SG会田アンダースロー(ワインドアップ)金融・財政政策はやったが成長戦略がまだという認識は古い

SG会田アンダースロー(ワインドアップ)金融・財政政策はやったが成長戦略がまだという認識は古い

  • ZUU online
  • 更新日:2018/10/12

シンカー:信用サイクルと投資サイクルが天井を打ち破り、失業率も順調に低下している事実を確認すれば、成長戦略は既に進展しているというのがフェアな評価だろう。一方、遅れているのが財政政策によるリフレサイクルの上振れで、物価上昇率が2%へ向けて強くなっていくことを妨げている。企業貯蓄率と財政収支の合計で貨幣経済・マネーの拡張を左右するネットの資金需要が、2014年度以降の消費税率と社会保険料引き上げなどの財政緊縮により、消滅してしまっていた。金融・財政政策はやりきったが成長戦略がまだ実行されていないという認識は古い。市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止などを目的とした財政政策で、ネットの資金需要を復活させ、リフレサイクルの天井を打ち破る必要があるだろう

安倍首相が3年の新たな任期を得て、デフレ完全脱却まで経済政策を推し進めていくことになる。

引き続き経済政策の軸は、三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)のアベノミクスだ。

政府・日銀の2%の物価上昇率を目指す共同目標が達成されるためには、三つのサイクルが天井を打ち破らなければならない。

信用サイクル、投資サイクル、そしてリフレサイクルだ。

大胆な金融政策で、信用サイクルの天井をまずは打ち破った。

日銀短観の中小企業金融機関貸出態度DIは2018年7-9月期に+21となり、バブル崩壊後の最高水準まで既に上昇している。

信用サイクルの上振れにより企業活動が刺激され、失業率が2%台まで低下し、人手不足感と賃金の上昇が生まれた。

もし成長戦略の下での労働改革が進行していなかったら、信用サイクルの上振れに労働市場の硬直性が原因で失業率の低下がついていけず、3%台にとどまり、デフレ完全脱却への動きが阻害されていたことだろう。

そして、経済ファンダメンタルズの改善と民間投資を喚起する成長戦略が徐々に効果を発揮し、投資サイクルもようやく天井を打ち破った。

実質設備投資の実質GDP比率は7-9月期に16.5%となり、バブル崩壊後の最高水準までようやく上昇した。

16%の天井をなかなか打ち破れなかったことが、過剰貯蓄として総需要を破壊する力となっているプラスの企業貯蓄率の低下を妨げる要因となっていた。

もし成長戦略の下での規制緩和や法人税率の引き下げなどの企業刺激策が進行していなかったら、労働参加率の上昇による潜在成長率の押し上げが限界にくる中で、設備投資による資本蓄積で更に潜在成長率を押し上げるというシナリオが描けなかっただろう。

信用サイクルと投資サイクルが天井を打ち破り、失業率も順調に低下している事実を確認すれば、成長戦略は既に進展しているというのがフェアな評価だろう。

一方、遅れているのが財政政策によるリフレサイクルの上振れで、物価上昇率が2%へ向けて強くなっていくことを妨げている。

企業貯蓄率と財政収支の合計で貨幣経済・マネーの拡張を左右するネットの資金需要(GDP対比、マイナスが強い)が、2014年度以降の消費税率と社会保険料引き上げなどの財政緊縮により、消滅してしまっていた。

金融・財政政策はやりきったが成長戦略がまだ実行されていないという考え方は古い。

安倍首相が自民党総裁選で勝利し、2021年までの新たな任期を得たことで、2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標に抑制されず、デフレ完全脱却を目指し財政政策を拡大することができるようになった。

市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止などを目的とした財政政策で、ネットの資金需要を復活させ、リフレサイクルの天井を打ち破る必要があるだろう。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司

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