「銀行消滅」は、こんな順番でジワジワ進行する

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/11/18

みずほショック

みずほフィナンシャル・グループ(FG)が向こう10年で1万9千人の人員削減を行うと発表した。他のメガバンク2行も数千人単位の人員削減方針を発表している。

みずほFGの削減人数が多いことは、同行の経費率が高いことを踏まえると、証券市場関係者の間では「やっぱり」という反応なのだが、海外業務を収益源にできるメガバンクでもこれだけの人員削減が当然視されるのだから、こうしたビジネスを持たない地方銀行などの銀行と銀行員に掛かっている圧力は相当のものだろう。

メガバンク各行は、AIやいわゆるフィンテックと呼ばれるような各種のテクノロジーを含む広義のIT化によって、行員の仕事を置き換えて行く方針だ。これらのテクノロジーの多くが近年急速に進歩していることを踏まえると、銀行員が不要になるスピードは、大方の想像を上回るものになる可能性がある。

わが国の銀行は、現在、(1)長期金利を含めた金利を下方に固定する日銀の政策により貸出の利鞘が縮小し、(2)同時に有価証券運用も困難に陥り、(3)フィデューシャリー・デューティー(金融庁の訳語では「顧客本位の業務運営」)を強調する金融庁の方針下で運用商品による手数料稼ぎにブレーキが掛かり、(4)アパートローンやカードローンといった個人向けの収益性の高いローンも量的・倫理的な壁が見えてきたことなどから、ビジネスモデル全体が窮地に陥っている。

長期金利まで含めたイールド・カーブの操作が政策として適切なのかという問題や、フィデューシャリー・デューティーの重視に見られるように監督官庁が民間企業である銀行の経営の細部に介入することをどう見るかという問題には議論があろう。

但し、前者はデフレからの脱却まで大きく変化することは無さそうだし、後者についても、顧客にとって不利な(端的に言って手数料が高すぎる)投資信託や貯蓄性保険を売りつけるような現在のビジネスのやり方では長続きしないことを見越して、金融庁が経営を指導していると見るのが妥当だろう。

加えて、長期的には、ブロックチェーンの技術やクラウド・ファンディングの発達などによって、送金・決済、さらには資金仲介そのものが、銀行を通らなくなる可能性が生じている。

これらに対する凡庸な経営者の反応は、なにはともあれ「経費削減」ということになり、人件費削減のために社員である銀行員を減らして、業務を機械化しようという動きは自然だ。

どこまで「置き換え可能」か

顧客が銀行を訪れるとほぼ例外なく感じる通り、銀行にはいかにも堅苦しい膨大な事務作業があるが、これらは、「AI」と呼ぶレベル以前のIT化で大いに置き換え可能だし、自然言語に対応して学習を深化させるAIを導入すると、顧客に対する対応を伴う窓口業務の多くも、直ちに無人化は難しいとしても、効率化・少人数化が進むことは間違いあるまい。

問題は、判断や対人的駆け引きを伴う法人向け融資のような銀行本来の業務だが、こうした業務に関してもAIによる置き換えが技術的には将来可能であろうとの見通しが有力だ。

銀行の業界内文化を考えた時に「果たして、そこまでやってもいいのか?」と問う声はあるが、それが効率化につながり利益を生むものであれば、銀行間に競争がある以上、順次普及すると考えるのが普通だろう。

「AI」による置き換えを軸に、銀行員の削減順序を想像すると、

(1) 顧客に接触しない事務処理
(2) コールセンター等の定型的な顧客対応処理
(3) 支店窓口等の定型的顧客対応
(4) 個人向け等の小口ローン
(5) 法人向け融資

といった順だろうか。

もちろん、個別の業務の置き換えだけでなく、店舗の統合・削減も進むだろう。「いつかは(せめて)支店長に」という、かつて多くの銀行員が胸に抱いた人生の中間目標はますます狭い道になるということだ。

逆に、後まで残りそうなのは、人をシステムに置き換えるわけなので、システム部門、特定の富裕層に食い込んで対人的サービスを提供するプライベート・バンク的な業務、そして、銀行員にとって「人生の預金先」とも言える人事部門だろうか。

究極的には、銀行業務全体が仮想通貨のようにプログラムされて、銀行員は純粋に人事にだけ励むような風景が目に浮かぶが、もちろん、そこに至るまでには長い年月が必要なので、現在の銀行員が直ちに心配するには及ばない。

しかし、読者のご子息世代にあって、これから銀行に就職することは、相当にリスキーな選択であるように思われる。

生き残るのは、スルガ銀行か、三菱UFJ信託か

AIによる多くの銀行業務の置き換え、経済のAI化が今後進めるに違いない貧富の格差の拡大を考えると、銀行及びその周辺で有望に思えるのは、AIと機械化によるコスト削減を進めつつ、ネットに適応したビジネスモデルを構築して広い顧客層を相手にする、現在のスルガ銀行の将来像として想像されるようなビジネスか、或いは、富裕層向けに特化したビジネスだろうか。

但し、ネットの世界には、各都道府県に存在する地方銀行が棲み分けるような余地はないので、同様のビジネスに競争力を持てない銀行が、スルガ銀行的なビジネスモデルを真似るのは無駄である。

富裕層向けのビジネスに関して興味深いのは、法人向けの融資業務を三菱UFJ銀行に移換する方針を発表した三菱UFJ信託銀行だ。信託銀行の中にあって、法人向けの融資業務は、ある意味ではこれまで本流中の本流の仕事であったこともあり、行内の抵抗は強いのではないかと拝察する。

しかし、もともと信託銀行は、顧客一人当たりの預かり資産が大きいし、法人向けの融資業務と資産運用業務の間には深刻な利益相反の問題があった。

同行が資産運用と富裕層向けのビジネスに特化するということであるなら、この戦略は他の金融グループの一歩先を行く「当たり!」かもしれない。また、信託銀行の中に残る人こそが将来の当たりくじを引くことになるのではないだろうか。

もっとも、個々の富裕顧客向けに適合した複合的なサービスの提供を考える場合、これに関わる個人は、銀行であろうと信託銀行であろうと、「行員」である必要が最早ないかもしれない。税理士なり、FP(ファイナンシャル・プランナー)なりで、高度なスキルを持った者が個人・法人を問わずコンサルタントとして独立して、顧客の利益の立場から、AI化が進んで残った銀行の「機能」を利用すればいい。

今月17日は、大手行の先陣を切って北海道拓殖銀行が経営破綻した日である。あれから20年が経過した。今から、20年後に、今の銀行がそのままの形で存続しているとは、到底思えない。銀行員消滅は、「無い」とは言い切れない想像だ。

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