副業と法律:第8回 副業と労働基準法との関係

副業と法律:第8回 副業と労働基準法との関係

  • 政治山
  • 更新日:2017/12/07

副業であっても賃金をもらって働けば、副業先との関係では「労働者」となり、本業と同様、労働基準法が適用されることになります。労働基準法は労働条件の最低基準を定めていますので、働く側にとっては喜ばしいことです。しかし、実際には非常に厄介な問題が潜んでいます。

それは労働時間と賃金に関する問題です。今回は、副業に関わる労働時間の捉え方と賃金に関するポイントを整理しておくことにしましょう。

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1.副業は残業扱い? 法定労働時間の落とし穴

労働基準法32条は、1週間につき40時間、1日8時間以内を法定労働時間とし、これを超えて労働させた場合は、割増賃金を支払わなければならないとしています。

では、本業で8時間勤務した後、副業のアルバイトで3時間働いた場合はどうなるのでしょうか。

本業の所定労働時間が1日8時間だった場合、8時間労働ですから残業はありません。所定労働時間が7時間だった場合は1時間の残業となり、残業代が発生しますが、法定労働時間以内なので割増賃金は発生しません。一方、副業は3時間です。8時間以内の労働なので残業はなく、もちろん割増賃金も発生しない・・・となりそうですが、実はそういうわけにはいかないのです。

その答えは労働基準法38条にあります。

(労働基準法38条)
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
労働時間に関して「事業場を異にする場合においても・・・通算する」と規定されていることから、複数の会社で働いている場合の労働時間は、会社ごとに判断するのではなく、すべてを合算した上で労働時間に関する規定が適用されることになります。

その結果、次のようなことが起きます。

先ほどの例で仮に副業の時給が1000円だったとしましょう。本業ですでに8時間労働した後に副業しているため、副業における3時間労働は法定労働時間を超える残業となり、副業先は1時間あたり最低でも25%の割増賃金である1250円を3時間分支給しなければならなくなるのです。これでは時給1000円の労働条件が、実質的には時給1250円だということになってしまいます。

2.本業の会社にも影響? 労働時間規制適用における微妙な関係

時給1000円のはずが、実際には1250円支払わなければならない・・・このような事態を想定している副業先はあるでしょうか。そもそも本業でどのような働き方をしているか、といったことを副業先は知りません。しかし、たとえ知らないとしても、予期せぬ割増賃金が発生することを甘んじて受け入れなければならないとすれば、何かすっきりしない感じがします。

本業の会社でも同じようなことは起こり得ます。たとえば、新聞配達やコンビニなど早朝の副業をするケースがこれにあたります。午前3時から6時まで3時間、副業として新聞配達あるいはコンビニで勤務した後、本業先へ出勤し8時間働いた場合です。先ほどとは逆に本業前にすでに3時間働いているので、本業での5時間を超える3時間は割増賃金の対象となってしまいます。

3.割増賃金は誰が負担すべきか? 副業促進へ大きな壁

割増賃金の負担を労働時間帯の先後で決めれば、たまたま副業を行う時間帯が本業より先であった場合、本業先が影響を受けることになってしまいます。そうなれば、今後、副業が推進されることになるとしても、容認すれば割増賃金を負担することになる副業を本業先が簡単に認めるとは思えません。これを認めれば実質的な賃金アップにつながるからです。本業先としては早朝の新聞配達やコンビニでのアルバイトなど到底認めるわけにはいかないのです。

そこで、割増賃金の負担は労働契約の先後で決するという考え方があります。これによれば労働契約の遅い方が割増賃金を負担します。先に契約している会社が不利益を受けない点で公平な考え方ともいえますが、学生時代から続けていたアルバイトを就職してからも続けたいといったケースでは、本業先が割増賃金を負担することになります。そもそもそんなことを言う学生は採用されないでしょうし、企業がアルバイトの継続を容認するとしても、雇い入れにあたりいったん辞めることを要求するでしょう。

一方、副業先としては、本業を持っている者を雇用する際、常に割増賃金の支払いというリスクを抱えることになります。25%以上アップした時給を支払わなければならないとすれば、積極的に雇用することをためらうのではないでしょうか。

4.まとめ

以上みてきたように、副業には割増賃金の問題がつきまといます。割増賃金を負担するのは本業先か副業先かはっきりしないというだけでなく、ある日突然、割増賃金が支払われていないと賃金未払いで争われる可能性もあるのです。雇用する側にとっては大きな問題です。

安倍前総理の肝いりで進められてきた「働き方改革」では、多くの企業でこれまで原則禁止とされてきた副業を容認する方向で議論が進んできました。突然の衆議院解散で総選挙となりましたが、選挙の結果がどうであれ、この流れに大きな変化はないでしょう。

しかし、企業が割増賃金負担、賃金未払いというリスクを抱えながら、あえて本業を有する者を雇い入れるでしょうか。今後、法整備がどのように進んでいくのかという点にも着目しつつ、使用者、労働者双方にとって実のある改革となることを期待したいものです。

記事制作/白井龍

提供:nomad journal

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