「パラダイス文書」に記されたすべての企業、人物名がまもなく世界中で公表へ ICIJ記者寄稿

「パラダイス文書」に記されたすべての企業、人物名がまもなく世界中で公表へ ICIJ記者寄稿

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  • 更新日:2017/11/14
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エリザベス女王 =代表撮影

世界を揺るがした「パナマ文書」から1年あまり経った11月5日、新たに発表された「パラダイス(天国)文書」と呼ばれる調査報道が全世界を震撼させている。

【写真はこちら】パラダイス文書にはあのロック・スターの名前も!

いわゆるタックスヘイブン(所得税は極めて低いか、0の租税回避地)とはスペイン、イタリア語などいくつかの言葉で「税の天国」とも呼ばれているので 、今回は「パラダイス文書」と名付けられた。

税金逃れを行なっていた著名人、企業を暴いたパラダイス文書に掲載された世界の首脳や閣僚、王室関係者らの名前は47カ国120人以上に上った。

アメリカのトランプ大統領が日本をツアーしていた時、世界中の読者や視聴者はウィルバー・ロス商務長官が複数の法人を介してロシアのプーチン大統領に近いガス会社に投資していたことを知った。

ロス氏以外にもバミューダ諸島に設立された資源会社の役員を務めていた鳩山由紀夫元首相、カナダ首相の腹心や英国のエリザベス女王らの名前が次々と報じられた。

エリザベス女王が投資しているオフショア・ファンド(タックスヘイブンに登記上の本拠地を置き、各国の有利な株式市場で資産を運用する投資信託)は、仲介社を通じて問題のある会社に投資したこともわかっている。

芸能人では歌手マドンナ、シャキーラ、ロックバンド「U2」のボノの名前もあった。

ボノはマルタ島の会社の一人の株主だった。その会社はリトアニアの小さい町でショッピングセンターを持っているそうで、同国の税務当局が税金逃れの疑いで同社を捜査しているそうだ。ただし、ボノの広報はリトアニアのメディアの取材に対し、「すべて適法に税務処理されている」とコメントしている。

日本では「ドラゴンボール」で知られる漫画家の鳥山明氏もあった。

これらは1年間密かに働いた96社の報道機関、382人記者の成果だ。欧州連合のある委員が「電気ショック」のようだと感想を述べていた。

去年の「パナマ文書」はパナマの法律事務所から漏れた書類だったが、「パラダイス文書」の流出元は複数で、法律事務所2社と19カ国の登記所などだ。

全部で電子ファイルは1340万件 、その中にメール、パスポートのコピー、企業の記録、領収書などもあった。

それらを最初に入手したのは南ドイツ新聞の2人の記者だが、彼らは資料のグローバル性と重要性を鑑みて、「パナマ文書」の報道でピュリッツァー賞を受賞するなど成果をあげた国際調査報道連合ジャーナリストー(ICIJ)ともう一度組んで世界中の同僚記者と情報集をシェアすることにしたのだ。

ICIJはワシントンDCに本社あり、世界中の調査報道記者と協力する非営利の報道機関だ。組織の使命は国際的な問題をより深く報道することだ。そのため暗号化した情報交換のため必要なソフトウェアも発達して、国際的なニュースルームの調整役も果たしている。

よりグローバルな報道をするため、ICIJは4月に東アジアから南米までプロジェクトに参加している記者を呼んで、ミュンヘン(南ドイツ新聞の本社)で最初ミーティングを開始。そこでプレッツェル(ドイツの焼き菓子)を食べながら、2日間で100人以上の記者がそれまでの取材結果を検討したり、同僚と話ししたりしてプロジェクトの内容に関する理解が深まった。みんなで発表日も含めて今度の取材戦略を決めた。

1カ月後、5月上旬に、特別にアジアのミーティングも行なった。インドネシアのジャカルタで、日本、インド、タイや韓国など8カ国の記者とICIJのアジアパートナーコーディネートも務める私が「テンポ」(Tempo)というICIJパートナーでもある、インドネシアの有名な雑誌を発行する会社で会議をした。資料の分析を始めとして、国境を超えたネタや、発表日までどのように協力できるのかを話し合った。

それから、「パラダイス文書」を準備すると同時に世界中に記者らは、北朝鮮のミサイル発射、メキシコの地震、ドイツと日本の選挙、アメリカとロシアとの論争、ヨーロッパのテロ事件、そして10月には地中海の島国マルタで「パナマ文書」をもとに政府の疑惑を告発した女性ジャーナリスト、ダフネ・カルアナガリチア氏(享年53)が爆殺されるという悲しい事件が起こった。

これは私たちにとって悪夢で ショックだったがプロジェクトに参加している記者たちは取材をし続けた。

「ジャーナリズムとは報じられたくない事を報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない」という作家のジョージ・オーウェルの言葉をかみしめながら、改めて使命感を感じたのだろう。

ミュンヘンでのミーティングから6ヶ月が経ち、ワシントンの11月5日午後1時(日本で6日朝)に報道解禁となった。一気にオーストラリアから日本、インドネシアやインド、リビア、トルコ、ヨーロッパやカナダ、ブラジルやコロンビアまで記事の波が世界中を巻き込んだ。

「パラダイス文書」の大部分は大手企業の税務戦略を記述する資料だ。

アップル、ナイキ、製薬会社など世界的な大企業がタックスヘイブンで作った会社に利益を移し、積極的に税金を低くしたとみられる。そのような税務戦略は基本的に適法だ。

ただし、ICIJや連合の記者がインタビューした専門家によると、タックスヘイブンを使う多くの企業と著名人は税金の抜け穴を巧みに探し出す恐れもある。つまり、本来、免じられた税は病院や学校の建造などのために使われるはずだが、そうならずに富裕層のポケットに入ることが疑問視されている。その結果不当競争と所得配分の不平等が激しくなっていると指摘されている。

去年は「パナマ文書」の第一波の報道後、少なくとも6000人以上捜査され、世界中で1億千万ドル の税を回収できたそうだ。

今回の影響はまだ評価できないが、すでにインドやインドネシア、スペイン、オーストラリアなどの税務当局が文書に記されている人物と企業に対しての捜査予定を発表した。

日本では共同通信、朝日新聞とNHKの調査報道部は「パラダイス文書」の日本チームとしてデータベースにアクセスを持っている。そこからみずほ銀行から約6億円をだまし取ったとして起訴され公判中の西田信義被告(71)の名前も発掘された。

また、ジャカルタの会議で記者がまいていたネタの種も咲いた。

英領バミューダ諸島に登記された医療機器メーカーから、日本、米国、シンガポール、ドイツ、インドネシア、インド、ブラジルの医師14人や病院が「ストックオプション(新株予約権)や未公開株を取得したことを示す資料がパラダイス文書から見つかり、仙台市の医師が上場後に1億円超の売却益を得ていたほか、医師が勤めていた病院も売却益を得ていたことなどを朝日新聞が報じた。

朝日新聞は、インドのICIJパートナー「ザ・インディアン・エクスプレス」の協力のおかげでインド人の医師からもコメントを得られ、より深い報道ができた。

数カ月以内にICIJは「パラダイス文書」に入っているすべての名前(企業と個人)をリリースする予定だ。報道は終わりではない。(ジャーナリスト/シッラ・アレッチ)

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