急増するベネズエラ難民、周辺国に危機波及

急増するベネズエラ難民、周辺国に危機波及

  • WSJ日本版
  • 更新日:2018/02/14
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【ククタ(コロンビア)】経済が崩壊の一途をたどるベネズエラ。国境を越えてコロンビアなど周辺国に逃れる避難民が増加を続けており、地域で深刻な問題を生み出しつつある。

過去20年間、ベネズエラの人口の1割に当たる300万人近くが左派政権を嫌って同国を離れた。ベネズエラ中央大学の専門家トマス・パエゾー氏によれば、このうちの約半分に相当する約120万人が過去2年間で国外脱出した格好だ。

コロンビア政府によると、2017年末時点でコロンビアに逃れたベネズエラ人は約55万人で、前年比62%増加。今年はこれまで、さらに5万人がコロンビアに入国した。

欧州の難民危機に匹敵

国連難民高等弁務官事務所の広報担当者ジョエル・ミルマン氏は「世界的な基準から見ても、コロンビアは大量の避難民を受け入れている」と指摘。「欧州の難民危機がピークだった2015年にバルカン諸国やギリシャ、イタリアが受け入れた難民に匹敵する規模になっている」と話す。

コロンビアのファン・マヌエル・サントス大統領は先週、国境通過許可証の発給停止を発表するとともに、不法入国を阻止するため2000人の兵士を国境に配置する命令を出した。

ただサントス大統領は、ベネズエラが繁栄していた20世紀終盤に同国が100万人を超えるコロンビア人を受け入れたことを指摘し、「コロンビア人もベネズエラ人に対し寛容であるべきだ」と訴えた。

ベネズエラからの避難民の増加はコロンビアの国境地域に負担を強いており、ベネズエラの混乱がコロンビアにも波及するとの不安を高めている。

コロンビアの国境沿い最大の都市であるククタでは、ベネズエラの家族連れが駐車場を仮設の避難所に変え、小売店舗の外にハンモックをつるしている。

「ちょっと見て欲しい。彼らはベネズエラがうまくいっていれば、ここにいる必要がなかった人たちだ」。この地域で炊き出しを行っているホセ・デビッド・カナス神父は、ベネズエラ人の女性や子どもたち1000人近くが昼食を求めて長蛇の列をなしているのを見つめながら言った。「我々が助けているのは、コロンビアに来る人のわずか1%に過ぎない。これは人道的危機だ」

その中の1人、ケリー・アラザレスさん(43)は、自分がレストランで働いている間、4人の子どもを働かせざるを得ない。街頭で食べ物を売って、生活を支えさせるのだ。「食べるものは十分ある。それだけでもありがたい」と話す。

一方、自分たちが正しい選択をしたのかと思い悩む人もいる。たばこと飲料水を売っているへスース・ガリシアさん(35)は、「(ここに来れば)もっと楽になると思っていた」と話し、「ここ(ククタ)は素晴らしいと言っている人たちがいたのでやって来た。でも来てみたら、散々たる状況だ」と語った。

各国で急増するベネズエラ難民

国際通貨基金(IMF)によると、ベネズエラ経済は今年末までに2013年時点の半分の規模になると見込まれている。今年のインフレ率は1万3000%に達すると予想されている。

ベネズエラの首都カラカスに本拠を置く調査会社Consultores21が昨年12月に同国各地で実施した調査では、回答者の40%が国外脱出を望んでいた。行き先として選ばれているのは最も近いコロンビアだが、ベネズエラからの脱出者は南米各国で明らかに急増している。昨年コロンビアから南側の国境を通ってエクアドルに入国したベネズエラ人の数は23万1000人と、2016年の3万2000人から急増。これは、コロンビアを単なる通過地点として利用する人がいかに多いかを物語っている。

アルゼンチン、エクアドル、チリ、ブラジルには現在、かなりの規模のベネズエラ人コミュニティーが存在する。ブラジルでは、何万人もの人々がジャングル地帯の国境を渡り、ロライマ州の州都ボアビスタに住みついた。人口31万3000人の都市だ。

ブラジルは先週、国境に配置する兵士を増やした。また、流入してきたベネズエラ人をブラジルの内陸にある他の都市に移す計画も明らかにした。ミシェル・テメル大統領は「ベネズエラからブラジルにやって来る避難民についての懸念はずっと続くだろう」と述べた。

コロンビアに渡ったベネズエラ人の多くは、サンドラ・グラテロルさん(30)と同じような境遇に陥った人々だ。グラテロルさんは夫とベネズエラ中部で小さな金属加工工場を営んでいたが、経済危機で収入がなくなったのだ。サンドラさんは現在、ククタの街頭でアクセサリーを売って1日10ドル程度を稼いでいる。

ベネズエラ人の流入を受け、コロンビア当局者は昨年、トルコを訪れてシリア難民を当局がどう扱っているのか調査した。コロンビア政府は、ベネズエラ人による公的医療制度の利用を認めるとともに、パスポートを所持している人々には子供たちの学校入学も認めた。

しかし、国境沿いにあるコロンビアの小さな町の当局者らは、人々の流入の結果、公共サービスに大きな負担になっていると述べる。検察当局も、移民が急増するにつれてベネズエラ人の逮捕件数が増えていると述べた。主として強盗容疑が多いという。

移住者たちに対応しているククタの責任者、マウリシオ・フランコ氏は「彼らは失業を増やし、比較的低賃金の仕事を奪っている」とし、「我々には彼らに与えるだけの就業機会がない」と語った。

8日、サントス大統領がククタを訪問し、コロンビアへの越境の際の新たな制限措置を発表するなか、数百人のベネズエラ人がククタに到着した。その中のあるグループは、国境から数百メートル離れた木陰にスーツケースを置き、これからのことを話し合っていた。

リウベルト・ヤリさん(24)は、コロンビアをバスで横断し、いとこが住むペルーに行くつもりだという。「私には故郷に1歳の赤ん坊がいる。ミルクとおむつを買うためには、あらゆることをしなければならないが、ここで仕事を見つけるのは不可能だ」と語った。「これ以上は待てない」

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