続々登場するモバイル決済、日本のキャッシュレス化はどこまで進むか?

続々登場するモバイル決済、日本のキャッシュレス化はどこまで進むか?

  • @DIME
  • 更新日:2017/09/16

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

ここ1年ほどで「~ペイ」と呼ばれるモバイル決済を頻繁に耳にするようになった。店頭で現金やクレジットカートを使わずにスマートフォンで決済するシステムだが、決済方法や還元などが各社で異なり、メリットがあるのか、どれがお得なのか、正直言って内容がわかりにくい。

こうしたペイメントサービスの実態や取り巻く環境について、2016年5月にスタートし、モバイル決済の先鞭をつけたOrigami(オリガミ)にて、メディア向けのセッションが開催された。

◆従来の「おサイフケータイ」とどう違う?どのペイメントサービスがお得なの?

Origami Payは専用のアプリをダウンロードして、氏名、使用するクレジットカードを登録するだけで始められる。店頭ではアプリを起動して、店側のiPad上でQRコードをスキャンすれば支払い完了。後日、登録したクレジットカード会社から引き落としされる。現金もクレジットカードも必要なく、クレジットカード払いでは躊躇してしまうような少額でも気兼ねなく使えて、しかも決済のスピードが速い。タクシーでも現金やカードに比べて支払いがダントツに速く、チャージの必要もないので残高を気にせず使える。

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サービス開始から15カ月経過して、今年8月現在で約2万店舗の導入が決定している。コンビニのローソン、ファストフードのKFC、居酒屋の和民、ユニクロ、無印良品と全国で展開している企業や、アパレル、雑貨などのライフスタイル系の店舗が多いのもOrigamiの特徴。サービスに関しては日本交通のタクシー約4100台で使える。

モバイル決済といえば、ガラケーの時代からフェリカを搭載した「おサイフケータイ」があったが、Origamiのモバイル決済はどう違うのか?

「ガラケー携帯の決済はフェリカのチップを端末に埋め込んでいたので、端末によっては使えないこともあった。私たちはアプリのサービスなのでスマホの機種に依存せず、アプリをインストールしてもらえれば、カメラ機能が搭載されているスマートフォンであれば使うことができる。

加盟店側にもアプリをインストールしてもらい、アプリ同士が重なることで決済ができる仕組み。加盟店側がタブレットを使ってQRコードを表示するが、セキュリティーの関係から60秒間だけ使えるQRコードを生成して、それをユーザーが読み込み、ユーザーは事前に登録したクレジットカードにインターネット上で決済を起こして完了。店にクレジットカード番号を渡しているのではないというのが特徴で、セキュリティーの高い仕組みになっている」(Origami マーケティングディレクター古見 幸生さん)

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キャッシュレスとスピード以外に、ユーザーにとってメリットになるのが即時割引。他社のペイメントサービスでは、ポイント還元や還元なしというところもあるが、Origami Payはその場で3~10%割引をしてくれる。

もうひとつの大きな特徴は、加盟店側にも販促に繋がる情報が得られるということ。現金払いやクレジットカード払いは店側に顧客情報が残らないが、Origami Payは購入者のIDが加盟店と共有できるので、その情報を基にシェアリング活動を行うことができる。

「従来のシェアリングは紙のダイレクトメール、メルマガが一般的だが、メルマガは開封率が低く送ったきりということが多い。Origamiのアプリにはメッセージ機能があり、開封率は30~40%に上がる。この差分が非常に高いので加盟店にもマーケティング活動としてメリットがある。加盟店には割引よりもシェアリングツールをどうするかの意識の方が高いと感じる。

メッセージも大量に送りつけるのではなく、ユーザーにとってメリットのある情報を送れるがキモになると思う。グロースハッキング(商品やサービスの改善をモニタリングしながら開発面で工夫することで、その商品やサービスを成長させる)を意識して開発している。例えば、ファッション好きな方なら、新商品がいつ店頭に出るのか気になるが、セカンドデリバリーの情報が店長から来るというのは有益な情報であり、店長から個人的に来るというロイヤリティーのあるコミュニケーションにもなる。こういった情報をメッセージ機能で提供している」(古見さん)

また、中国国内で月間アクティブユーザーが4億5000万人という中国最大のスマートフォン決済会社「Alipay(アリペイ)」とOrigamiは事業提携しており、中国のアリペイユーザーが日本で買い物をする際にOrigamiの加盟店で利用ができる。インバウンド決済が簡単に導入できるのも加盟店側にとってはメリットとなる。

セッションでは、230種類以上のポイントを取り扱うポイントまとめサイト「ポイ探」を運営する菊地 崇仁さんが登壇。菊地さんは一般カードからプラチナ、ブラックのプレミアムカードまで57枚のクレジットカードを保有し、約120万円の年会費を支払って実際に利用している。モバイル決済もOrigamiスタート時から利用しており、菊地さんにこの1年で続々と登場したモバイル決済をまとめてもらった。

「少額決済はクレジットカードだと嫌がられるが、数年前からペイパルヒアや楽天スマートペイといった、イヤホンジャックにドングルをつけて決済するものが出てきた。少額決済が普及してきたタイミングでモバイル決済のアプリ化という流れになったのではないか。

Origami Payの開始から1年ほどが経過しているが、1年の間にこれだけの“なんちゃらペイ”が出てきている。Appleペイが去年10月、同時期に楽天ペイ、Androidペイなど乱立。違いが判らないというユーザーも多いので比較してみた。

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店舗で決済するものと、個人間で決済するものに分け、真ん中がどちらでも使えるもの。個人間はフリーマーケット、コミケ、お金の貸し借りなどで使えて、個人間のものでも店舗が導入すれば使えるものもある。

いずれも非接触の決済だが方法が全部違う。Appleペイ、Androidペイはフェリカ、Origami PayはQRスキャンとBluetooth、楽天ペイはバーコードスキャンで、バーコードをユーザーが提示して店舗側でスキャンする。LINEペイはメッセージで送金することも可能。全部クレジットカード引き落としになっているので、どれを使ってもクレジットカードのポイントを獲得できる。

中でもお得感があるのがOrigami Payと楽天ペイ。Origami Payはクレジットカードのポイント獲得と割引を同時に受けられる。楽天はクレジットカードポイントとは別に楽天スーパーポイントを受け取れる。Origami Pay、楽天ペイが利用できる店舗では、クレジットカードで買うよりアプリ経由の方が得になる」(菊地さん)

◆中国並みに日本でもキャッシュレス化が普及するか?

菊地さんと古見さんのトークセッションでは、モバイル決済のペイメントサービスの現状や今後の進展について語られた。

古見さん「Origamiは初めてモバイルアプリ決済をスタートした自負がある。プレイヤーが多くなれば使うユーザーも増えるので、今は市場ができつつある状況だと思う。中国ではモバイル決済が8割とも言われ、日本ではどのくらい浸透するか期待している」

菊地さん「当初からモバイル決済は使っているが、ここまで出てくるとは思っていなかった。クレジットカード決済は、2016年は約49兆円、電子マネーは約5兆円といわれているが、モバイル決済は市場規模がわからないくらい新しいもの。ただ、でき過ぎている感があるので、ユーザーにとってはどれがお得か、どれが一番使いやすいのかを見極めるのが難しい。

Origami Payがスタートした翌月に渋谷のロフトで使ってみた。もともとおサイフケータイを使っていたので、モバイル決済に新しさを感じないだろうと思っていた。その時はBluetooth接続での決済だったが、いいなと思ったのは、チャージが要らないということ。登録したクレジットカードから引き落とされるが、直接のクレジットカード決済に比べると速いという印象だった。

楽天ペイは2016年8月1日から始まりローソンで使ってみた。ローソンはPontaやdポイントをアプリ利用できるが、アプリでスキャンして楽天ペイを起動して、決済するのに二重にアプリを操作しなくてはならず、これは課題ではないか。決済もデジタル化、ポイントカードもデジタル化していると両方使い分けなくてはいけないのが不便だと思う」

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古見さん「ローソンさんはPOSの仕組みとどうやっていくかが課題。現在はクレジットカードで決済しているが、ユーザーが求める支払い手段はもっとたくさんあると思う。お財布のような形のアプリが必要なのではないか。それを実現するには技術面で必要な部分が多いので粛々と進めていくしかない。また、日本や欧米では法令が厳しいため、技術的にはできてもすぐにサービスローンチできない課題もあり、行政、銀行、カード会社など金融の方々とのパートナーシップが重要だ。私たちはスタートアップだが既存の仕組みを壊すのではなく、パートナーシップでできる方向を考えている」

急速にキャッシュレス化が進んでいる中国、インドと比べて、日本でのモバイル決済の利用率は6%に留まっている。経済産業省はITと金融が融合した「フィンテック」を提言し、2017年5月には金融庁と経済産業省が、日本でのキャッシュレス化を10年間で40%に引き上げる方針を発表した。

菊地さん「中国で急速にモバイル決済が進んだのは、現金払いかデビットカード決済が多く、クレジットカードがあまり普及していなかったからではないか。日本ではクレジットカードが普及していたので逆にモバイル化が遅れたのではないかと思う」

古見さん「それに加え、中国では初めて使う携帯電話がスマートフォンで、カメラ機能が搭載されていた点からも普及が早かったのでは。LINEの無料通話はインターネットという限りなくお金のかからないインフラを使ったもので、日本のキャッシュレス普及にはまずインターネット化することが鍵。インターネット化と同時に各所とのパートナーシップを結んで進めていくことが最初のフィンテックのフェーズではないか」

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菊地さん「VISAがQRコード決済の基準を作ろうとする動きもあるし、ドコモがQRコード決済、バーコード決済をやろうとする動きもあり、今後さらにモバイル決済が普及していくと思う。ただ、モバイル決済は1年でこれだけ出てきており、ファイナンスとテクノロジーの組み合わせは無限の可能性があるはずで、3年後の状況はどうなっているのか正直わからない。

直近で考えるとスマートフォンが基準なので、スマホに金融が取り込まれていくと思う。さらにスマホに取り込まれていくと、ステータスのクレジットカードを出す機会が無くなって、ステータスはどうなるの?という疑問がある。スマートフォンで決済すると、それが一般のカードなのか、プラチナなのかブラックなのかわからない。それが好きでやっている人もいると思うので(笑)、そういう人向けに光ったりすれば面白いんじゃないか」

古見さん「決済する時の音が、サカナクションさんに作っていただいた音なので、ゴールドサカナクションでも作りましょうか(笑)」

【AJの読み】買い物にはスマホだけを持っていく時代が来るのか

自分が社会人になった30年近く前は、クレジットカードは高額の商品を買うときに使うという認識が一般的だった。しかし今ではポイント獲得のためにスーパーマーケットの数千円の買い物でも躊躇なくクレジットカードを使う。とはいえ、数百円のコンビニの買い物にクレジットカードを使うのはさすがに遠慮していたが、モバイル決済なら少額でも堂々と使うことができ、文字通り財布代わりに買い物にはスマホだけ持っていく時代が来るのかもしれない。

精算は速くできるし、クレジットカードにもポイントが付くし、利便性を考えるとモバイル決済は大歓迎なのだが、Origami Payのようにその場で割引されると、じゃあこれも、と「ついで買い」しそうなので、利用金額をきちんと管理する必要はありそうだ。

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文/阿部 純子

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