寝た子を叩き起こす“慰安婦”ドキュメンタリー!! YouTuberが撮った白熱のディベート映画『主戦場』

寝た子を叩き起こす“慰安婦”ドキュメンタリー!! YouTuberが撮った白熱のディベート映画『主戦場』

  • 日刊サイゾー
  • 更新日:2019/04/20
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慰安婦像の設置をはじめ、もつれにもつれている日韓慰安婦問題。右派と左派、どちらの言い分が正しいのかを確かめようと書店や図書館へ足を運ぶと、そこでまた頭を抱えることになる。著者が右寄りか左寄りかで、書かれている内容がまるっきり異なってくるからだ。そんな中、注目のドキュメンタリー映画が公開される。日系米国人であるミキ・デザキ監督による『主戦場』は、慰安婦問題に新しい視点を与えてくれる興味深い内容となっている。

YouTuberとしても活動するミキ・デザキ監督の劇場デビュー作となる『主戦場』は、これまでになかったディベート形式のドキュメンタリー映画となっている。上映時間122分の中で、右派と左派の論客たちが「慰安婦の実数」「強制連行はあったのか」「慰安婦は性奴隷だったのか」といったテーマごとに、自説をカメラに向かって語りかける。

出演者たちはバラエティーに富んだ人選だ。右派陣営はジャーナリストの櫻井よしこ氏、自由民主党議員の杉田水脈氏、日本でタレントとしても活動している弁護士のケント・ギルバート氏。さらにネット上で人気の評論家“テキサス親父”ことトニー・マラーノ氏、「日本会議」の幹部である加瀬英明氏といった“濃い顔ぶれ”がそろっている。

対する左派陣営は、慰安婦問題を研究する歴史学者の吉見義明氏、「女たちの戦争と平和資料館」館長の渡辺美奈氏、元日本軍兵士の松本栄好氏らである。過去の資料映像を織り込みながら、双方の主張がテンポよく交わされていく。従来のドキュメンタリーのような堅苦しさはなく、ぐいぐいと見せていく手腕はYouTuberならではのものだろう。

ディベートが進むにつれ、慰安婦問題の不明瞭だった部分がかなりクリアになっていく。慰安婦の人数は20万人という数字が国際的に定説となっているが、この数字は韓国側が兵士29人に対して慰安婦1人という比率から算出したもので、数字そのものにはあまり信憑性はないようだ。

かといって、右派が喜ぶ事実ばかりが取り上げられるわけではない。「強制連行はあったのか?」という疑問に関して、2007年に安倍総理は「日本軍が慰安婦を強制連行したという証拠文書はない」と国会で答えているが、戦時中の軍の記録の70%は焼却・廃棄されており、文書がないから強制連行の事実はなかったという安倍総理の答弁は説得力がないことが分かる。

本作を撮ったミキ・デザキ監督は、1983年米国フロリダ州生まれの日系米国人二世。2007年に外国人英語教員として来日し、5年間にわたって日本の中学や高校で授業を行なってきた。その後、タイで仏教僧になるための修業を積み、YouTuberとしても注目を集めるなど非常にユニークな経歴を持つ。初めてのドキュメンタリー映画の題材に、なぜ“慰安婦問題”を選んだのだろうか?

ミキ・デザキ「JETプログラムの教師として、日本で授業を2012年までの5年間行ないました。最後の授業は自由なテーマでかまわないと高校側から言われ、人種差別についての授業を行ないました。米国には人種差別以外にもLGBTなどいろんな差別が存在する。日本にも差別はあるよね? という内容のものでした。生徒たちは熱心に聞いてくれました。教員仲間からも好評で、3学年全クラスで合計27回の授業を行ないました。その授業内容の一部を『Racism in Japan』というタイトルでYouTubeに投稿したところ、炎上騒ぎになったんです。ヘイトメールが殺到し、勤めていた高校にも抗議の電話が鳴り続きました。そのとき初めて“ネトウヨ”という言葉を知りました。自分自身にそんな体験があったので、慰安婦報道に関わった元朝日新聞の植村隆記者がバッシングされていたことにも関心を持ったんです。なぜ慰安婦問題はそんなに大騒ぎになるのか、米国人である僕には謎でした。そんな疑問から始まり、10~20分のYouTubeビデオではなく一本のドキュメンタリー映画にしようと考えたんです」

企業や団体からの思惑に左右されないよう、クラウドファンディングで製作費を調達したミキ・デザキ監督。『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』(15)で知られるエロール・モリス監督、今村昌平監督、森達也監督らのドキュメンタリー映画はよく観るそうだが、『華氏911』(04)を大ヒットさせたマイケル・ムーア監督のような作品にはしたくなかったと言う。

ミキ・デザキ「マイケル・ムーア監督は最初から結論ありきで、一方的な立場から描いています。そうすればエンターテイメント性のある、面白おかしいものが撮れることは分かります。でも、それではプロパガンダ映画になってしまいます。僕自身がこの映画を撮り始めるまでは、慰安婦問題にはそれほど詳しくありませんでした。なので、双方の意見を聞く形で、映画を構成することにしたんです。日本で開かれている慰安婦問題のシンポジウムに通い、右派と左派の両陣営から影響力のあるオピニンオンリーダーたちを選び、出演をお願いしました。櫻井よしこさんはぜひ出てほしかったので、ケント・ギルバートさんから紹介してもらい、粘り強く出演交渉しました。出演者の中の数人からは、公開前に完成したものを見せてほしいと言われましたが、見せることで内容を修正することは断りました。それではジャーナリズム性を損なうことになりますから。どうしても見たいという人には、その人の出演したパートだけ見せるようにしました。不満がある場合はエンドロールでその旨をクレジットすると伝えましたが、特に不満を伝える連絡はなく済んでいます」

本作の後半には、スクープ性のある驚きの事実も浮かび上がる。ここでその内容に触れることは控えるが、慰安婦問題は日本と韓国だけの論争ではないことがはっきりと分かる。日本から韓国への合計8億ドル(当時の韓国の国家予算2年分)の資金援助を決めた1965年の「日韓基本条約」も、慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決させることを発表した2015年の「日韓合意」も、米国からの強い意向によって日韓両政権は握手したことが解説される。日本と韓国との間では泥沼化している慰安婦問題だが、米国をはじめとする第三国の動きによって今後大きく動くことが予測される。ミキ・デザキ監督は最後にこう語った。

ミキ・デザキ「この映画のタイトルは、『米国こそが、この歴史戦の主戦場だ』という出演者の発言から思いついたものです。米国でも慰安婦問題をめぐる情報戦はいろいろと起きています。でも、私はこう思うのです。本当の主戦場はみなさんの頭の中ではないのかと。この映画ではさまざまな意見を取り上げ、いろんな人物たちを映し出しています。映画をご覧になった方の頭の中は、きっと激しい闘いの場になるのではないでしょうか。いつか慰安婦問題が解決する日が訪れてほしい。そんな希望を込めた映画です」

右派と左派、双方の主張が分かりやすく一本にまとめられたディベート映画。本作を見終わった後、あたなは一体どちらに軍配を上げることになるだろうか。
(文=長野辰次)

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『主戦場』
監督・脚本・撮影・編集・ナレーション/ミキ・デザキ
出演/トニー・マラーノ(テキサス親父)、藤木俊一、山本優美子、杉田水脈、藤岡信勝、ケント・ギルバート、櫻井よしこ、吉見義明、戸塚悦朗、ユン・ミヒャン、イン・ミョンオク、パク・ユハ、フランク・クィンテロ、渡辺美奈、エリック・マー、林博史、中野晃一、イ・ナヨン、フィリス・キム、キム・チャンロク、阿部浩己、俵義文、植村隆、中原道子、小林節、松本栄好、加瀬英明
配給/東風 4月20日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
(c)NO MAN PRODUCTIONS LLC
http://www.shusenjo.jp

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