男のために作られた服。痛風ぎみの財力ある体を包み込むには、〝男の服の最高傑作〟と言ってもいいスーツがいちばん。だからじつは太っている方がスーツは似合うのである。

だから太ったら、ラフな装いを避け、なるべくスーツやブレザーを着るべき。それがデブと風格を分ける肝である。

スーハーしない、汗をかかない、バリッとする。そこに収入にして1000万円くらいの差が生まれる。余分な肉にはそのくらい貧しさと豊かさ、両極のイメージが宿っているのを知っておくべきなのだ。

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ベストセラー『されど“服”で人生は変わる』の著者が緻密に無慈悲に、愛を込めて。これが、男の新基準。新たなる「齋藤薫語録」、誕生。

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