プロ機出身のパワフルな低域と繊細な高域を両立したMYTEKのDACプリアンプ「Manhattan DACII」の実力検証

プロ機出身のパワフルな低域と繊細な高域を両立したMYTEKのDACプリアンプ「Manhattan DACII」の実力検証

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  • 更新日:2019/04/22
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■連載/ゴン川野のPC Audio Lab

DACの性能は搭載しているチップによって左右される。もちろん、それが全てではないが重大な影響力を持っている。私が好きなチップはESS/ES9018Sである。拙宅のリファレンスDACにもこのチップが使われていた。なぜ過去形なのかと言えば、現在はアップデートしてES9028PROを搭載したResonance『MIRUS PRO』を使っているからだ。

これと同じチップを使っているのがMYTEK『Brooklyn DAC+』である。今回、紹介するのはその上級機の『Manhattan DACII』。搭載しているチップはES9038PROである。

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●最新DAC「ES9038PRO」を採用したハイエンドモデル

それではES9028PROとES9038PROはどこが違うのか? ES9028PROはLRで2chのDACを内蔵するのに対して、ES9038PROはLRで8chのDACがあり、合計32個のDACを内蔵しているのだ。ES9028PROはES9018Sとの互換性を重視したチップであり、ES9038PROは互換性よりも先進性を重視したチップと言える。また、ES9038PROはマルチチャンネル出力が不可欠なAVアンプにも対応する。

『Manhattan DACII』はES9038PROに合わせたI/V変換回路を8chパラレルで搭載してS/N比を追求。さらに『Brooklyn DAC+』の倍以上あるサイズの筐体の半分は電源部に使われている。内部で、まず目をひくのはアナログ用とデジタル用の2個のトロイダルトランスと大量の電解コンデンサーである。強力な電源部はパワフルな中低域再生を期待させる。余裕のある筐体には、オプションでPHONOアナログプリアンプカード、ネットワークカードを追加できる。

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カラーはシルバー、ブラック、ゴールドシルバーの3色があり、フロントパネルとサイドパネルは彫刻刀で削ったような凹凸があるユニークな仕上げになっている。

●MQAデコーダ内蔵、DSD256ネイティブ再生

『Manhattan DACII』はハードウエアでのフルデコードMQA再生に対応していることも大きな特徴である。現存する製品の中でMQA-CDの実力を最も引き出してくれるDACと言える。MQAに対応するデジタル入力は、同軸デジタル(RCA)、光デジタル(トスリンク)、AES/EBU(XLR)、SDIF-3(RCA)にも対応して、多くのCDトランスポートと接続できる。

PCMは384kHz/32bitまで、DSD256のネイティブ再生に対応。世の中のほとんどのハイレゾフォーマットに対応している。

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大型のディスプレイには入力、入力フォーマット、音量、レベルメーターなどを表示できるが、ドットが大きいので少し離れた位置から見るのに適している。

●アナログプリアンプ機能とバランス対応ヘッドホンアンプ搭載

ES9038PROはチップに高精度32bitデジタルボリューム機能を搭載している。これを利用して本機をデジタルプリアンプとして使える。それだけではなく、R2R方式のアナログボリュームも搭載しているのだ。なぜ、2種類のボリュームを搭載したかと言えば、XLRバランスのアナログ入力とオプションのRCAフォノ入力のためである。デジタルだけでなくアナログプリアンプとしても活用するための仕様。つまり、デジタル入力の場合は2種類のボリュームが選べ、アナログ入力の場合はアナログボリュームを使う。また、どちらの入力でも、ボリュームをバイパスできる。

ヘッドホン出力はステレオ標準ジャックを使い、別売のバランス駆動アダプターを使えばXLR/4pinバランス接続に対応できる。

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豊富な入出力端子が並ぶリアパネル。これだけあればプリアンプは不要だろう。

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●プロ用機器と民生機の良さを合わせ持つ音

MYTEKの本拠地はアメリカNYで、創立者のミーハウ・ユーレビッチ氏はポーランド出身のエンジニアである。彼が最初に作ったのはスタジオ用のA/Dコンバーターであり、レコーディング用やマスタリング用のDACを設計開発している。その後、製造拠点をポーランドのワルシャワに開設、民生用の『Stereo192-DSD DAC』が注目されて、その後、BrooklynやManhattanが製品化された。

『Manhattan DACII』は19インチのラックマウントサイズを思わせるスリムな筐体を採用。リアパネルには入出力端子がズラリと並ぶ。ここまではプロ機の伝統を引き継ぐが、フロントパネルは肉厚なアルミ合金でシンプルなインターフェイス、大型ディスプレイに凝ったデザインとハイエンド機器の風格を漂わせる。そして、リモコン対応というのも民生機器らしい。しかし、PCにUSB接続すれば専用アプリによって、入力切替、音量調整、MQAデコードのON/OFFまであらゆる機器の操作がおこなえ、PCへのデジタル信号の取り込みにも対応する。これはプロ機っぽい。

では、音はどうなのだろうか? 私がイメージするESSのDACの音は、情報量が多く、緻密な音によって3次元的な空間が表現される感じだ。音場感を重視して帯域のバランスはフラットで、低域まで揃ったスピード感、タイトで解像度の高い低音。それが『Manhattan DACII』を聞くとそれがくつがえされる。まず、中低域に厚みがある。帯域はピラミッドバランスに感じられる。繊細と言うよりは押しの強い音だ。それが高域になるといつものESSのイメージに近い、見晴らしのいい繊細な音が再現される。

井筒香奈江「Laidback2018/サクセス」(192kHz/24bit)では、冒頭のピアノとコンガが力強く芯のある音で描かれる。そしてボーカルは音像が小さくシャープに定位する。S/N感がよく無音から、繰り出される鮮明な音に圧倒される。ヴィンテージのFender Jazz Bassの低音がゆるみすぎず、タイトすぎず、管球式ギターアンプのような厚みのある音は本機にしか出せない。

骨格のしっかりした中低域はプロ機ゆずり、全体の情報量やスピード感、高域の繊細さは民生機を意識した音作りなのだろうか。いいとこ取りを狙うと、二兎を追う者は一兎をも得ずという可能性もあるが、本機は確かに「ES9038PRO」の新しい可能性を見せてくれた。また、本機で再生するMQAの音も圧倒的にいい。情報量が増えるだけでなく、高域のヌケが良く音楽全体の見晴らしが良くなり、視界がサーッと開けるようだ。ヘッドホンアンプの音も良く、こちらはさらに歯切れのいい音を聞かせくれる。

オプションのネットワークカードによるLAN接続、Roon Ready対応とDACプリからネットワークオーディオプレーヤーへの拡張性を持った『Manhattan DACII』は2019年、大注目のDACなのだ。

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専用アプリによって機器の設定から操作、ファームウエアのアップデートがおこなえる。

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PHONOアナログプリアンプカードを装着するとMCとMMのフォノイコライザー切替がアプリにも追加される。

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MacのAudirvana Plus 3にて本機に接続。これでMQAのフルデコード再生ができる。

写真・文/ゴン川野

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