「ユーリ!!! on ICE」フィギュア描写の凄さ細かさを観戦歴10年のスケートファンに聞いた

「ユーリ!!! on ICE」フィギュア描写の凄さ細かさを観戦歴10年のスケートファンに聞いた

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  • 更新日:2016/12/31

今年10月〜12月まで放映されていた『ユーリ!!! on ICE』(テレビ朝日系列)。久保ミツロウと山本沙代が原案を務め、男子フィギュアスケートを題材とした深夜アニメだ。

主人公は引退の崖っぷちに立つフィギュアスケーター・勝生勇利。ひょんなことから世界選手権5連覇中の王者、ヴィクトル・ニキフォロフが日本に押しかけ、勇利のコーチをすることになる。目指すはグランプリファイナルの金メダル──。

放映終了後も人気は衰えず、イベントを開けばチケットが一瞬でSOLD OUTするほど。魅力的なキャラクターやストーリーに加え、人気の一端を担うのがスケートシーンのリアルさだ。実際に競技選手を振り付けているコレオグラファーの宮本賢二がアニメ用に振付を考案し、リンクで実演した映像を元に演技のシーンが描かれているのだ。

演技以外にも端々まで気を配られたフィギュアスケートのリアルさは、アニメファンのみならずフィギュアスケートファンをも虜にしているという。いったいどの辺がどうリアルなのか。『ユーリ!!! on ICE』にハマった、スケートファン歴10年のSさん(仮名)に話を聞きました。

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ヴィクトルが「4回転ループ」を飛ばないワケ

──確認なんですが、Sさんはいわゆる「スケオタ(熱心なスケートファンのこと)」ということでいいんですか……?

「いやいやとんでもない! 地上波のお茶の間観戦が中心で、試合結果やプロトコル(採点の詳細)を見る程度ですので、いちスケートファンということでお願いします」

──その道も極めると深そうですね……。では最初に、フィギュアスケートを題材にしたアニメが作られると知ったときの第一印象はどうでしたか?

「『大丈夫!?』ですね。普段あまりアニメは見ないこともあり、7回転半とか飛ぶのかなとか……(笑)。本格的なものを作るとも聞いたんですが、それはそれでリアルに寄せすぎると演技や採点などの玄人要素が増えるし、スケートファンしか楽しめないものになるのも……という不安もありました」

──その不安が払拭されたのどのタイミングですか?

「OPを見たときです。曲に乗せて男子3人が滑る映像なんですが、約1分半のなかでジャンプを1回しか飛ばないんです。わかりやすく派手なジャンプを出さず、シンプルなステップで魅せる構成になっている。これだけでもう『スケートが好きな人が作ってる……!』と。第1滑走(※ユーリでは話数を「滑走」と数える)の、勇利とヴィクトルがオーバーラップする演技も良かったですね。スピンやステップもかなり丁寧に描かれていました」

──地元に戻った勇利が、ヴィクトルのフリープログラムを完コピして滑るシーンですね。

「演技や曲はアニメ用の完全オリジナルですが、演技構成は実際の競技に即しているようです。あのプログラムのなかで、ヴィクトルは4回転ジャンプを4回いれています。ルッツ、フリップ、サルコウ、トゥループの4種類。ここで4回転ループを飛んでないのがリアルですね」

※注:フィギュアスケートのジャンプは6種類ある。前向きで踏み切るアクセルをはじめ、難易度順にルッツ>フリップ>ループ>サルコウ>トゥループと並ぶ。(参考:フィギュアスケート:技の解説 | 公益財団法人 日本スケート連盟

──ヴィクトルは難易度の高いルッツやフリップを飛べるのに、ループを飛ばず、わざわざ簡単なトゥループを飛んでいるように見えますが……?

「実はリアルの公式戦での4回転ループ成功はルッツ、フリップより後なんです。ルッツやフリップはトゥ(爪先)をついて飛ぶジャンプですが、ループはトゥを使わずエッジのみで飛ぶ難しさがあります。4回転ループをしっかり飛べる選手が出てきたのは最近のこと。作中のヴィクトルの演技は昨シーズンのものなので、4回転ループを飛ばないのは、リアルのスケート競技の動向に沿ってるんです」

──ちゃんとスケートを知ってないと、ルッツ、フリップに続いてループを飛ばせてしまうと……!

「作中ではこのことに全く触れてないんですが、見る人が見ると『わかってる!』と嬉しくなります。説明しすぎずに『わかる人はわかる』という割り切りがとても上手いですよね。一方、演技中に登場人物たちのモノローグが聞こえるというのはアニメならでは。一種の発明だと思います」

選手、コーチ、ファンにまでモデルが

──『ユーリ!!! on ICE』には様々なスケーターが登場しますが、彼らのモデルとなっている選手はいるんですか?

「ベースにしているのかな、と思われる選手はいます。例えばカザフスタン代表のオタベックは、同じくカザフ代表のデニス・テン選手。タイ代表のピチットは、フィリピン代表のクリスチャン・マルティネス選手が思い浮かびますね」

──あまり実在の選手に寄せすぎると、キャラクターによっては不満に思うファンも出そうです。

「それを避けるために、ベースとなるモデルからあえて少しズラしているように見えます。ロシア代表のユリオはルックスがユリア・リプニツカヤ選手をベースにしていますが、性別が異なります。ヴィクトルはルックスが俳優のジョン・キャメロン・ミッチェルで、キャリアはエフゲニー・プルシェンコ選手が近く、スケーティングはステファン・ランビエール選手な印象ですね。実際の選手とのズレに、ファンへの配慮を感じます」

──グランプリシリーズだけで12人もスケーターが出ますもんね。

「しかも、それぞれスケーターのスタイルも異なっています。4回転ジャンプを得意とする選手や、逆にジャンプをあまり飛ばずに完成度を高める選手。ロシア代表のギオルギーみたいに、たまに奇抜な衣装の選手がいるのも『フィギュアあるある』です」

──スケーター以外にも、モデルになっている人はいるんですか?

「コーチ達にも似てるな……という人がいますし、ユリオのファン『ユーリ・エンジェルズ』はジョニー・ウィアー選手の『ジョニー・エンジェルズ』、カナダ代表・JJのファン『JJガールズ』はハビエル・フェルナンデス選手の『ナンデス・ガールズ』が元ネタじゃないかと。ロシアでユリオと一緒に練習しているミラは、アシュリー・ワグナー選手と練習着がそっくりでした」

「あと、モデルとはちょっと違いますけど、観戦している場面も実際のファンの所作が反映されてますよ。『ライスト(ライブストリーミング)が繋がらない』『SNSでオフシーズンの様子をチェックする』『テレビやPCで演技を見ながらスマホで演技構成をチェックする』とか、もう全部『観戦あるある』です」

──そんなところまでリアルになっているんですね……。

グランプリファイナルは最終目標ではない

──これだけ実際のフィギュアスケート競技に沿っている『ユーリ!!! on ICE』ですが、逆に気になるところはありますか?

「細かいところですけど……一部の試合の点数はちょっと謎かなと……」

──ということは、他の試合の採点はリアルに沿っているんですか?

「ある程度は。実際の演技時間はショートプログラムが2分50秒、フリーが4分30秒(男子)なので、アニメの中では尺が足りないのですが、映っていない部分を推測すると、ある程度辻褄が合う点数が出ています。でも、グランプリファイナルの一部の選手だけ、あの演技構成では届かないような……。ただ、ストーリーの辻褄もあるので仕方ないですし、他の採点が合うだけでもすごいことです」

「あと、作中ではグランプリファイナルが最終目標のように描かれてますが、実際はそうじゃないのも気になる点の一つですね」

──そうなんですか!? グランプリファイナルで金メダルを取ったらもう満足みたいな感じでしたが……

「グランプリシリーズが開催されるのは10月下旬〜12月上旬で、フィギュアスケートのシーズンではまだ序盤の大会なんです。そのあと12月下旬に全日本選手権、2月に四大陸フィギュア、3月末には世界選手権と、まだまだ重要な大会が続きますよ」

リアルがアニメを追い越しつつある

「確かに『ユーリ!!! on ICE』はリアルに沿っているんですけど、実はいま、リアルのほうがアニメを追い越しつつあるんですよ」

──実際の選手のほうがもっとすごいジャンプを!?

「アメリカのネイサン・チェン選手は、それこそヴィクトル以上のジャンプ構成ですね。ユーリの作中では誰も飛んでいない4回転ルッツ+3回転トゥループが飛べ、さらに最近4回転フリップ+3回転トゥループも公式戦で成功させています。ネイサン選手がジャンプを決めるたび、ファンは#ネイサン事件ですというハッシュタグでツイートするほどです」

──高嶋政伸主演の『HOTEL』じゃないですか。

「日本の無良崇人選手は4回転アクセルにトライしてますし、羽生結弦選手は練習レベルではセカンド4回転のコンビネーションを降りたことも。今シーズン来シーズンでアニメの演技を越えてくる可能性は十分ありますね。もういっそ、テレビ朝日のフィギュア中継OPもユーリのOP「History Maker」にしてほしいです。あの曲に合わせて羽生くんたちが舞うところまで私には見えます……」

──それでは最後に一言お願いします。

「『ユーリ!!! on ICE』は、フィギュアスケートの1シーズンを追う楽しさが短い時間に濃縮されていて、幸せな体験ができる作品だと思います。スケートを知っていると『作中のこの曲で実在の○○選手が演技したら』を想像したり、逆に『ヴィクトルや勇利は今までどんなエキシビションナンバーをやってきたか』を考えたりと、より楽しめるので、スケートファンにも広く見てほしいです。特に主人公・勇利のフリーは名プロ、必見です!」

『ユーリ!!! on ICE』はAmazonビデオなどのビデオオンデマンドで全話視聴が可能。12月30日にはDVD&Blu-ray第1巻『ユーリ!!! on ICE 1』が発売され、12月31日にはAbemaTVでの全話一挙放送も予定されている。一方、フィギュアスケートはこれから本格的なシーズン。アイスショー「スターズ・オン・アイス2017」や四大陸フィギュア選手権が控えている。

アニメを観てからリアルを観るか、リアルを観てからアニメを観るか。冬の楽しみがまた一つ増えそうだ。

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